恋愛

「にゃおおおおおん! おんおんおんおん!🐈 ハッハッハッハッハッハッ……! ……ワン?🐶」

音楽────か。

音楽で思い出したのだが、むかし、泣かれてしまったことがある。

むかし、女と二人きりで部屋で過ごしていて、やることもなく、話すこともなく、手持ち無沙汰になって、ずっとぼんやりしていた。俺は何を思ったか、とつぜん身をひるがえして、素早くダッと女の膝もとに飛び込んで、「にゃおおおおおん! おんおんおんおん! ハッハッハッハッハッハッ……!」と顔をうずめて、その位置から女の顔を見上げるようにして、「ワン!」と言ったら、ポツン、ポツンと、小さな雨の降り出しのようなものが頬につたってきた。

初めはなんで泣いているのかわからなかった。猫なのか犬なのかどっちだよっていうツッコミを期待してやった部分もあった。

「ニャン?」と俺は言ってみた。

よく覚えていないが、部屋にやってくる前、二人で図書館で調べ物をしていたのを覚えている。図書館のエレベーターの中で、なぜかお菓子や発酵食品の手作りについての話題となり、女が、「味噌を作るのとクッキーを作るのなら、クッキーの方が可愛い感じがするじゃん?」と至極当たり前のことを話して、俺は「そうかな? 若い子なら、味噌を作っても可愛い感じがする」と返したら、空気がピリついたことは覚えている。

その子は25歳で、若い女の子の部類に入ると思ったけど、そのとき俺が頭の中で描いていた映像は、たしかに、女子高生なるものがクッキーを焼くテンションで味噌を作っているというものだった。イメージしながら喋ると、そのイメージがそのまま相手に伝わってしまうことがある。

こうした、ピリついた雰囲気の後だったから。

ギャップっていうのかな、ちょっと理屈っぽいきらいのある人間は、たまにこうした動物みたいな部分をだしていくと、感動して泣かれちまうこともあるんだぜ? っつう話しだ。

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