霊的修行

しまるこは自分の子供にどんな教育をするのか

子供「えい! えい! やあ! たあ!」

子供「ダ、ダメだぁ! 全然当たらないやぁ!」

子供「なんで父さんは簡単に僕の攻撃を避けられるの?」

しまるこ「俺はお前の動きの原点を見ているからだよ」

しまるこ「お前は、物質的に俺の動きを捉えようとしている。だから当たらない」

しまるこ「いや、捉えようともしていない。ただ速く打ち込めば当たると思っている」

子供「…………」

しまるこ「そうだ。そうやって黙って静かに考えろ」

しまるこ「静かになりなさい。心で先に当てなければ、物質的にも当たることはないよ」

しまるこ「俺にはお前の意識の起こりが見えるよ」

子供「てい! てい!」

しまるこ「やみくもに攻撃したって当たらないよ。今だったら当たるという瞬間がある。その瞬間を知覚しなさい」

しまるこ「相手の意識の起こりを捉えなさい」

子供「そんなこと言われたって」

しまるこ「当たる『間』と当たらない『間』がある。よーく観察しなさい」

しまるこ「このときにおける観察は、神韻縹渺(しんいんひょうびょう)たる、宇宙の霊妙を観察するのと全く同じ力の働き方を持つよ」

しまるこ「剣術修行だけにとらわれず、普段の生活の中から、人々の意識の起こりや動きを見るようにしなさい」

子供「父さんの言ってることは難しくてわからないや!」

嫁「あの……」

嫁「こんな山奥で、親子で木刀で打ち込み合うなんて、異様としか思えないのですが」

しまるこ「ふ(笑)」

しまるこ「昔の親子は、こうして剣で語り合ったものだよ。今の時代は大人が弱くてしょうがない。だから子供になめられてしまうんだ」

しまるこ「それどころか環境すら許してくれない。もし庭で剣術ごっこしようものなら、児童虐待で通報されてしまう。そもそもほとんどの家庭の庭が駐車場になってるから、トレーニングすらまともにできない(笑)」

