控え室
城島「何してくれてんだよ〜……、しまるこ〜……」
国分「あのなぁ、お前のせいで解散になったらどうすんだよ」
松岡「落ち着こうぜみんな。しまっちゃん。なんかあったんだろ? 俺は、しまっちゃんのこと信じてる。本当のこと俺達に話せよ」
しまるこ「 松岡。前から思ってたけど、お前はいつも話し方がかっこつけてて不自然なんだよ。福山雅治もそうだけど 、話し方だけは絶対に不自然になっちゃいけない。 一瞬時間が止まるんだよ。この人はかっこつけることに夢中で、こっちのことは何も考えてくれないって気分になる。頭の悪いファンはその違和感をかっこよさと履き違えるけど、そんなことやってると本当のお前を出しきれないまま終わるぞ松岡」
松岡「……」
しまるこ「松岡。お前は一度、生放送で全裸になった方がいい。そうすれば男のファンが増える」
城島「女のファンが減るだろ」
長瀬「おい、ふざけんなよしまるこ!」
しまるこ「 長瀬。お前は演技はいいけど歌は駄目だな。ヴォーカリストとして声質がよくない。どこにでもいる兄ちゃんの声だ」
長瀬「ああ?」
しまるこ「そうやってヤンキーみたいな役をやってるのが一番いい」
国分「しまるこ! お前のせいで今俺達がどういう状況になってんのかわかってんのかよ! 俺達だけの問題じゃねえんだよ! 番組スタッフやスポンサーや事務所だったり、関係者にどれだけ迷惑かけてんのかわかってんのかよ!」
しまるこ「国分。ガチンコファイトクラブはもう終わってる」
城島「国分の言うとおりだしまるこ。ファンがどれだけ悲んでるのかわからないのか?」
しまるこ「 ファンだってわかってるだろ。俺たちがオワコンだってことに。コンサートも、昔からの根強いファンが骨を拾いにやってくるだけだ。『宙船』歌って、酔っぱらいが騒いでるだけだ。昔あんなにいた女の子たちがいなくなっちまったから、『Rの法則』の共演者に『うわさのキッス』をするしかなくなっちまったんだろーが……!」
城島「しまるこ……」
しまるこ「ファンも気づいているんだ。SMAPも解散して、嵐も休業を発表して、俺たちもとっくにその段階に来ているのに、だましだましやっていることに」
長瀬「サガること言うんじゃねーよッ!」
城島「でもな、しまるこ。謝らないと、その風呂場の汚れのような根強いファンすらいなくなっちまうんだぞ?」
しまるこ「いや、ここで謝って世論に屈する方がまずい。『やっぱりTOKIOは社会や既得権益に屈するんだ。結局芸能人生が大事なんだぁ〜』って思われてしまうんだ。世論は今、それに反抗する豪傑を求めている。リーダーはおっさんだから時代錯誤しているけど、若い奴らは、謝らない俺達を見て、『へぇ〜、TOKIOって、国家権力に屈しないんだぁ、すげぇ〜』って思うんだ」
城島「いや、でも、これまで支えてきてくれたファンは……」
しまるこ「リーダー。あんたはファンがファンがっていうけど、エアコンのファンのように空回りしているよ。ファンは果たして俺達が世論に負けて、泣きながら宙船歌うのを聴きたいかねぇ?」
長瀬「お前が謝んねーと、宙船も歌えねぇんだよ!」
国分「おいしまるこ。俺たちの前では何言ってもいいけど、謝罪会見では絶対に謝れよ?」
しまるこ「国分。ジョン・レノンやフレディ・マーキュリーが謝ると思うか? 二流三流は謝るけど、一流は決して謝らない。本物はいつだって自分の信念をメロディーにのせる。ここで謝るのは自分の音楽を否定することになるんだ。 沢尻エリカはいいとこまで行ったけど、惜しかった」
松岡「なんでこいつ女子高生とキスしといてこんな偉そうなん?」
記者会見
記者「しまるこさん! 女子高生とキスしたというのは本当なんでしょうか?」
しまるこ「はい」
