友達「あんまさぁ、音楽の話とかはしないけどさぁ、なんか好きな曲とかってある?」
しまるこ「うーん」
友達「この曲がいちばん好きとかってある?」
友達「やっぱりミスチル?」
しまるこ「ミスチルは好きだけどね。基本的にはミスチルがやっぱりJ-Pop会の中じゃナンバーワンになるんじゃないかなぁ」
友達「ふーん」
友達「じゃあいちばん好きな曲もミスチル? 『Tomorrow never knows』とか『名もなき詩』になってくる?」
しまるこ「どうかねぇ」
しまるこ「単純に、桜井氏が、凡百のミュージシャンたちと魂のステージが違うとは思うけどね」
友達「昔、竹内まりやの『純愛ラプソディ』が、あれは大変な名曲だ!ってえらく騒いで俺に電話かけてきたことあったけど、『純愛ラプソディ』は?」
しまるこ「まぁ、いちばんに数えてもいいけどさ」
しまるこ「案外言葉がない音楽の方がいいかもしれないね。俺もほとんど音楽は聴かないけど、姉ちゃんが作曲活動やってる関係で、実家に行くとさぁ、姉ちゃんがずっとモーツァルト流してるんだけど、モーツァルトは何回聴いてもいいと思っちゃうね。多分カフェとか行ってもモーツァルトだったら、毎回流れててくれても嬉しいかもしれない」
友達「歌詞がない方がいいかもしれないね」
しまるこ「ミスチルはちょっと声の主張や存在感が強すぎてね、ずっと聴いてると、食傷気味になってきてしまうところがある」
友達「ふーん」
しまるこ「でも、やっぱり一番はPOISONかな」
友達「反町隆史の?」
しまるこ「うん」
友達「マジで言ってる? ふざけてる? どっち?」
しまるこ「いや、マジで言ってるよ」
友達「大丈夫かなぁ? ちゃんと納得させてくれるのかなぁ?」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「大丈夫だよ(笑) ちゃんと納得させてみせるさ。今までだって納得させてきたじゃん」
友達「なんか、この会話が、シャーロックホームズとワトソンみたいになっててウケるけど」
しまるこ「『盗まれた手紙』のオーギュスト・デュパンみたいな話し方になってるからね(笑)」
しまるこ「昨日さぁ、たまたま蕎麦屋行ったらさぁ、1990年代後半のドラマの主題歌特集やってたのね。で、その時に宇多田ヒカルの『First Love』が流れてて、主題歌となった『魔女の条件』っていうドラマが、紹介映像として映ってたのね。蕎麦屋のテレビに」
友達「うん」
しまるこ「でさぁ、すごかったのがね、その冒頭シーンに、タッキーがさぁ、学校の正門にある、大きな桜の木の上に、片膝立ちで座ってんの。そこから、登校してくる生徒たちを見下ろしてんの。で、新任教師として赴任してきた松嶋菜々子が校門をくぐってくるわけだけど、そこで、松嶋菜々子が、木の上にいるタッキーと目が合って、しばらく見つめ合うの。それが、『魔女の条件』の最初のシーンなんだけど。俺、心の中で爆笑しちまってさぁ。蕎麦ノドに詰まらせて死ぬかと思ったわ。1100円の、ノド越しの良い蕎麦じゃなかったら死んでたわ(笑)」
友達「昔のドラマって行き過ぎてるところがあるからね」
しまるこ「昔のドラマのぶっ飛び具合はすごいよ。今のドラマでさぁ、大きな桜の木の上に座って、登校して来る生徒たちを見下ろすシーンなんてある?」
友達「(笑)」
しまるこ「月9だか木曜10時だかわかんないけどさぁ。普通、恋愛ドラマでさぁ、いや恋愛ドラマだからかもしれないけど、みんなが登校してくる校門の前にある、大きな木の上に、座ってもたれかかってんだぜ? 朝の8時に。その高さまでどうやって登ったんだよっていうツッコミもあるんだけど、そのツッコミを抜きにして、ただ絵として、絵的に、すごく面白かったの」
しまるこ「木の上に座って、寄りかかって、登校してくる生徒たちを見下ろしてんの」
友達「その時点でギャグだね」
