出会い系「90人と出会って20人ほどやった体験談」

出会い系の女の顔にちんこをペチペチした

2020-12-06

出会い系というのは恐ろしいほど自分の階級が反映される場所である。

自分以上の女はどうしたって落とせないし、自分以下の女だったらどうしたって落ちる。

男として、女として、自分の価値を計りたくなったら出会い系をやるといい。体重計のようにちゃんとあなたの評価を数値化してくれる。

しかし、詐欺写真ということもある。今回はこれにやられてしまった(今回もというべきか)。この女性は写真ではとても可愛かったのだが、会ってみたらひどいブスでデブだった。

性格はもっとブスだった。コンビニで待ち合わせをしたのだが、「ついたら教えてください。そしたら私行きます」とメッセージが送られてきた。

彼女の家の近くのコンビニにまで小生が迎えにいっているのに、小生がコンビニの前に立っているのを確認できたら、自分も行くといっているのだ。こんな卑怯なことはない。小生が怪しい人物でないか確認でき次第、デートを遂行するというのだ。

無論、一考の余地もなく帰っていいところなのだが、このときの小生はまだ出会い系2段だったので(今は8段)、機知が働かなかった。

こういうことをする女は決まってブスだろうと思って待っていたら、案の定ブスだった。

とんでもないほど太っていた。小さいのに横に広がっていた。水滴を上から垂らしたように、肉がピシャっと広がっているような、そば粉と間違えられて机に叩きつけられて伸びたようだった。

20歳でこれか。たった20年でよくここまで太れるもんだなと思った。さらに10年以上食い続けている小生の方が痩せているという生物の妙があった。

声が小さくて、非常に貞淑風で大人しかった。常に甘ったるい声を出した。それがどうも演技調というか、不自然というか、何か目指している漫画のキャラ(けいおんの紬?)みたいなものがあって、それになりきろうとしているように思えた。部屋で前もって作りあげた人格を試運転しているように思えた。

優しさというより表現に見えた。そのせいか、いらない声をかけられることが多かった。

運転をして5分も立たないのに、運転大丈夫ですか? すいません、私が運転できたら代わってあげられるのですが、といわれた。

何度も、何度も、私が運転できなくてごめんなさい。つらくないですか? 休憩を挟みましょうか? 私にできることはありますか? と甘ったるい作ったような声でいわれるでイライラしてきてしまった。

小生はたぶん日本でいちばん運転が下手な男なのだが(違反者講習に2回いってる)、何度も何度も、運転お上手ですね、運転できるなんてすごいですねと彼女はいった。

「私、運転免許とれなかったんですよ」

「え? 運転免許とれなかったの?」

「はい、学科の方は頑張ればなんとかなりそうだったんですけど、実技の方が、ちょっと……仮免が受からなくて」

仮免が受かってないんだったら、学科の方も頑張るところまで進んでねーじゃねーか。

「まぁ、運転免許は取れて当然みたいになってるけど、思ってるより難しいよね。みんな当たり前のようにとれるっていうバイアスがかかってるから当たり前のようにとれちゃうけど、もしこれが取得度20%っていわれてたら、本当に20%しかとれないと思う。正直俺もそれくらい難しいと思った」

と、慰めてるのか何なのか、わけのわからないことをいってしまった。

「わたし、今、旅館の中居さんになるための専門学校に通ってるんですけど、そこが山の奥地にあって車じゃないといけなくて、だから母に送ってもらってるんです。母も仕事してるんですけど、母の職場は学校の正反対のすごい遠いところにあって……私を送り届けた後、山を降りて遠い職場まで向かっていくんです。それを見てて、毎朝、胃が痛むんです。車の免許があったらなって……」

「旅館の専門学校? 中居さんって、普通に住み込みで働いて修行するようなイメージがあるけど」

「そうですね、それが一般的ではあるんですけど、観光学について資格や知識があった方が就職に有利なんですよ。私も、そういうのに興味があって」

「なるほどね」

「でも、私病気がちで、半分も学校行けてないんですよ。高校もギリギリで卒業した感じで、専門だと出席日数が足りないと問答無用でアウトになるから、ちょっとヤバいんですよ。母がイライラしながら運転するのはそういう理由もあるんです。卒業できるかわからない学校に送り迎えしなきゃいけないという……」

