友達「うちの職場にとんでもなく仕事ができない40歳の人がいるんだけど」
友達「風俗だけが楽しみで、1回の風俗で8万使って給料ぜんぶ飛ばしちゃう人なんだけど」
友達「一番やばいのが仕事中(マッサージ)に寝ちゃうとこだね。患者さんの足を持ったまま寝ちゃうんだよ」
友達「仕事も遅れたり忘れたりするから、上司にスケジュール表を作ってもらってる。その上司は女上司なんだけど、まぁ、お母さんみたいな感じだね」
しまるこ「うん」
友達「ある日、その女上司が離婚することになったんだけど、朝礼でみんなの前で『離婚することになりました。これから手続きとか子供の事とか、家の問題で忙しくなるので、はやく家に帰らなければならなくなります』っていったんだよ」
しまるこ「うん」
友達「そしたらその瞬間、その仕事のできない40の人が、『ヨシ!』っていったんだよ」
しまるこ「え?」
友達「思わず声に出ちゃったみたい。自分で言った瞬間、すごい青ざめた顔して、しまったあああ! って、今まで見たこともないくらい驚いた顔してた」
友達「みんなの方が驚きなんだけどね」
しまるこ「そうだね」
友達「さすがにみんなも黙ってられないから、『えっ、どういうことですか?』って、おっさんに聞いたんだよ。みんなだって問いたくないよ? 問いたくないけど問い詰めるしかないじゃんね?」
しまるこ「まぁ見逃せる発言じゃないわな」
友達「言われた女上司も、『えっ、どういう意味か教えてもらってもいいですか?』って、恥ずかしいような、悲しいような、困ったような顔して聞いてた」
しまるこ「うん」
友達「『あ、いや、なんでもないです!』って、おっさん答えるんだけど、『何でもないわけがないでしょう!?』って突っ込まれてんの(笑)」
しまるこ「言い訳も下手か(笑)」
しまるこ「なんでもないですって、なんでもなくないからな(笑)もっと上手く言い逃れろよ(笑)」
友達「『モンストのこと考えてました』とか」
しまるこ「吉幾三のこと考えてたとか」
しまるこ「前からあなたのことが好きだったから離婚が嬉しいんです……! ぐらい言えよな(笑)」
友達「(笑)」
友達「この際、下手な言い訳でもいいからなんとかウヤムヤにしろ! って、最低限それくらいはなんとかしろ! って全員が思ってたんだけど」
友達「慌てふためいて『違うんです違うんです!』って言うだけで、周りが『何が違うんですか?』って聞いても、『違うんです!』しか答えねーの」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「どこまでも(笑)」
友達「『私が離婚することがそんなに嬉しいんですか?』って本人に言われて、おっさん泡吹いて倒れそうになってんの」
しまるこ「そりゃ泡吹くわ」
しまるこ「そういうときは酸っぱい顔したり、無表情を飾っといて、心の中で喜びを噛み締めるもんだけどね」
しまるこ「それでもバレバレなんだけど、バレバレの中で仕事するのが大人の世界なのにね」
友達「おかげでリハ室(リハビリテーション室)の空気、朝から最悪だったわ」
しまるこ「誰も得しないっていうね」
友達「朝礼だったし、時間なかったからウヤムヤになったんだけど」
友達「その後、休憩の時間におっさんと二人きりになったから聞いたんだよ『なんで朝、ヨシ!っていったんですか?』って」
しまるこ「うん」
友達「そしたら、返ってきた言葉が」
友達「『僕いつも登美さん(女上司)に怒られてばかりじゃないですか? だから登美さんが離婚の事で頭いっぱいになってたら、これから僕のことあんまり怒らなくなるかなーと思って』っていったんだよ」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「すげぇ大人だなぁ(笑)」
しまるこ「よくいる40歳の冴えないおっさんの頭の中が一発でわかる一言だ(笑)」
友達「俺も最初はさ、登美さんが嫌いで、登美さんの不幸を喜んでるのかと思ってたけど、そうじゃなかったんだよ」
友達「この人の頭の中は、怒られるとか怒られないとか、それしかなくて」
友達「すべての問題を怒られるか怒られないかの2極で捉えていて、今回の登美さんの離婚発言は、一気にドーーンって怒られなくなるだろうゲージが膨らんで、ゲージが限界を突き抜けて、声に出ちゃったみたい」
しまるこ「すごい大人だなぁ(笑)」
しまるこ「でも可愛い(笑)」
友達「可愛くねーよ!」
友達「お前マジかッ! って思っちゃったよ! 40だぜ!?」
友達「僕のこと怒らなくなるかなー? じゃねーよ!!」
しまるこ「『僕』(笑)」
しまるこ「『僕』っていってるのウケる(笑)」
友達「お母さんじゃねーーか!!」
しまるこ「お母さんだね」
友達「登美さんの方が歳下なんだけどね」
しまるこ「(笑)」
友達「その人さぁ、普段からあまりにも緊張感がなくて抜けてるから、こういう時にもそれが出ちゃってんだよ」
しまるこ「いいとこ一つもないなー(笑)」
友達「恥ずかしくて仕事辞めるレベルだね。俺なら」
友達「俺とこの人、世の中的に見て、社会的ランクはまったく一緒だと思うんだよ。仕事も給料も一緒だし」
しまるこ「独身だしね」
友達「そう思うと悲しくなってくるね」
しまるこ「今はどんな感じなの?」
友達「周りから無視されてる。まぁ、もともと無視されてるんだけど」
友達「登美さんとの関係も悪化してるし」
友達「普段から仕事ができなくてみんなに迷惑かけてるのに、人間関係まで滅茶苦茶にしてくれたわ」
しまるこ「全然『ヨシ!』じゃなかったね(笑)」