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下半身アワビ大洪水

しまるこ「いやーね、あのね、俺の学校の、小学校の時、たぶん小学校4年生の時だったんだけど。

その子がね、ある日、学校の始まる時、朝の9時とかかな? 第一限の授業が始まる前から、ずっと、『下半身アワビ大洪水!!!!!!!!!!』

『下半身アワビ大洪水!!!!!!!!!!』ってずっと叫んでんだよね。もうずっと叫んでんの朝から。

それがいつだったか分かんないけれども、それが阪神淡路大震災の日だったか、その翌日だったのか、1週間後だったのかどうかもわかんないけれども、もしかしたらぜんぜん関係ない日だったかもしれないけれども、ね。その子、ずっと、朝から、『下半身アワビ大洪水!』『下半身アワビ大洪水!』、それだけの言葉を覚えたサルみたいに、朝から、ずっと、叫んでたんだよね、休み時間になってもそればっかり言ってて」

友達「いい言葉思いついて楽しくなっちゃったのかね:

しまるこ「小学生なりに何かうまい言葉を思いついた感じがあったんだろうね」

友達「小学4年生だっけ?」

しまるこ「そう」

友達「小学4年生で淡路をアワビにするあたり、ちょっとませてるね。大人びているっていうか。

大震災を大洪水にするあたりは、ちょっと無理があるというか、音的な響きでいうと、ちょっと無理があるからね、

俺も、ちょっと小学4年生だったら、女性器とあわびとの連関性に気づけた自信がないわ。ちゃんと大震災を大洪水まで変えているあたり手が混んでいるというか、かなり大人びてるっていうか、守備範囲広いっていうか勉強してるような気がするんだけど」

しまるこ「今思うと、そいつが思いついたんじゃなくて、どっかで拾ってきたネタなんじゃないかって思うんだけどね」

友達「そうかもね。変な雑誌とか読んで、深夜番組とかでやってたのかもね。

いや、でも、当時のまだ柔らかい時代だといっても、さすがにそれはコンプライアンス的にないか」

友達「俺は多分目の前で言われても気づかなかったかもしんないなぁ」

しまるこ「アワビってなんだろうって思った連中が教室の大半だったと思う」

友達「そういう意味で言えば、守備範囲は広いっていうか、ませてるよね。小学生に小四にしては」

しまるこ「でも、やっぱりまぁ不謹慎じゃん?」

友達「そりゃあね」

しまるこ「で、そのとき、うちの担任が女の先生だったんだけど。まぁこれがまた嫌な先生でね、今じゃ考えられないんだけど、すごい体罰ばっかする先生だったんだよ。50歳くらいの年増のババアで、男性教師みたいに腕力に自信がないからか、何か、生徒が悪いことをすると、お仕置きとして、腕をぎゅってつねって来るんだよ、叩くってことはほとんどなかったんだけど、ものすごい強い力でツネってくるんだよね(笑) 俺も何度もつねられて、すごい二の腕が青あざだらけになったのを覚えてる。そのクラスの生徒は、もう、みんな、二の腕が青アザだらけになってひどかったよ」

友達「うん」

しまるこ「耳なんかも、すごい力でグイーッて引っ張ってくるんだよ。あれをやられると、何が怖いかって、エジソンなんかもあれをやられたせいで耳聞こえなくなっちゃったっていうじゃん? 駅員のアルバイトをしているときに、上司に『ちゃんと聞いてんのか!』って耳をグイーッと強くひっぱられたせいで聴力をほとんど失っちゃったっていう。俺も、その教師に、何度もすさまじいパワーで耳を引っ張られたんだけど、よくもまぁ無事だったと思うよ。あれは、今でも思うけど、すごい大問題だったと思うんだけれども」

友達「うん」

しまるこ「その、教師がね、その、『下半身アワビ大洪水』って、その生徒が言ってるのを目にしたときだけは、そのときだけは、つねったり耳を引っ張ったりすることなく、急に顔つきが変わって、静かにその子に近づいていって、急に、机と椅子を持ち上げて、廊下に出しちゃったんだよ。ガタガタガタ……って、静まり返った教室で、教師が一人で机と椅子を運んでいる姿と音は異様だった。そのときだけは、明らかに顔色がガラッと変わってね。雰囲気が重いお仕置きというか」

友達「へぇ」

しまるこ「つねったりとかそういうのもなくって、本当に、教室から追い出されちゃって」

しまるこ「そのあと一ヶ月くらいだったかなぁ? ずっと机と椅子が廊下に置かれっぱなしでさぁ、その間、その子、ずっと廊下で授業受けてたんだよね。まぁ扉閉まってたから、受けるも何もないんだけど」

友達「一ヶ月!?」

しまるこ「一ヶ月」

しまるこ「俺も、一日とか二日とかね、次の日になったら椅子と机が戻ってるだろうと思っていたら、みんなもそんなふうに思ってたと思うんだけど、あれ、まだ置いてあんなぁって……、なげぇなぁって、たぶん思ったより長かったから、こうして記憶の残りカスみたいに残ってると思うんだけど。一ヶ月ずっと、その机と椅子だけ廊下にはりだされてあったっていうのが、やっぱりちょっと、今でもなんか、記憶に映像として残ってるんだよなぁ」

しまるこ「小学4年生の記憶ってもう何も残ってないんだけれども、そのことだけは残ってる」

友達「じゃあそのあいだ授業とかどうしてたの?」

しまるこ「だから、ずっと廊下で、椅子と机で受けてたよ」

友達「ずっと廊下でその一ヶ月、朝から夕方まで、その机と椅子に座って生活してたってこと?」

しまるこ「そうだよ」

友達「今だったら大問題だね」

しまるこ「まぁ、その生徒っていうのが、俺だったんだけど」

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