しまるこ「その時点でギャグなんだけど、笑わせるために監督がやったわけではないと思うんだよね。たぶんマジでやってると思う。昔の時代だと、あんまおかしいと思わなかったのかな? もしかしたら、当時の俺もつっこまずに、普通に見ちゃってたかもしれないわ」
友達「昔って言っても、そんな昔じゃないだろ(笑)」
しまるこ「そうなんだけどさ」
友達「バガボンドで、宮本武蔵が一乗寺下りの戦いで、樹上で息を潜めながら吉本の門弟たちを視察するシーンはあったけどね」
しまるこ「高さ的にも、それくらいなの(笑)」
しまるこ「まぁタッキーじゃなきゃ務まらないっていうか、タッキーだけだね、あんなのが許されるのは。今、他のジャニーズや俳優で、そんなことができる奴いる? 少女漫画でもやるかねぇ? 魁!!男塾だよね、やっている内容としては。漫画よりスケールがでかいなと思って、すげえなと思ったわ」
しまるこ「宮崎駿がさ、『フィルムのどこか途中から観始めても、力のある映画は、瞬時に何かが伝わって来る。数ショットの映像の連続だけで、作り手の思想、才能、覚悟、品格が、すべて伝わって来るのである。要するに、どこを切ってもたちまち当りかはずれか判ってしまう。まるで金太郎アメだ。B級C級は、どこを切ってもB級C級の顔しか出て来ない』って言ってたんだけどさ」
友達「うん(笑)」
しまるこ「だから宮崎駿は、映画を途中から見始めて途中で退席することもしばしばで、テレビを見ていて気に入った作品でも途中で満足してチャンネルを変えてしまうらしいんだけど、俺もこのシーンだけでお腹いっぱいになっちゃって。もう十分って思って、席を立とうと思ったね」
友達「クソドラマだと思ったからでしょ(笑)」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「もう本当にお腹いっぱいって思ったの(笑)そば食ってお腹いっぱいになったのもあるんだけど、本当にSランクあげてもいいくらい、名作ドラマだなぁと思って」
友達「見る価値ねーと思って出ていったんだろ(笑)」
しまるこ「でね、そのドラマ紹介の時にさぁ、やっぱり、1990年代はドラマも熱ければ音楽も熱いね。『魔女の条件』の後に、『GTO』の映像が流れて。で、POISONが流れてきてさぁ、なんじゃこれって思ったね」
友達「うん」
しまるこ「あれは音楽じゃなくて思想だね」
友達「だからふざけてんじゃん」
しまるこ「いやマジだよ」
友達「本当に、いちばんいいと思ってる曲がPOISONなの?」
しまるこ「いや、マジでそうだよ」
しまるこ「あの曲の流れている精神に、すべての答えがある気がしたね。俺はなんていうか、われわれ現代人が、これから生きていく上での精神としてさぁ、マジで深刻に世の中にぶつかる必要はないっていうか、いろいろ反骨精神とかあるけどさぁ、三木道三とか湘南乃風みたいにかっこつけたりしてるより、あれくらいの方がいいよ」
友達「それは一周回ってってことでしょ? 二週なのか三週なのかわかんないけど」
しまるこ「やっぱり声がいいよ。あのダミ声っていうかね。他にいる? あんな声出す人。まぁ押尾学とかちょっとそういう声質あるかもしれないけど。ちょっと押尾だとキザが過ぎるね。反町の方が純粋っていうか、言ってしまえば、向いてないじゃん、ボーカリストとして。TOKIOの長瀬なんかもさぁ、ボーカリストにあまり向いてない声だよね。そういう、ボーカルにまったく向いてない人間が出す声っていうのがさぁ、素人の魂の丸出しっていうのが、刺さるというか」
しまるこ「竹原ピストルとかも、アーティストの洗練された、手練手管のように感じてしまうところがあるんだけど、やっぱり反町はいいよ。GTOもさ、この広い芸能界を見渡しても、反町以外に適任なんていなかったしね。本当にすごいと思う」
しまるこ「変に真面目な反骨精神すぎないのがいい。この令和の時代に、いちばんいい精神だよ。ああいう歌の精神がいちばん明るくなりそう」
友達「『上を向いて歩こう』みたいな曲の代わりにってことね」
しまるこ「そうそう」
友達「『上を向いて歩こう』を一周まわると、POISONになるってこと?」