嫁「だから、こんな山奥に引きこもるしかなかったんですね」

しまるこ「俺は20代後半から霊的修行に目覚めたが、9歳から教えてもらえるなんて、こんなラッキーなことはないよ」

しまるこ「セルゲームの悟飯も9歳だった」

嫁「ドラゴンボールの話なんてしてません!」

しまるこ「俺は何も教えない。教育は一切するつもりはない。毎日こうして自然の中で剣術ごっこをするだけだ」

しまるこ「俺から1本取れる頃は、教育は終わっている。人生において何も心配はいらなくなるだろう。俺から1本取ることが、どんな勉強よりも確かなのだ」

子供「父さん、僕テレビゲームがしたいよ!」

しまるこ「ゲームもやったらいい」

嫁「ゲームはいいのですか?」

しまるこ「いいよ」

しまるこ「剣術修行が終わったら一緒にスマブラをやろう」

子供「わーい!」

しまるこ「俺から1本取ったらな(笑)」

子供「えー! そんなのナシだよー(笑)」

子供「てい! とあー!」

嫁「次は何をしてるのですか?」

しまるこ「これか? なんだ、見たことないのか?」

しまるこ「サンドバッグっていうんだ。ひたすら殴ったり蹴ったりする為にあるんだな」

しまるこ「60キロある。ちょうどこいつの体重の二倍だね」

子供「てい! てい!」

子供「はぁ……はぁ……難しい」

子供「父さん、なんで毎日こんな重たいもの殴らなきゃならないの?」

しまるこ「それが一番いい身体の鍛え方だからだよ。ウエイトトレーニングで風船みたいに身体を膨らませるのはよくないからね」

しまるこ「身体は打撃で鍛えるべきだ。そうすれば全身が非常に強くなる。」

しまるこ「腕立てや腹筋などの自重トレーニングをやるのは反対しないけど、それだったらサンドバック殴った方よっぽどいい」

しまるこ「まず、楽しい。自分の体重がしっかりサンドバッグに浸透していく感覚がわかってくると、殴るのが楽しくなってくる」

しまるこ「シャドーボクシングは、その後にやることだね。ひたすらサンドバッグを打ち込んで、脱力を覚えた後でなければ、意味がないし、できるものではない」

しまるこ「人間の根本的な動きというのは、ただサンドバックを殴っていれば勝手に悟れるようになる。こればかりはひたすら殴って自分で覚えるしかない」

しまるこ「気持ちよく殴れる頃には、すべての運動のコツ、すなわち脱力と体幹動作が身につくよ」

しまるこ「そうすれば、ただ歩くや走るといった動作でも、体幹を軸とした運動ができるようになる」

子供「やぁ! たぁ!」

しまるこ「そうだ、とにかくひたすら殴れ。毎日殴っていれば、どうすれば自分の体重が伝えられるかわかってくる」

しまるこ「自分の体重を無駄なく綺麗に伝えることが、技の極意なんだ」

しまるこ「静かに、正確に、体重を伝達しろ……!」

嫁「なんのために、この子は強くならなければならないのですか?」

しまるこ「一つの身体の発育だね。全身をバランスよく筋力をつけるのは大事だ」

しまるこ「もう一つは、正しい運動法則を知ること。すべての運動は、いかに脱力をして体幹を動かすかにかかってる。正しい位置エネルギーだけを働かせるというわけだね」

しまるこ「女の子はみんな手足に力が入って、運動の根本的な流れを邪魔してるから運動が下手なんだ。本来あるべき運動の逆をやってるんだ」

しまるこ「サンドバッグを殴り続けているだけで、すべての運動の理屈がわかってくる。頭でなく身体でわかるようになる。50メートル走だって、速いタイムを出せるようになる」

しまるこ「特に60キロ以上のサンドバッグは、力いっぱい殴ると手首を壊してしまう。とても思いっきり殴れるようなもんじゃない。頭を使って技術的に打ち込まなければ、思ったとおりに殴れるもんじゃない」

しまるこ「手を止めるな!」

子供「は、はいぃ……!」

しまるこ「体当たりするつもりで殴れ。手足じゃなくて体幹をぶつけるつもりで殴りなさい」

子供「はい!」

子供「てい! やぁ!」

しまるこ「いいぞ、その調子だ」

しまるこ「筋力だけでなくアジリティー、効果的な体動、脱力、持久力、そして脳の高揚感、すべてが得られる。そのうち楽しくなって1時間でも2時間でも、殴っていられるようになるだろう」

しまるこ「子供の頃から、毎日一時間、自分の体重の倍のサンドバッグを殴っていれば、明らかにウエイトトレーニングで鍛えた身体とは異なる、まるで凶器のような、恐ろしい鋭利な刃物のような身体になる」

嫁「そんな子供可愛くありません!」

しまるこ「昔の人は木刀の素振りで身体を鍛えたものだっただろうが」

嫁「どうして、この子はそんなに強くならなきゃダメなんですか?」

しまるこ「馬鹿なことをいうな」

しまるこ「男が強くならなきゃ何になるっていうんだ」

しまるこ「強ければ人生上手くいく。女にはわからないかもしれないが、とくに中高生時代は暴力がすべてだ。いかに喧嘩が強いかが大事になってくる。学校内のヒエラルキーというやつだな」

しまるこ「喧嘩売られたときにいつでも倒せる技術を体得しておくことは、学校生活を送る上で大きな自信となる」

しまるこ「いじめや登校拒否の心配もなくなる」

しまるこ「いじめられたとき、何もしてあげられない大人になっちゃダメだろう? 黙ってよその街へ転校するしか思いつかないようじゃダメだろう?」

嫁「はぁ……」

しまるこ「いくら勉強や運動ができてイケメンだったとしても、喧嘩が弱かったら男は終わりだ」

しまるこ「次は禅だ」

子供「はーい」

嫁「これは何をやってるんですか?」

しまるこ「静かに座って心の中心を探すんだよ」

しまるこ「とにかく中心だ。さっき剣道やボクシングをやったとき、人間の身体には中心があることがわかったね」

しまるこ「心の世界にも中心がある。世間でよく言われる、平常心とか、リラックスとか、そんな浅薄なことを言っているわけじゃない」

しまるこ「精神世界にも、ちょうど定規で測れるように数学的厳粛を極めた神の定理が働いている。物質世界以上に正確に働いている」

しまるこ「身体に中心があって、その中心の力を手足で伝えるのが正しい格闘技のあり方だとしたら、精神にも正しい中心があって、それを言葉だったり芸術作品だったり、哲学だったり、それらはすべて、精神の中心を伝えるための媒介に過ぎないんだ」

