今まで舐めていたけど実行してこなかったことがある。
窓を閉め切って仕事をするということだ。
スティーブンキングや村上春樹が、書くときは地下に行くとか、部屋を締め切るとか、閉鎖的な環境を用意することが大事だと言っていた。
閉鎖的な環境だと、それに呼応するように、自己の内面を見つめやすくなって、意識の底に向かっているようになるとのことで執筆が捗る旨を言っていた。
俺は、窓を開けて入ってくる風が好きで、これは採用する必要はないと思っていた。
だから知ってはいたものの、一度も試したことがなかった。
だが、あんまり暑いので窓を閉め切ってエアコンを入れて作業してみたところ、これが思いの外捗った。
ちょっとやそっとじゃない。ぜんぜん違かった。舐めていた。
俺は夏だろうが冬だろうが、窓を締めるということが全くなく、常にいつも開放的な環境にしていた。だから気づかなかったのだ。窓や戸を締め切ると、仕事のスイッチが入るということに。
こんなに作業が捗るのが久々で、嬉しくなって、5、6時間くらいずっと執筆していたのだが、あまりに仕事が捗るので、あえて窓を開けてみた。
すると、途端にやる気がしなくなった。
不思議だ。
何故だろう。
車の音、生ぬるく入ってくる風。むわっと広がる空気の感じ。これらは確かに開放的で気持ちのいいものなのだが、集中もまた逃げていってしまうような感じがするのである。
考え事をするときは、意識が広がっていっていいのかもしれないが、何か物事に取り組みたいといったときは、この開放感というものは邪魔になるようである。
30年以上生きてきて、初めて知った。
勘のいい人間は小学生のときにでもわかりそうなものだ。
窓を開けると開けないとで、こんなにも差が出るとは思わなかった。
窓や戸を閉めきったところで、そんなに変わりっこない、と思うかもしれないが、試してみると全然違うことに気づく。
逆に、閉め切ると、考え事はしづらくなる。思考や身体が縮んでしまう感じがして、なんとも窮屈だ。
書くときは閉める。考えたり、気分転換したいときは開ける。これは絶対的な真理なようだ。
そういえば、公園で執筆しようとして、思いの外捗らないことにびっくりしたことがあった。その点、カフェだと捗る。
こんなこと、言われなきゃ気づかない時点で終わってるなと思う。