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坂道グループのアイドルは、「逆に」秋元康に抱かれたくなってしまうのではないか。

新年早々なぜ秋元康について書いているのかわからないが。

とあるVTR映像を見ていたら、世間の意見とは違って、逆にアイドルの方が秋元康に抱かれたかがっているように見えたので、書くことにした。

秋元康といえば、テレビやラジオに出演して話しているとき、これ以上下げられるかといったギリギリの低い、精神の奥深いトーンで、深く響いてくる喋り方をするなぁと思って、この落ち着きはどこから来ているんだろう、と以前から気になっていた。

モテるだろうなぁ、といつも思っていた。当時日本で最高の女性と結婚してしまっただけのことはある。やれ守銭奴だとかがめついデブだとか、枕営業のドンだとか、世間では汚い野次が絶えないが、俺個人としては、このモテ力は金の力からきているものではないと踏んでいた。それは作詞一つ見てわかる。あの年齢で、「君しか勝たん」「君に叱られた」とか、ぴえん風な詩を書けてしまうのはすごい。秋元康本人も、「自分にはアイドルプロデューサー、放送作家、いろんな肩書きがあるけど、あくまで私は詩人である」と言っている。自身の作詞については、いつも坂道メンバーをくまなく観察していて、彼女たちを見て気づいたことがあれば、何でもメモに書き留めていると言っている。そして音源を渡された時、メモの中からこれはというものを見つけてきて、整理して作成しているとのことだ。

以前どこかの記事で読んだのだが、現代の詩人は、職業詩人でいえば秋本康、作家詩人でいえば桜井和寿に二分されるとあって、俺はこれに得心がいった。作詞といえば確かにMr.Childrenの桜井さんだが、桜井さんに坂道グループの作詞は難しいだろう。桜井さんも、自分の娘達がボーカロイドに夢中になっているけども自分には何がいいのかさっぱりだ語っていたし(取り入れようと勉強しているとも言っていたが)、桜井さんの作詞はごくごく個人的な、自身の内面を深く掘り下げた、個人の小宇宙を書いているように見えるが、秋元康はアイドルの子たちを観察したものを書いている、観察詩とでも言おうか。俺が秋元康の詩でいちばん好きな詩は、西野七瀬の卒業テーマ曲、「帰り道は回り道したくなる」だ。

流行りといったら流行りかもしれないが、いくら流行といえども、「君に叱られた」の振り付けは可愛すぎる。歌詞もいいし曲もいい、特にふりつけに目が行ってしまう、どうやったらこんなに可愛い振り付けが思いつくんだろうと、何度も見てしまう。誰もこの振り付け師の名前を知らないことはもったいないことだ。

岡本太郎は昨今のJPOPは反吐が出ると言っていて、流行は流行にすぎず、曲の構成がどれもワンパターン、歌詞もメロディも似たりよったりで、サビにいったら盛り上がり、芸術という観点から見ると最低であると言っていた。岡本太郎も作詞(作曲も兼ねて)を求められたことがあるが、鼻息でフン! フン! フン! フン! とテープに吹き込んで渡して、言葉もメロディもない鼻息をフンフンさせただけのものを送ったらしいが、それはそれで感動を引き起こしたらしい。

まぁ、それはさておき、少し前に、とある特番番組で、秋元康と坂道グループの新人の女の子が対談をやっていて、「今回の詩どうだった?」と秋元康が新人の女の子に作詞についての感想を求めたのだが、女の子が、「あ、はい、あの、うまくいえないんですけど、あの、なんか、あのすごくよかったです。ほんとうに何度も何度も読んだんですけど、その、なんかよかったとしかいえなくて」と答えていた。それに対して秋元康が、「なんかよかったって、それでいいんだよ。その、なにかっていうのが大事なんだよ。言葉にできることなんて大したことないんだ」と返していた。内容もそうだが、話し方そのものがとても優しかった。ぬいぐるみのようでいて、植物のように静かで達観していて、ジャムおじさん、ムーミンのパパ、サンタクロースみたいだった。彼女だって調子がいいことを言っているわけではなく、伝わってほしいこの想いという体で語っており、秋元康はその気持を汲み取っていて、女の子も汲み取ってもらえたことをわかったようで安心し、スタジオには暖かい時間が流れていた。

前田敦子が半ケツで佐藤健に犬コロみたいに抱っこされている写真がスキャンダルになったときも、秋元康はコメントを求められて、「だからいいんですよ。あの半ケツが前田の魅力なんだろうなぁ」と語っていて、プロデューサーである秋元康がこんな感性でいるから、そこから下に波紋し、AKB組織や社会全体も、スキャンダルがあるから逆に人気となるという風潮ができあがっている気がする。時代もあるかもしれないが、秋元康の感性の波紋によるところが大きいと俺は思っている。これまでのプロデューサーや業界人は、これをやるなあれをやるな恋愛はするなと言っておいて、あわよくば自分が恋愛してやろうと下心が隠れ見えるが、秋元康にはそれがない。秋元康は、アイドルを商品としてでなく、人間としてバラエティに富んだ多様性をそのまま打ち出そうとしている。

そんなこんなで、秋元康はとても優しい話し方をするなぁと思っていたのだが、別の番組では、オラついた口調で話しているのを見かけた。確か、乃木坂かなにかの新曲の練習風景のVTR映像だったと思うが。彼女たちは全員ジャージ姿でスタジオに寄せ集められて、ダンスの稽古をしていた。そこに秋元康が登場した。