「なるほど」

「しまるこさんは自営業だなんてすごいですね。大学も出て、資格も持ってて、自営業もできて、運転もできて、本当にすごいなぁ」

彼女はなんでもすごいという子だった。普通に学校にいって、普通の体型をして、普通に運転することを、ルビゴン川を越えるカエサルのように褒めたたえた。

「しまるこさんはお母さんとは仲がいいですか?」

「普通かな。基本的には感謝してるけど、一度も感謝の言葉を口にしたことはないね」

「大丈夫ですよ。しまるこさんの気持ちはぜったいにお母さんに伝わっていますよ。たとえ口に出さずとも、しまるこさんのお母さんを想う気持ちは、かならず伝わっています、大丈夫ですよ」

彼女は小さくクスっとしながらいった。彼女は目の前のおかれている自分の課題よりも、こうして聖母のような慈愛あふれるキャラを表現することに余念がないようだった。

彼女がこういったセリフを吐くたびに、会話が死ぬのを感じた。

小生はこういうことを平気で口走る人間が苦手である。日常会話でこういう温いことをいうと、会話が死ぬということになぜ気づかないのか? みんな優しさに欠けるから口にしないわけではない。会話が死ぬから口にしないだけである。

いま自然がもっとも求めている空気を、オーケストラのようにみんなで演奏するということをやってこなかったのだろう。彼女の発する言葉一つひとつが異音に聴こえた。

出会い系のデブは普通のデブと何か違うことが多い。

ヨーグルトをたくさん積もらせていったような、甘ったるいような、肉はついているのだが重力に拮抗できずに垂れ下がってしまっているような、わたあめみたいにつかんだらとれてしまいそうな、太っているけどひ弱そうなのである。

「まずは、学校に行かないと……」と彼女はいった。

彼女に病気などはない。病気のせいで学校に行けないのではない。学校に行きたくないから病気が生まれたのである。

あれも無理、これも無理、これもできない、あれもできない、ぜんぶできない、ぜんぶいや。そんな願望を叶えるために都合よく生まれたのが病気である。

「何の病気なの?」と聞いてみた。

「私、高校時代、髪がピンク色だったんですけど、それでなんども注意されて、わけがわからなくなっちゃって、窓ガラス割っちゃったことがあるんですよ。精神的に不安定になるというか、そんな感じです」

ざっくりしない病名だ。

「運転、疲れてませんか? 私にできることはないでしょうか? 私にできることがあったらいってください」

……。

「しまるこさん、本当に大丈夫ですか? 私にできることはありませんか? どこか痛いとかそういった症状はないですか?」

30分か40分ぐらい運転しただけだった。おそらくこれはただの気づかいではない。この子にとって30分運転するということは地獄にも似た労苦なんだろう。あまりにも色んなことから逃げすぎてきて、30分運転するということすら、地獄にも似た労苦に映るようになってしまった。

むかし、体育の時間にバレーボールが頭にぶつかって、勝手に早退してレントゲンを撮りに行ってしまった女の子がいたが、そういうタイプに見えた。

面接で、すごくハキハキして、何でもハイハイいって、「私ここで一生頑張ります」とか「ここに骨を埋める気で働きます」といっておいて、初日で死んだような顔をして、次の日こなくなってしまう人間特有の空気があった。

「しまるこさん、私にできることはありませんか?」

間隔が狭くなっていった。2分置きにいわれるようになった。初めて会った子にイライラしている顔を見せたくないのだが、もう限界が訪れてしまった。

私にできること? 運転中に運転以外にできることって何があるんだ? と思っていたが、そういうことなのかなと思いはじめた。なんとなくこの子の方からラブホを誘っているように見えた。