しまるこ「だから中心を押さえなさい。中心なきところに何の意味はない」

しまるこ「それに、目的もなくただ座っていられるもんじゃないだろう」

しまるこ「禅とは自分の正中線。心の正しい座標を見つけることだ」

しまるこ「お前が生涯を通じてやることはたった一つだけだ。たった一つの一点を探すだけだ」

嫁「あなた! いい加減にしてください! この子をどうするおつもりですか?」

嫁「この子が修行すればするほど、周りの子供たちと上手くやれなくなってしまうのではないでしょうか?」

しまるこ「周りの子供と仲良く一緒に洗脳される必要もないだろう」

しまるこ「といっても……今の子供たちは群雄割拠の時代だ」

しまるこ「今は子供がYouTubeやTwitterをやるのが当たり前の時代だからね。大人のライバルとして君臨しつつある。立派な兵士だよ。まぁ、親にやらされている場合も多いかもしれんが」

しまるこ「学校に行ってみんなと同じことをやって、子供時代を終えるなんていうのは、策の中でも下の下だよ」

嫁「でもあなた、この子が修行して強くなり過ぎて、学校のお友達を傷つけてしまったらどうするんですか?」

しまるこ「下手に弱い人間の方が傷つけてしまうもんだよ」

しまるこ「事実、俺は小学校時代、喧嘩の弱い奴が、カッターナイフで相手に斬りかかったのを見たことがある。椅子で殴りつけて大怪我させたりな。喧嘩の弱い人間はそうするしかないのさ」

しまるこ「俺も昔は一輪車で相手の頭部を殴りつけて大怪我させて、お母さんと一緒に謝りに行ったことがある。高校時代も目潰しをしたり、まともな喧嘩ができなかった」

しまるこ「弱い人間ほど何するかわからないよ」

しまるこ「もちろん一番いい方法は、喧嘩を起こさないことだ」

しまるこ「俺と毎日こうやって組み手をしたり、剣術ごっこをしていれば、つまらない喧嘩をする気もなくなるだろう」

しまるこ「さて、禅だが……」

しまるこ「中心中心中心、中心から外れたものは害だと思いなさい。特に子供は外れやすい。いろんな雑多なものに心を奪われて、自分を見失い安い。ちょうど、これが自分だと思うような、ピタリとおさまる場所が心の中心にあるから、そこだけにとどまっていなさい」

しまるこ「そんな風に毎日を送りなさい。勉強も運動もお友達と話す時も、中心の一点から発するようにしなさい」

しまるこ「心の座標の、正しい位置にあり着きなさい」

嫁「あなた! この子にはまだ難しいんじゃないですか!?」

しまるこ「世の中の大人は曖昧なことしか言わないから」

しまるこ「そんな大人の言葉を信じて、みんな曖昧なまま進んでいくから、子供は路頭に迷う」

子供「…………」

しまるこ「大丈夫、剣と禅をやっていれば見つかるよ」

しまるこ「目的地がわからないまま修行したって見つかるわけがないだろう? 国語や数学や英語や、たくさん知識を詰め込んだって、それが何の役に立つのか、最終的に何の為になるのか、わからないだろう?」

しまるこ「一歩一歩が終局でいいんだ。子供の頃から」

しまるこ「だから昔の教育は、儒教や道教、そして剣と禅だったんだ」

しまるこ「儒教や道教で、人生の目的地、精神世界の人間が行き着く場所、すなわちゴールを教えた後、ひたすら剣と禅を繰り返していたんだ」

しまるこ「だから幕末で傑物が山のように出たんだろう。幕末で最も最高の頭脳を持っていた勝海舟は、人生に役立ったのは剣と禅だけだったと言っている」

しまるこ「俺は正直、学校教育は剣と禅だけでいいと思っているのだが、なかなか世の中の頭は固くて困るよ」

しまるこ「インドのランチにあるヨガナンダ先生が創立した学校では、少年達に厳しい肉体的訓練を施している。生徒達はしばしば断食を行い、夜は床の上に毛布を敷き枕を使わずに寝る。そして時々何時間もぶっ通しで瞑想する」

しまるこ「子供達を肉体の暴政から解放してやるために、厳しい訓練を施すことは、彼らに一生の恩恵を与えることになるとのことだ。ある生徒は12時間座ったまま、瞬きもせずに瞑想したらしい」

しまるこ「日本も昔はそういう教育だったんだ」

しまるこ「必要な教育は、剣と禅だけなんだ」

しまるこ「学校に期待できない分、俺がやるしかないだろう」

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