記者「なぜキスしたんでしょうか?」
しまるこ「したかったからに決まってるじゃないですか(笑)」
記者「相手の女性は嫌がっていたと伺っていますが?」
しまるこ「彼女はもともと知能が低くて、僕と一緒にいる時は楽しんでたくせに、親やマスコミが騒ぐと、一緒になって僕の悪口を言っちゃうほど、ずるくて未熟なんです」
記者「あのー、しまるこさんの口から謝罪の言葉が聞こえてこないのですが」
しまるこ「は? 謝りませんよ?」
記者「は?」
周囲「(ザワザワザワ……!)」
しまるこ「謝罪ならむしろあなた方がするべきでしょう。寄ってたかって、一人を取り囲み、さぁ泣かしてやるぞ、情けない大人の姿を公知に晒してやるぞ、と意気込んでいることの方が謝罪に値します。あなた方は局に守られてるし、この場にたくさんのお仲間がいるし、世論の追い風もあるし、さぞ強気でしょう。矢が飛んできたら引っ込めばいい。あなた方の一人でも私と今入れ替わったら、 泡を吹いて卒倒するでしょう」
記者「しまるこさん。あなたはどれだけの関係者に迷惑をかけたか分かっているのですか?」
しまるこ「関係者……ですか。あなたは今朝、廊下ですれ違った女性記者の性的感想文ならいくらでも書けたけど、目の前の仕事は2、3行書いてタバコを吸いにいってしまい、昼はうなぎを食って、夕方過ぎにやっとの思いで怒られない程度に仕事を片付けて、その足でここに来ましたよね? 僕にはわかるんです。関係者なんていうけど、関係者の一人一人なんてこれが実態です。うなぎ食ってタバコ吸ってるだけです。例えば、『Rの法則』ですか? あれは僕が司会をやってましたけども、あの番組がなくなったとしても、プロデューサーもスタッフもその仕事をやらなくなるだけです。楽しみにしてた視聴者も、番組が視れなくなるだけです」
記者「視れなくなったら困るじゃないですか」
しまるこ「どうせ『Lの法則』が始まるだけです。いいんです。『10代の水着女子ポロリしやすいポイント!』をカンペ通りに言わされて、僕たちは下品な言葉で口を汚すだけの番組だったんですから」
記者「どうして女子高生とキスしといてそんなに偉そうなんですか?」
しまるこ「僕がロックだからです」
記者「(お前ベースだろ)キスをした女子高生とは『Rの法則』で知り合ったそうですね?」
しまるこ「はい」
記者「企画によっては、『スカートがめくれる問題』と題して、女子高生に強風を当てて実演させたりするなど、あからさまなお色気企画もあり、一部では『Rの法則』がしまるこさんの欲望に火を付けたのではと憶測が飛び交っていますが?」
しまるこ「おっしゃる通りです。私はあの番組の被害者です。あの番組に出演するモデルやアイドルは、楽屋が男女同じであり、連絡先の交換が容易なんです。男女交際の温床になってました。同じ司会の高市アナウンサーも楽屋で出演者とキスしてましたよ。NHKのアナウンサーはみんなやってました。なんで僕だけ矢面に立たされなきゃならないんですかね?」
記者「簡単に仲間を売るんですね。ロックだったんじゃないんですか?」
しまるこ「僕はベースだからいいんです」
記者「では、被害者の女性に謝罪の気持ちはないということなんですね?」
しまるこ「嫌だったら家に来るはずがありません。女子高生はいつだって世論を隠れ蓑にする生き物なんです。あなた達と一緒です。『大丈夫? 変なことされなかった?』と周りに同情されると、ぶわぁーーっと涙が溢れてしまうんです。さっきまで一緒にキャッキャ言いながらドラクエウォークやってたのに、『大丈夫?』と言われると、ぶわぁーーっと涙が溢れてしまうんです。それに付き合わされた私の目にもなってください。だから私は絶対に謝りません」