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運動会のリレーを台無しにした話

今日は運動会のリレーを台無しにした話をしたいと思います。

確かそれは高校2年か3年の時でした。

汚い例えから始まって恐縮ですが、俺の高校時代は、俺にちんこがついてるというより、ちんこに俺がついてるという表現がピッタリで、クラスメイトからも、よくそう言われてました。

脳内もちんこでできていて、全身ちんこと言っていいぐらい性的パワーに溢れて、自分の肉体が一つの鉄串のようで、灼熱を帯びていたような気がしました。そんな、高校時代でした。

例のごとく学校行事でリレー(笑)をやることになりました。
グラウンドではなく体育館でやるようでした。

高校生といったらもういい大人なので、一生懸命かけっこしたり勝敗を競って一喜一憂するような、そんな感想を持ち合わせていません。

それでも体育の時間はほとんどリレーに費やされました。大会間近になってくると、帰りのホームルームの時間を使って練習をする始末でした。

教師も生徒もただ時間を浪費するだけで、当日は誰が見に来るわけでもないのに、何を目的にして、誰か得をするためにやるのか、はっきりそれをプリント化して配布してから始めて欲しかったです。

本番が訪れました。
別に運動会でもなんでもなく、ただのリレー大会だと思います。

各学年各クラスたち、10組か20組ぐらいでしょうか。
同時に走ったんでしょうか? いや20組が同時に走ったらおかしいか。とりあえず、みんな、よく走りました。

俺は大して足は速くないので、終わりから4番目か5番目ぐらいに走る順番だったと思います。

みんな面倒臭がってたけど、いったん始まると馬鹿みたいにはしゃいで、バトンを渡された人間も、「自分に全ての命運がかかっている」とでもいうかのような、桶狭間の信長みたいな顔をするので、イラッとしました。

運動部の人間がリードしたと思ったら、家で漫画描いてそうな女がそれを帳消しにしたりして、切磋琢磨していました。

オリンピックのように精鋭達だけで構成された大会よりも民主主義的で裁判員制度みたいでした。

なかなか予想が見えずハラハラして、なんだかんだ言って結構みんな楽しんでました。

それで、とうとう俺の番になりました。

「よっし! しまるこ行け!」
「がんばれ!」

俺はヘラヘラしながら自分のコースに立って身構えました。
すると、変な視線が自分の心臓に突き刺さるのを感じました。

いつも一緒にふざけている悪友たちが、俺をニヤニヤしながら見るのです。

しまるこなら何かをやってくれるに違いない。
まさか普通に走って終わりにするわけがない。
全裸で走るのか。全裸でカラーコーンを被って走るのか。
走ってる女のケツに向かってドラゴンダイブするのか。
バトンをコンドームみたいに被せるのか。

そんなことを期待しているような目を向けられてしまいました。俺は海南戦の終了真近の仙道みたいな気分でした。

俺は村上春樹の小説のようにやれやれと言うと、バトンは渡されて一生懸命走りました。

こんなちっぽけな小市民が、走ったり騒いだり、キャーと言ったりワーと言ったり、チャンチャラおかしくてしょうがありません。

俺がこの手で破壊するしかありません。

バトンを渡されて少しばかりの歓声がわくと、妙にヒーローになったような気分を覚えます。みんなこれにやられてしまうんでしょう。小さな器で構成されているから、すぐに満ち足りてしまうんでしょう。

ナルシストがナルシストにバトンを渡して会場全体がナルシシズムに満ちていました。

お散歩してる他校の生徒が、何かの間違いでこの会場に足を踏み入れてしまったら、泡を吹いて即死するでしょう。

体育館の中をぐるぐる回るように走ってリレーやってたんですが、俺は曲がるところに差し掛かっても曲がらず、そのまままっすぐ走りました。

まっすぐ走ると当然壁があって、俺は壁に向かって走りました。
壁に向かって壁に到達しましたが、壁に頭をつけたままひたすら足をバタバタして走り続けました。

行き止まりだけどずっと走ってました。

ドラクエでよくある感じです。
行き止まりになっても手足動いてますよねドラクエ。

結構みんな笑ってくれました。
リレーの崩壊を期待してた悪友たちも、「ちゃんとひと仕事終えやがったな」といった感じで、満足気でした。

この通り俺は壁に向かってずっと走っているので、後続者は困ってしまいます。

一生バトンが回ってくる気配がありません。

しかし、幸運なことに、後続者は俺の悪友でした。

こいつも、自分のところに永遠にバトンが回ってこないことが分かると、俺の後ろに向かって走り始めたのです。
俺が壁に向かって走って、こいつは俺の背中の後ろにくっついて走るのです。

それはまるでドラクエのパーティみたいでした。

ドラクエのパーティみたいに、3人も4人もぞろぞろと、壁に向かって行き止まりになってるのに走り続けるのとよく似ていました。

「パーティーだ! ドラクエのパーティーだ!」
そんなツッコミが聞こえてきました。
ちょうど俺が欲しかったツッコミです。

会場全体も笑いに溢れました。

普通の学校行事で盛り上がれない血の気の濃い若い男衆には人気を博しましたが、おさげでスクエア型のメガネをかけた女や、ソフトボール部の女主将やブスや処女は我慢ならないようでした。

たった一人の男によって運動会がぶち壊されたことに発狂していました。

 

あれほど頑張って練習してきたのに。

ひどい。

私あんなに一生懸命走ったのに。

走るの苦手だけど、頑張って、私なりに一生懸命走った。

やっていいこととやっちゃいけないことがあるだろう!

全然笑えねーし……!

そういうのは休み時間とかでやってくれよ、今は神聖な運動会の時間だろう。

 

教師も教師らしいことをしなくてはならないので、こんなことを言いました。

「お前はそれで楽しいかもしれないが、お前の行動によって嫌な気分になる人がたくさんいるんだ。お前にとっては運動会はおもちゃかもしれないが、それを楽しみにしていた人、今日のために本気で練習してきた人もいるんだ。お前はそんな人たちの気持ちを裏切ったんだ」

教師は、自分の価値観を子供に伝えて満足でした。
ぷるぷる震えてエクスタシーを感じているようでした。注意しながらも天に昇っていってしまいそうでした。パンツもビチャビチャに濡れてました。

教師なんて生き物は、同世代の人間に相手にしてもらえないので、仕方なくチン毛が生えたばかりの猿みたいな高校生にお友達になってもらうしかないのです。発達障害が就く職なのです。

みんなの楽しい運動会をこの手でぶち壊したのは快感でしたが、ブスと処女と変態教師によって辱めを受けて、その日はなんだか頭がおかしくなってコイキングみたいに、いつまでもぷるぷる震えていました。

 

しかし、 一番腹が立ったことは俺しか怒られなかったことです。俺の後ろをパーティのように走った男がいたのに、そいつは何も怒られなかったのです。

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