俺はこれまでデイサービスの理学療法士として3年働いてきた。
最近は高校を卒業してから理学療法士を目指す若者が増えてきた。理学療法士は既に飽和していて就職難と言われているが、2018年11月の現在において、とりあえず就職に困ることはないと思われる。
文系大学生の就活のように、100社、200社受けてやっと内定もらえたというバカみたいな話はないので安心してほしい。求人が出ている所に体当たりすれば2つに1つは受かるだろう。作業療法士や言語聴覚士だったら1つに1つは受かる。それが現場で働く理学療法士の体感だ。ただし、ホワイトに就職できるかどうかまでは保証できないが……。
就職先を、病院にするか老健施設にするかデイサービスにするか悩む時点でやる気のない生徒だろう。意識が高ければ迷わず病院に行く。
デイサービスや老健はなんとなく楽な感じがすると思って、新卒で就職する生徒がいる。50人中1人くらいだろうか。俺の代はそんなもんだった。新卒なのにそんな腹を括った生徒がいて、教師からも同級生からも鼻で笑われる。この記事はそういう人向けに書いている。
というわけで、本当にデイサービスで働いた方が楽なのかどうなのか? デイサービスで働いた理学療法士が紹介していきます……! 事細かに話すというよりは、全体の1日の流れを話す感じです。
7時半
早速、残念なお知らせだが、デイサービスの理学療法士の朝は早い。病院よりも早い。なぜかと言うと、利用者を迎えに行かなければならないからだ。
9時には利用者全員を集めて体操していなければならないので、8時前にはお迎えに出発しなければならない。自宅から直行させてもらえないので、予め施設に行って朝礼や掃除を終えてから迎えに行く。そんなこんなで7時半くらいには施設にいなければならない。
デイサービスによって、送迎をしなくてもよかったりするので、この辺りはよく確認しよう。送迎させられるところは絶対にダメだ! 朝1時間多く眠っていられるか、ここで決まる。朝の1時間は夜の3時間に匹敵するので、これは最重要事項である。
9時
送迎から帰ってきて、体操を終えて、9時を過ぎると施術が始まる。だいたい11時まで施術を行う。デイサービスの利用者は介護保険で施術される時間が決められていて、一回20分ぐらいになっている。通所で来所している人なので、病院の入院患者に比べて健康な人が多い。主に身体能力を向上させるプログラムや日々の生活の疲れをマッサージで癒やしてあげることになる。
11時
11時になると休憩をとる。なぜこんな時間に休憩をとるかと言うと、12時から、今いるお客さんを家に帰して、また新しいお客さんを迎えに行かなければならないからだ。
休憩中は事務所だったり、あるいは休憩室が用意されており、俺はそこでだいたい寝ている。あるいは車の中で寝ている。
みんなが一斉に休憩をとることはあまりない。スタッフが手薄にならないようにする。小売店の休憩と同じだ。昼飯を食べるのはお薦めできない。ここで昼飯を食べてしまうと12時からの運転中にひどく眠くなってしまうのだ。このせいで何度か事故を起こし損ねた経験がある。
12時
そして12時になり、今いるお客さんを家に帰してまた新しい人を連れてくる。帰ってくるのはだいたい1時半ぐらいだ。
1時半
帰ってきたら、その足で体操を行う。午前ももちろん体操がある。始めの体操、終わりの体操、午前午後、計4回ある。体操は20分ぐらい行う。立ってやらせると転倒の危険性もあるし、疲れてしまうし、立てない人も数人いるので、座ってできる簡単な運動を行う。
体操はとても不人気な時間で、やる側も利用者側も、不満たらたらな顔をして行われる。意味のない時間だと思いながらもただ形式的に行う。
そしてまた午後の施術を始める。
14時から午後の16時半まで行う。
一人20分で大体8人くらいやる。これだけやればかなり疲れる。疲れよりも「退屈」や「飽き」がつらい。みんな飽きた顔をして施術をする。欠伸は出るわ、壁を見つめたくなるわ、理学療法士はこの辺りの怠慢と常に戦う職業だということを覚えておいてほしい。
一番楽な人は、肉体は健康だけど頭がボケている人だ。基本的に「ありがとう」しか言わない。適当にやっても丁寧にやっても「ありがとう」しか言わない。肉体が健康だと誘導が楽だ。靴も自分で脱いでくれる。介助も少なくて済む。
逆に、頭がはっきりしていて体が不自由な人ほどつらいものはない。若くて頭のいい半身麻痺の人なんかは一番辛い。下手に手抜きしようとすると見抜かれてしまう。半身麻痺の人は靴を履かせたり、装具の取り外しが本当に面倒くさい。マッサージよりもマッサージをするためにプラットフォームまで連れて来たり、靴や装具を脱がしたりベッドに寝かせたりと、そういった方が面倒くさいのだ。
