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10年ぶりに、55歳の生活保護の安田さんから電話がかかってきて、会いたいと言われた。【前半】

安田「………………」

しまるこ「あのー、どちら様でしょうか?」

安田「………………」

しまるこ「あのー、すいません、どちら様ですか?」

安田「………………」

しまるこ「………………」

安田「安田です、あの、ヘルパーの職業訓練の……」

しまるこ「あー、安田さんですか! あの安田さんか! あー! 覚えてますよ! お久しぶりですね!」

安田「………………」

しまるこ「あはは! 本当にお久しぶりですね! 10年ぶりくらいですかね?」

安田「そうだと思います」

しまるこ「いやー、本当にお久しぶりですね。今日はどうされましたか?」

安田「………………」

しまるこ「………………」

安田「どうってことはないんですが」

しまるこ「はい」

安田「しまるこさんは、あれからどうされました?」

しまるこ「僕はですねー、まぁ理学療法士になって、まぁ色々あって今は自営業でやってる感じですね。売上も少なくて、日々生きるのが精一杯ですが(笑)」

小生は簡単にだが、自分の10年間の来歴を話した。

安田「僕は相変わらず生保でして、……まぁ、落ちこぼれましたよ。もともと落ちこぼれてましたが。今、精神科に通ってます」

しまるこ「そうでしたか」

安田「………………」

しまるこ「………………」

安田「しまるこさん、会えたりできます?」

しまるこ「はい。またお話できたらいいですね。予定があえば、池上さんと三人で飲みに行けたら楽しそうですね」

安田「池上さんとはこの前会いましたよ」

しまるこ「そうですか、池上さんは元気な様子でしたか?」

安田「はい、元気そうでしたよ」

しまるこ「そうですか」

安田「…………………」

しまるこ「…………………」

安田「…………………」

しまるこ「…………………」

安田「今日とか、会えたりできます?」

しまるこ「きょ、今日ですか!? 今日はちょっと急ですねー(笑)今日はこれからちょっと友人と約束があるものですから、また予定が合えばお願いします」

今日は日曜日だった。時刻は午前11時。小生が働いていると思ったから、この曜日、この時間に電話をかけてきたのだろう。

安田「いつが暇とかあります?」

しまるこ「そうですねー、安田さんはまだあの地域に住んでらっしゃいますか?」

安田「はい。相変わらず、あの生保用のアパートに住んでます」

しまるこ「俺はー、あれから引越しまして、少し遠いところにいますので、今はなかなか予定が組めませんね。実家にもなかなか帰れてなくて」

嘘だった。月に2回は帰っている。

安田「そうですか。今度こちらに戻る時は連絡をもらってもいいですか?」

しまるこ「わかりました! そのときは都合が合えばよろしくお願いします」

安田「…………………」

しまるこ「…………………」

安田「…………………」

しまるこ「…………………」

なかなか電話が切れなかった。

しまるこ「だいぶ、その、お元気がないようですが、お辛い状況にある感じ……ですか?」

安田「そうですね、ちょっと病んでいるというか、あーでも、大丈夫ですよ。さいきんは薬のおかげでずいぶん回復してきましたから」

しまるこ「そうですか」

安田「しまるこさん、本当に今度ぜひお会いしたいので、よろしくお願いします」

しまるこ「はい、よろしくお願いします!」

小生はこのあと、安田さんと会うかどうかしばらく考えていた。

10年ぶりの人間に連絡することは、とても勇気がいることだ。今日たまたま小生のことを思い出し、電話をしてきたわけではないはずだ。何度も何度も、5年か、半年か、数ヶ月か、小生のことを思い出して、とうとう今日、実際の行動に出た。それはとても勇気がいることだ。

しかし10年ぶりに電話をかけて、その第一声が無言とは。すごいことだ。尋常じゃないくらい小生と会いたがっていた。いったいなぜそんなに小生と会いたいのか。電話の最中もほとんど無言だった。小生も無言は多く、会話のリードを相手に任せることが多いが、その小生が会話をリードするとは恐ろしい事態だ。

死のうとしているのか。最後に誰でもいいから話しをしたかったのか。小生はべつに安田さんとそこまで仲良かったわけではない。

小生は、埼玉の印刷工場でパワハラがきつくて辞めて地元に戻ってきて、ハローワークの給付金をできるだけ長くもらうために、ヘルパー2級の職業訓練講座を受講した。安田さんはヘルパー講座で知り合った仲である。

