友達「今年ももうすぐ終わるけど、お前もほとんど人と話さない生活を2年半やってるんでしょ?」
しまるこ「そうだね」
友達「寂しくないの?」
しまるこ「そんなには」
友達「ちょっとは寂しいんだ」
しまるこ「たまに寂しくなるよ」
友達「じゃあ割と平気な感じ?」
しまるこ「まあまあ平気だよ。なんでそんなに俺の中の寂しさを明らかにしようとしてくるんだよ(笑)」
友達「(笑)」
しまるこ「まあ、お前が気にする気持ちもわかるけど」
友達「俺だったらきついもん」
しまるこ「といってもさ、世の中のほとんどの人が孤独感を抱えているわけで。毎日仕事でたくさんの人と会って、家に帰れば家族がいて、そうやって日に幾許も自分の時間がない人ですら、孤独を抱えていると思うけどね」
友達「まあね」
しまるこ「彼らより俺の方が孤独を抱えているかっていったら、どうだろうね」
友達「さすがにお前の方が抱えてるんじゃない? 違うの? だって一日誰とも話さないんでしょ?」
しまるこ「ドトールで『アイスコーヒーのSで』っていうよ」
友達「それをカウントするの?」
しまるこ「(笑)」
友達「マジでそれだけなの?」
しまるこ「そうだよ」
友達「本当に一日でそれだけ?」
しまるこ「うん」
友達「すげえなぁ。あ、でも週に一回のマッサージの仕事でおばあちゃん達と話すか」
しまるこ「うん」
友達「ずーっと話さないでいて、やっと訪れる話す機会がおばあちゃん達なんだ」
しまるこ「そう(笑)」
友達「よく狂わないでいられるね」
しまるこ「もしかしたら、気持ちの奥底で孤独がしっかり育まれていって、あるとき急に爆発するかもしれない」
友達「ありそうだね」
しまるこ「でも我慢でいうなら、みんな、我慢してるわけじゃない。性的な方面で。ずーっと彼女いないとか、ずーっと性体験がないとか、それもそれで凄まじい抑圧だよ。そんな抑圧は、やっぱりみんな抱えてるよ」
友達「そうだね」
しまるこ「本当にみんな、性犯罪犯さないでがんばってると思う」
友達「まあ」
しまるこ「お前だってさ、この前いってたじゃん。主婦が休んだり早退するからスケジュールが組めないって。スケジュール表作るのが死ぬほど大変だって。家に持ち帰って死ぬほどがんばって作っても反故にされるって。その上、空白は独身の自分が駆り出されるって」
友達「うん」
しまるこ「俺はそっちの方が発狂しそうになるよ」
友達「孤独感の話しからズレてるけどね」
しまるこ「寂しさもストレスも似たようなもんな気がするけど。俺は会社員時代のストレスよりこっちの寂しさの方がマシだね。寂しさですら、会社員時代の方が抱えてた。本音をいえないもどかしさ、会議中もくだらねーなーと思いながら別のこと考えてた。みんなと思いをひとつにできないでそこにいる方が、孤独を感じるね」
友達「でも、一応愚痴れる同僚とかもいるよ」
しまるこ「まあ。そうか。俺は人より孤独に強いのあるかもな。孤独が板についてきたかもしれん」
友達「孤独が板につくってなんだよ(笑)孤独って板につくもんなのかよ、寿司職人みたいになってるじゃん(笑)」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「しかし、この孤独感は日本全体に根付いてると思う。電車に乗ってるサラリーマン。家事をする主婦。Twitterでうるさいインフルエンサーもどき。リアルだろうがネットだろうが、目に映るすべての人の中に孤独を見つけるよ」
友達「まあね」
しまるこ「人と話して救われることもあれば、人と話すことでより孤独を感じることもある」
友達「ふーん」
しまるこ「あんまこういうのもなんだけど、竹内結子もそういうことなんじゃないかなぁと思うんだけど」
友達「寂しくて死んだってこと?」
しまるこ「わかんないけどね。自殺者は、孤独感からきていることは確かだと思うけど」
しまるこ「たくさんの人に囲まれて、いろんな物を持っているように見えても、やっぱり己の中に潜む孤独感は拭えない」
しまるこ「今年も終わりか」
友達「終わりだね」
しまるこ「今年は、やっと食事がひと段落ついた。最近は玄米とみそ汁だけで二ヶ月やれてる。苦もなくね。ずーっとやれそうなところまできた。もう後の人生はこれでなんとかなりそう。35歳でなんとかなった。それがこの2年半でいちばん嬉しいかな」
友達「孤独の戦いで得たものだね」
しまるこ「(笑)簡単だよ(笑)だって玄米とみそ汁食うだけだもん(笑)簡単なんだけど、簡単だと思えるところまでくるのが難しかった」
しまるこ「とりあえず、孤独とか寂しさとかよりも、自分のライフライン、生活環境を確立しないとね。それはやっぱりこの2年半を孤独で進めなければできないことだった。寂しくなったら、ジムや社会人サークルにでも行くよ。ぜったい行かないけど」