とにかく若くて頭のいい人の施術をするときは、かなり全力を込めて施術しないとクレームになってしまうので神経をつかう。
長くなったね。ドトールでこの記事を書いていたら、なんと、目の前の女子高生が寝てしまった! 女子高生の写真でも見て少し休憩してほしい。
16時半
そして16時半になると、また体操を行う。この体操は俺のような理学療法士がやることもあれば、ヘルパースタッフがやることもあったり様々だ。朝の行き帰り午後の行き帰りと1日4回やる。先ほど言った通り、この体操の時間が一番嫌だ。スタッフも嫌がるし利用者も嫌がる。それなのになぜやるかというと、そういうルーチンワークが出来上がっているからである。形式だ。
その形式を決めているのが、変な介護スタッフのおばさんで、創業時から在席しているので、飛び入りで入ってきた理学療法士よりも、よほど発言力を持つ。
デイサービスに就職する上で一番注意したいことは、理学療法士や看護師よりも、あるいは社長よりも、介護士の方が発言力があったりすることだ。
創業時からずっと務めているおばさんスタッフは、非常にすごい発言力を持ち、介護業界や資格や施術などを全く精通していないくせに何でも口を出してくる。なんと、体操プログラムまでも勝手に決めてしまったりする。運動学なんてなんのその、おばさん特有の直感で決めてしまう。
また女社会なので、どんなに男性ホルモンが濃い男が入社したとしても、オカマみたいな立ち回りを余儀なくさせられる。そうしないと生きていけないのだ。おしっこは座ってしなければならない。立ちションベンをして床を汚したら、雑巾でフキフキさせられる。入社したての頃は運動バカの胸筋盛り上がりのFF10のティーダみたいなキャラをしていた男が、2ヶ月経てば、ものの見事にユウナになってしまっている……! デイサービスで働く理学療法士は皆、召喚士タイプに転職させられると思った方がいい。
理学のりの字も知らないおばさんの言いつけを守って、おばさんの作った体操プログラムをやらなければならない。「こんな体操はどうでしょうか」と提案しても却下される。「危険そうだから」という理由で却下される。骨盤を前後に動かすだけの体操でも却下させる。おばさんは何事においても保守的で、いつも肉体的に怯えている。目の前の全てが危険に思える生き物なのだ。自分が1キロまともに歩けないからって、みんなもそうだと思っている。
体操に関してはうちのデイサービスが奇特なだけで、ほとんどのデイサービスは理学療法士に全権が委ねられるだろう。しかし、介護士の発言力が理学療法士より上回るという件は、どこのデイサービスにおいても同じだと思われる。機能訓練型デイサービスだろうが、デイケアだとしても。
体操が終わった後は、今いるこのお客さんを家に戻す。
18時
そしてまた帰ってくる頃に18時ぐらいになっている。
帰ってからは、機能訓練計画書というわけのわからないものを作成して、日報を書いたり、送迎表を書かなければならない。
送迎表の恐ろしいことは、何時何分について何時何分にこの人を連れてきたということを細かくて刻まなければならない。
こんなのはヘルパーや事務員がやればいいのに、理学療法士がやらされたりする。なぜ理学療法士がやらされるかと言うと。腹いせだろう。治療についてベラベラと偉そうに語る理学療法士がムカつくから、こういう雑務を押し付けようとするのだ。
デイサービスにおいて、理学療法士は理学療法士だけの仕事をやっていればいいというものではない。ヘルパーがやってる仕事も同時にこなさなければならない。それでいて、ヘルパーはヘルパーの仕事だけをやっていればいいことになっている。
19時
そして1日の全てが終わるのが19時ぐらいで、戸締りをして帰ることになる。
病院だと9時に出勤して5時に帰るところが結構あるらしい。デイサービスの方が送迎がある分、帰るのが遅くなってしまう。デイサービスは医者や看護師にグチグチ言われない分、組織的なストレスが減るかもしれないが、時間的拘束は長い。ここらは送迎があるなしで変わってくる。
ただし、病院に就職すると勉強会や症例検討会ばかりだし、周りは意識高い系が多いので、意識が低いだけで舐められて大変な思いをするので、病院はおすすめしない。
従って、就職をするなら送迎のないデイサービスか、有料老人ホー厶や老健施設がいいと思われる。
有料老人ホームは施設自体が綺麗で、金持ちのおじいちゃんおばあちゃんばかりだし、スタッフも品行方正で、福利厚生もしっかりしていて、給料も高いので1番お勧めだ。もし俺が新卒なら有料老人ホームに行く。