その頃の安田さんは45歳だった。今は、55歳ということになる。50代というのはいちばん自殺が多い年代だという。人生の精算期であり、自分の人生は失敗作だったと見切りをつけ、もうやり直しがきかないとわかると、死んでしまうことがあるらしい。

背が小さくて太っていて、酒ばかり飲んでいた。いつも酒臭くて、顔を赤らめていた。生活保護であまり贅沢はできないため、スーパーで発泡酒をまとめ買いして、いつもちびちび飲んでいた。つまみは買わず、ご飯もほとんど食べず、酒を主食にしていた。

ヘルパー教室は20人くらいの集いで、小生が24歳でいちばん若くて、その次に池上さんが29歳と若く、30代が数人いて、あとはほとんどが40代、50代ばかりで、60代の人もいた。男は小生と池上さんと安田さんの3人だけで、それ以外は全員女性だった。

教室の始めての日、自己紹介タイムがあって、安田さんは一人ひとりに、「私は恥の多い生涯を送ってきました」といってまわっていた。「太宰治みたいですね」と小生が返したら、「気づいてくれましたか! 私はいつもいろんなところでこのセリフを言っているのですが、これまで誰ひとり気付いてくれた人はいませんでした! 初めてです。本当に嬉しい。いやぁ嬉しいなぁ。まさかこの教室で出会えるとは」といい、それから親しくなっていった。

確かに、自分しか知らなかった小説の一文を誰かと共有できたとき、このような感動が起こるものだが、これをその方程式に当てはめてはならない。これほど有名な小説の一文はないからだ。おそろしいことは、この教室において、小生と安田さん以外に、このセリフを知っている人がいなかったことだ。

先ほどの電話で名前の挙がった池上さんという人も、このヘルパー講座で知り合った人である。小生と安田さんと池上さんの3人で、よく一緒に行動していた。一緒に昼食を取り、一緒にタバコを吸い、学校が終わると、安田さんの生保用マンションで、3人でしょっちゅうグダグダ話したりしていた。男が3人しかいなかったから、自然と連みやすかった。

池上さんは小生の5つ上で29歳だった。ドぎついピンクのズボンを履いたり、金髪のパーマ頭をしていた。小生はその外見を見るたびに、介護やる気ねーだろと思っていた。もともと水商売出身だったことや、口がうまいこともあって、また女性のストライクゾーンも広いこともあって、受講にきたおばさん達を口説いて回っていた。おばさん達はみんな人妻だったけど、池上さんにとって関係なかった。

みんなおばさんだったけど、中には30代前半のきれいなお姉さんもいて、池上さんはそのお姉さんと不倫関係になった。池上さんは、「こんなに男と女がひとつの箱に収められて、何も起こらない方がおかしい」と小生に教えてくれた。

池上さんは小生にもおこぼれをよこしてくれた。池上さんと不倫関係にあった33歳の女性がいて、もう一人32歳の人妻がいたのだが、それを小生によこしてくれた。その人は、子供はいないが、イタリア人の男と生活を送っていて、スタイルが良くて愛嬌の良い、魅力的な女性だった。

池上さんがその二人の女性と居酒屋で飲んでいたとき、「しまるこくんも来なよ」といって誘ってくれた。その32歳の女性は酔っ払っていたこともあり、小生の頭を何度も撫でて、かわいいかわいいと言ってくれた。それから小生も不倫が始まった。ハローワークが主催する職業訓練校のヘルパー教室で……! 二組の不倫が起こったのである……! この女性との不倫関係については、またいつか別の記事で話したいと思う。

当時、小生は24歳ということもあって、いちばんギラついている時期であり、とてもファッションにこだわっていた。ポールスミスのピンクの靴を履いたり、ライオン柄のシャツを着たり、とてもヘルパー受講者とは思えなかった。何をそんなにおばさんたちに対してギラつかなきゃいけないのかよくわからなかったが、おばさん達にいつも可愛い可愛いと言われながら過ごしていた。