しまるこ「さぁ、よくわからないけど(笑)」
友達「まぁ、俺も、『上を向いて歩こう』を人生の校歌みたいにされるなら、POISONの方がいいけど」
しまるこ「だから、歌っていうか、思想だよね」
友達「ふーん」
友達「ウルトラソウルとかは? あれはPOISONとは違うの?」
しまるこ「ぜんぜん違うでしょ(笑)」
しまるこ「ウルトラソウルは、ただの良曲。良曲ってほどでもないけどね。普通に作品としてパッケージされているし、パッケージを飛び越えてるわけではない、岡本太郎でいう、キャンパスをはみ出せ!を体現しているようで、体現していない」
しまるこ「POISONははみ出てると思う(笑) 反町の本音の精神がダダ漏れっていうか」
友達「プロデューサーのだろ(笑) 反町の本音の体になってるけど、そういう反町の本音的なものを作ろうっていうプロデューサー達の思惑がめっちゃ伝わってくる曲なんだけど(笑)完全にビジネスライクでしょ(笑)」
しまるこ「(笑)」
友達「だから、評価が雑なんだって(笑) 『魔女の条件』といい、『POISON』といい、お前さっきからそんな評価しかしてないじゃん(笑)」
しまるこ「あの〜、岡本太郎がね、とあるプロデューサーに、岡本さん、なんか岡本さんの作った音楽聞いてみたいんで作ってくださいよって、楽曲制作の依頼をされたらしいのね。それで、岡本太郎は、音楽においても、キャンパスをはみ出してやろうと思って、ふん、ふんっていう、鼻息を荒くしただけの、 いや、メロディーというものをなくしてやろうと思って、鼻息をメチャクチャにふんふん鳴らしただけのデモテープをプロデューサーに送ってやったらしいんだけど、そしたら向こうはえらく感動しちゃったらしくてね。実際にオーケストラの会場でもそれを流したっていう話なんだけど」
しまるこ「POISONが反町隆史の鼻息に聴こえる(笑)」
友達「(笑)」
しまるこ「でね、岡本太郎が、(何度も、岡本太郎、岡本太郎って言って悪いんだけど)、流行なんてものは文字通り流れていってしまう。だから僕は流行なんて関係ないものを作ってやるんだって言ってたけどさ、POISONも、流行を打ち破ってるような気がする」
友達「ふーん」
しまるこ「竹内まりやの『元気を出して』もちょっと悲しくなっちゃうじゃん? POISONはちょうどいいよ。まったく悲しくなるところがないんだから。どんなにいい歌も、悲しくなるところがあるんだけど、POISONにはまったくない」
友達「POISONで悲しくなるようになったらこの世も終わりだね」
しまるこ「POISONくらいじゃない? 『明日があるさ』でさえ、ちょっと悲しくなるところがあるもん」
しまるこ「反町が死んだ後に流れたとしても、たぶん悲しくならないと思う。他にそんな曲はないよ」
しまるこ「歌手じゃなくて反町に歌わしたところがよかったね。反町の思想や信念がダダ漏れというか」
友達「ないんだけどね」
しまるこ「そう、ないんだけど」
しまるこ「思想も信念もないんだけど、あるようにして歌っている空っぽ感が」
友達「うん」
しまるこ「上手く言えないんだけど」
友達「わかるよ」
友達「POISONともういっこ、曲あったじゃん」
友達「思い出した。『Forever』だ」
友達「じゃあ活動が少ないのが残念だね。『POISON』と『Forever』だけだもんね。もっといっぱい曲作って欲しかったんじゃない? お前としては」
しまるこ「んなわけねーだろ(笑)」
しまるこ「POISONだけで十分だよ(笑)」
友達「(笑)」
しまるこ「ベストアルバムなんて出されてみろ(笑)ぜってー買わねーし聴かねーよ(笑)」
友達「どっちだよ(笑)」
友達「そば屋で、そば食ってる時に流れて、一瞬面白いと思っただけでしょ?」
友達「もう聴かないでしょ? また聴きたいなんて思ってないでしょ?」
友達「運転中とか、聴きたいとか思う?」
しまるこ「(笑)」
友達「Bluetoothでスマホ接続して、POISONを運転中に流す?」