案の定、ラブホに連れていってみると、ホッとしたような顔をしていた。

やっとここからが私の出番。私のターン。

べつにセックスしたかったわけではない。となりでずっと芝居がかったセリフを吐かれるのに嫌気がさしたからである。

セックスするかどうかは本気で迷った。小生はこの子と二度と会う気はなかったし、正直見ているだけでずっとイライラしっぱなしだった。

通りすがりのオナホール。人肌の温熱機能つきのオナホール。家でオナニーするぐらいのつもりでいた。

何をする前から何をしてもいいということがわかった。小生は自分で何の感情も持たない顔をしていることがわかった。きっと厚切りジェイソンより冷たい顔をしていただろう。

前戯も声かけもまったくしなかった。ただ女の顔にちんこをペチペチしてみた。自分でもなんでそうしているかわからなかった。刺身にタンポポをのせる工員と同じような顔をしながらペチペチしていたと思う。女はボーッとしたような顔をしていた。

屈辱ではないのか。この子も人間だ。固有の意思と精神をもって20年間生きてきた。今日初めて会った男にちんこをペチペチされている。愛や性欲からきているものではない。ただの暇つぶし、床にミニカーが転がっていたから、なんとなく走らせているときのそれである。そして男はそれを隠そうともしない。

彼女の決して高くない鼻を、下からちんこで押し上げて伸ばすようにしたら、豚みたいになった。その顔がよく似合っていた。

何の時間かわからなかった。どちらかがこれはおかしいと制止してもよかったはずだが、彼女はこれをセックスとして受け入れた。ラブホで行われるものはどんなものであれセックスなのだと、少なくとも世間知らずの彼女はそう受け取ったようだった。男に必要とされればそれでいい。小生のために役に立つことができて嬉しそうだった。

「今日はありがとうございました! しまるこさんはどうしてそんなにかっこよくて、面白くて、会話も上手で、運転も上手くて、すごく優しいのに、私なんかと会ってくれるんだろう? ってずっと不思議でした。本当にすごく幸せな時間でした! ありがとうございました!」

と、長文のLINEが送られてきた。

ちんこをペチペチされただけなのに、ありがとうございますか。この地球にはまだまだ謎が多すぎる。

彼女の顔を見ていて不思議だったことは、迷いがなかったことだ。ずっと弛緩していた。誰もが抱えている緊張感のようなものがなかった。

明日がくるという葛藤。出会い系は休日に行われることが多く、どんな女性も明日がくるという恐怖を克服できないまま男と会う。

彼女はどこかスッキリしたような顔をしていた。葛藤も、苦悩もない。婚姻届を渡したらひとつのためらいもなくサインしそうだった。家に帰ってからも、その結婚について何も考えないで寝てしまいそうだった。

自分で考えることを放棄した顔。自分の人生を投げ出した顔。彼女は自分の人生の面倒を自分で見きれないから、小生に丸投げしようとしていた。丸投げした後だから、顔面にちんこをペチペチされようがどうでもよかった。彼女はコンビニに売っているどんな商品よりも安く見えた。

小生が「帰るよ」というまで、ずっといびきをかいて寝ていた。ベッドの上で大の字になっている彼女の姿は緊張感がなかった。縛られていたボンブレスハムの糸がほどけてその正体をあらわにしたように、でんとしていた。

彼女は目を覚ましたとき、彼女のこれまでの人生をよくあらわした顔をした。

(病気で仕方ないから学校休まないと……)

苦悩や葛藤は、前進しようとする人間にしか訪れないのかもしれない。

能天気に日々が過ぎる。欲しいものを買う。見たいテレビを見る。たまに鏡に映る殺人鬼のような顔に愕然とする。廊下を歩く、ごはんを食べる。表層化されない苦悩がいつか顔をだす。恐ろしい魔的なものを秘めていた。彼女は気を抜いてふいと鏡を見たとき、鏡よりも冷たい自分の顔に愕然とすることがあるだろう。

瞬間的にパッと頭を白紙にすることができなさそうだった。どこかで頭をパッと白紙にしていかなければいけない。苦悩して、考えて、迷って、最後は頭を白紙にする。それがどうしてもできなさそうな女の子だった。

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