「秋元さん。いらっしゃいました!」

「秋元さん」

「秋元さん!」

大勢のスタッフ達が仕事の手を止めて、廊下に並び、その真中を秋元康が歩いて登場した。ダウンタウンがスタジオ入りするときもまったく同じことが行われているのを見たことがあるが、テレビというのは大名行列みたいなことを本当にやっているんだと驚かされたものだった。周囲に黒人SPを供に連れていた方が映えるように、人の評価は、その人が着飾るよりも、取り巻きの方が重要だったりする。

「◯◯」

「はい」

「どうだったMステ、タモさん話しやすかっただろ」

「はい」

「◯◯」

「はい」

秋元康は彼女達を呼び捨てで呼んでいた。彼女たちだって、さん付けで呼ばれたら、やっぱり見た目通りオタクだったんだと思ってなめてしまうところがある。さん付けだったらモテないだろうなぁと思った。こういったスタジオでの練習時では、今は彼女たちの気は締まっているし、なよなよした優男みたいな感じを出されるとモテるものもモテなくなってしまう。「君に叱られた」という歌詞を書けるあたりから、秋元康はわかってやっていると思う。女性がジャージを着て、女性だけが集まって練習していると、きな臭い空気になってくるところがあり、彼女たち自身がギブアップというふうに水中から顔を上げるようにして、少し叱りつけてくる男を求めだす。

秋元康は、もうひとり、偉そうな70代くらいのジジイを連れていたけど、そのジジイが、練習していた一人の女の子に、「まだ下半身デブだな」と言った。女の子は素直に「はい」と答えていたけど、それは自分でもわかってます、他のメンバーに遅れているのはそれが原因だとわかってるけど、こればかりはどうしようもないんです、言わないで、でも言ってくれるの嬉しい、という複雑な顔を見せていた。

アイドルの評価は蜘蛛の巣のように入り組んでいて、何が正解かわからなくなっているところはあるけれども、アイドルは華奢でないと天下は取れないだろう。いつだって天下を取るアイドルというのは、例外なく足が細い。グラビアアイドルとは違って。

↑こうやってパッと並んだとき、センターになる子はいちばん足が細い。

前田敦子だって、腐っても前田敦子、やはりパッと足が並んだとき、いちばん足が美しいのである。現代のナンバーワンアイドルの賀喜遥香も、乃木坂の中でいちばん足が美しい。やれハムスターだの出っ歯だの、頭がでかいだの、いろいろ言われてはいるが、足の美しさは乃木坂でいちばんだ。足が等身大の太さでボテッとしていると日常感を呼び起こされてしまい、神聖さが薄れてしまうところがある。

ロンブー淳が、女とデートするときは、庶民が足を踏み入れられない高級店に行って緊張させた後に、屋台の居酒屋に行くと女は落ちると言っていたが、 VTRを見ていたら、このことを思い出してしまった。緊張と緩和。彼女たちは秋元康に対して特別な緊張を見せているように見えた。秋元康に対して、やれ世間が噂するような、アイドルを食い物にしているとか、守銭奴、がめついデブ、枕営業のドン、それが根も葉もない噂だとしても、それはもうオーディションを受けに来たときからどうしても頭によぎるというか、意識していたことであり、逆に秋元康が何も言い寄ってこず、どこまでも紳士で丁寧で面倒見がよく、たまに厳しいことを言われたり、卒業生にはこれまでの青春のアルバムのような作詞をしてくれたり、そんな中で、秋元康に抱くとか抱かないといった考えがないことがわかると、それを考えてしまう自分の方が不潔に見え、その一種の反省から、何か行動を起こしてしまいたくなるといった顔を、ダンスの練習をしながらしていた。

もし秋本康がはじめから言い寄ってきたら、それはいくら秋元康ほどの大物を前にしても嫌ですと断ったに違いないが、断る予定だった相手というにも関わらず、何もしてこないとなると、どこか納得いかないところがあるような、肩透かしを食らうというか、たしかに彼女たちの望んだ結果になったわけだが、あまりにも手を出してこないから、少しだけ拍子抜けをしたような顔をしながら、ダンスの練習をしていた。秋元康も練習を見守りながら、これについてわかっているようだったが、さすがにこれについての作詞はできないといった顔をしているように見えた。

彼女たちだって、そのへんの男に抱かれるくらいだったら、秋元康に抱かれたほうがいいと思っている節はあるようではあった。こんなに偉い人に、こんなに普通にしゃべっちゃいけないのに、お父さんよりお父さんみたいなところがある。高級ホテルでバスタオルを巻いて出てくるのが似合いそうだ。その姿は下品なのか上品なのかわからない。同い年の彼氏の部屋でセックスするより、ステージの高いセックスのような気がする。しかし一旦始まれば、すごい潤滑油が流れそう。ヘビーローション。帰りのタクシー代も、5万出してくれるだろう。秋元さんは結婚しているし、私が秋元さんと付き合ってしまったら、AKBグループは完全に崩壊してしまう。一面では収まりきらない。ゴシックは新聞紙からはみ出てしまうだろう。これまで築き上げたものがすべて崩れ去る。しかし秋元さんクラスだったら揉み消してしまえるんだろうか? 秋元さんがすべての社会的信用を失って、お金もなくなり、ただの人になってしまったら、それでも私は彼を愛せるだろうか? いつも応援のLINEをくれる弟の顔が浮かぶ、泣きながら都会に送り出してくれたお母さんの顔が浮かぶ、秋元康に見守られながらダンスの練習をしている彼女たちの顔から、そんなことを考えているように見えた。

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