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D・カーネギー『話し方入門』書評

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この本は、非常に多くの文献から、古今東西の偉人のエピソードを羅列させて、そこから共通の事項を選び抜いてまとめるという手法を取っている(主にリンカーンの逸話が多い)。そのためか、これ一冊で3冊も4冊も読んでる気分になる。カーネギー氏独自の価値感情で書き殴っているわけではなく、叡智の血統を帯びているところが、この本の信頼を足るものにしている。

『思考は現実化する』のナポレオン・ヒルと文章の書き方が全く同じだ。まぁカーネギー氏は師匠に当たる存在だからだろうが、師弟関係にあると文章の書き方まで似てくるようだ。

カーネギーは出来上がった文章を何度も朗読する習慣があったというが、それは読んでいて直ぐにわかる。音声入力で書いたような自然さがある。書き言葉よりも話し言葉に近い形で書かれている。

話し方入門なんて言ってるけど、入門どころの騒ぎじゃない。初めから終わりまで完全にエスコートしてくれる。

文章の書き方も話し方のコツも、やはり先にこういったマニュアルを読むのはいいことだと思う。俺も加藤諦三さんの本を読んで、文章の書き方がわかった。

この本は先ほど述べたとおり、血統書付きの本であり、スピーチにおけるすべての重要要素を網羅しているから、これ一冊で十分である。ちなみに、目の前の人とコミュニケーションを高めるための話法についてではなく、壇上に上がってスピーチやプレゼンテーションを行う時のための本である。

まず、原稿の作り方について、偉人の例を取り出してくるところから始まる。

ドワイト・ L・ムーディは、宗教史に残るその数々の演説を、どのように準備したのでしょうか?  そう聞かれて、「秘訣などまったくありません」と彼は次のように話しています。「何か一つの題材を選んだら、まず大きな封筒の表にその題名を書きます。私の手元には、そんな封筒がたくさんあります。どの題材についてであれ、本を読んでいてこれはというものにぶつかったら、それをメモして該当する封筒に入れてそのままにしておきます。またいつもノートを持ち歩いていて、人の説教の中に、どれかの題材を解明してくれそうなものを耳にしたら、書きとめてそのメモを封筒に入れます。そして、たぶん一年あるいはそれ以上もそのまま放っておくんです。新しい説教の文句が必要になると、ためてあったものを全部引っ張り出してきます。封筒の中身と自分の勉強の成果を合わせれば、それで素材は十分。あとは、こっちを削ってあっちで加えるといった調子で、絶えず自分の説教の原稿に手直しをしていくので、決して内容が古くなることなどありません」

「父はほんのささいなこと──よく眠れたとか、なにか飲むものをくれ、とかいう会話以外のすべて──を一言いうたびに、メモ帳を取り出し、いま自分がいったことを書きとめた。なにひとつ取りこぼさなかったし、そのすべてが活字になる。だから、息子たちが父のいったことを自分の作品に使おうとしたら、必ず見破られてしまう。自分たちがメモしたことはすべて、父の本が出たときに、もう世に出てしまっているのだから」
ヴィクトル・ユゴー

さて、これがまず一番初めに挙げられてくるのだけど一番初めということあって一番大事だと俺は思う。どうでもいい人にとってはどうでもいい情報かもしれないけど、もし本を1冊ぐらい書きたいと思っても全然書き進められない人はここに答えがある。

というのも、俺がブログ記事を書く上で全く同じやり方をしていて、この手法が一番役に立っているし、大量生産する作家は必ずこの方法を取っているからである。俺はこの方法を加藤諦三さんの本を読んで学んだけど、書かれている内容は全く同じだ。

スピーチは壇上に上がった後よりも、その前の準備の方が大事だと言われるが、その準備に仕方について、ここまで丁寧に言ってくれる本は少ないだろう。メモが大事、そしてメモの取り方まで、偉人のエピソードを紹介しながら教えてくれる。大体この本はこんな感じで進んでいく。

個人的に一番面白いと思ったところは記憶力についての話題である。

スピーチで話す時は決してメモを見てはいけないと言っている。

確かに俺も職場でプレゼンを何度かしたことがあるけど、プレゼンの資料を読みながら進んで行くと、ろくなことがない。周りにとっても自分にとっても不幸になると、この本には書いてあったけど、まさにその通りだった。スピーチは生き物であり、資料や自分の頭の中をなぞるように話してしまうと、死んでしまうのだ。あくまで空間をなぞらなくてはならない。スピーチが終わって、質疑応答になって、やっと場が温まるのを感じた。

メモを読みながら話すと、そのスピーチは死んでしまう。例えばごっつええ感じのコントは台本がなかったというし、YouTube講演家の鴨頭さんも一切メモを見ないで話している。まさに瞬間芸だ。

だけどメモがなければ話があっちこっちに行ったり、あるいは何も浮かんでこなかったりして、話せたもんじゃないかもしれない。暗記したら暗記したで、暗記した文章を話そうとすると、思い出す作業で精一杯になってしまって、それもスピーチが死んでしまうから、絶対やってはいけないと本書では書かれている。

では、メモを見ないでスラスラうまく話すためにはどうすればいいかというと、絵を思い浮かべろと言う。

リンカーンは、当意即妙のスピーチであって、ほとんどメモを持たずにスピーチしていたという。セオドア・ルーズベルトもそうだという。ヒトラーもスピーチしている動画をYouTubeで見れるけども、ほとんどメモは見ていない。そして書かれているメモも、小さい単語や見出しだけを書いておいて、大きい単位の文節はなかったそうだ。

だから、そうやって小さな見出しぐらいはメモを用意しておいてもいいかもしれないけど、それをやるんだったら頭の中で絵でストーリーを創ってしまうのが一番いいと言っている。

それが一番確実な暗記法で、文章をそのまま読むわけではなく、映像を翻訳するように話すので、そうやって話すと、相手にとっても頭の中で映像が広がるようになると言っている。

この文章を読んでいて、俺はこの時はっとした。

学生時代に勉強している時、頭の中で絵で覚えてしまえば大体が暗記できたんじゃないかなぁと思った。

最近この本を読んでから、ちょっとした思いつきなんかをなるべく頭の中で映像化して記憶するようになってから、滅法忘れなくなった。

仕事で、午後3時から会議があったとしたら、午後3時に会議している自分を絵で想像して、それを記憶に定着させるといいだろう。

そもそもウィリアム・ジェームズ教授が言うには記憶力を全面的あるいは根本から良くするのは不可能であり、改善できるのはただ連想で繋がった一定の範囲に限られるらしい。

リンカーンは視覚と聴覚の両方を通じて覚えようとして音読したそうだけれども、なかでも視覚からの印象を最も大切にしていたとのことだ。

マークトウェインはメモを使ってる間はスピーチの要点が頭に入らなかったが、メモを止めて各要点の冒頭を思い出させるような絵を思い浮かべるようになってから、数年経った後でも、そのスピーチを思い出すことを可能にしたという。

まだ他にもいいことがたくさん書いてあったけど、個人的にはこの2点(メモと映像記憶法)が特に素晴らしいと思った。

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