授業が終わると、三人で安田さんの生保用マンションでだべって遊んだりしていた。安田さんは、発泡酒をちびちびやりながら、小生と池上さんのW不倫の話を聞いていた。

生保用のマンションというのは、昼間なのに薄暗く、退廃的で朽ち果てていて、殴ったら壊れそうなビルで、いつもカラスがカーカー鳴いていた。誰が見ても怪しいビルであり、小生はこういったビルとは一生無縁のまま人生が終わると思っていた。不気味で、誰かが住んでいる気配がなかったが、それでもやはりちゃんと人は住んでいて、住人は部屋にトイレがないため共同用トイレを使うのだが、小生は一度も住人とすれ違うことはなかった。それが静か過ぎて不気味だった。小生はあまり霊とかは詳しくないけれども、あのマンションはいつも霊の気配を感じた。

この人はいつもこのマンションで、この部屋で、一体何をして過ごしているんだろう? と思って、小生は安田さんの事を観察していたけれども、よくわからない過ごし方をしていた。

安田さんは、本当に小さい画面の割れたガラケーを持っていて、意図的に金槌で叩いたかのようにぐちゃぐちゃに割れた画面だったので、普通の用途すらかなわなそうなものだったけども、そのケータイでよくわからない変なサイトをずっと見ていた。エロサイトかなぁと思ったけど、そういうわけでもなく、ドコモのiモードみたいな、なんとなくリンクを踏んで、なんとなく映ったページを眺めているようで、ネットサーフィンなのかよくわかんないことをずっとやっていた。

外に出かける気力も、本を読む気力もなくなり、それでも何か時間つぶしたくなったとき、45歳というのは、こんなふうに時間を潰すのかぁと、小生はよくその姿を眺めていた。なぜネットなんだろう。やっぱりというべきか。人が発信したばかりの温かい情報。そこに人の体温を感じるのか。

電話で話したときの安田さんは別人のようになっていた。ほとんどコミュニケーションがまともに取れなくなっていた。

だから恐怖があった。別に会うのはいいのだが、殺されないか心配になった。実際に家に遊びに行ったりしている仲だから、10年前とはいえ、もしかしたらそこそこの仲かもしれない。しかし、2人で会った事はなく、いつも池上さんと3人で会っていて、池上さんと安田さんが話しているのを小生は聞いていることが多かった。小生は飾りのようなものだった。教室に男が3人しかいなかったから、そのため、たまたまつるんでいただけである。

もともとがもともとだ。あの飲んだくれのくたびれた外見が、10年を経て、一体どんな外見になってしまったのか。会うにしても、ちゃんと公共の場に出て来れるだけの体裁を保っているのか。さすがに小生も、あのマンションで2人きりで会うのは無理である。

言い方は悪いが、ここまで落ちぶれてしまった人と会う経験をしたことがない。ブログのネタにもなるかもしれない。人間研究の一環になるかもしれない。もちろん、10年ぶりに勇気を出して声をかけてきてくれた勇気に応えたいという気持ちもあった。

しかし、どうだろう。会ったとき変に明るくしたり、変に楽しく笑ってしまったり、希望が満ちているような態度を取ってしまったら、刺されないだろうか。

電話では小生は今自営業をやっていると言ったら、安田さんは「それはすごいですね。出世しましたねー」などと言っていた。何か勘違いをされている。10年ぶりだから、マナーとして、それなりに元気に対応したに過ぎなかったが、あまりにも温度差があるため、小生の言葉のすべてがトゲを宿すように感じられた。本当は、電話をかける側が元気に振る舞わなくてはいけないのだが。

もちろん、自営業といっても、ほとんど稼いでないことはいってあるが、理学療法士の資格も取ったこともあり、勝手に成功者だと思われている節がある。小生は二回り若いし、当時はイケイケのファッションをしていたし、不倫をしていたし、今もその延長線上のイメージで小生を見ていそうな気がする。一緒になって死んだように話さないと、それだけで一つの攻撃になっているところがある気がする。安田さんは酒が好きだから、会うとしたら居酒屋だろうか? 居酒屋で会ったら、フォークで目を刺されるイメージが連想された。

会うのであれば、どこで会えばいいのか。もちろん安田さんの生保マンションは危険だし、居酒屋や飲食店で会ったら、フォークの存在が気になってしまう。

肩や胸を刺されても急所を外せる自信があるが、目をいきなり刺されたらどうしようもないと思う。だから眼鏡をしていこうと思った。目を刺される以外だったらいくらでも対応できる自信がある。小生はいつもサンダルを履いてるけど、ちゃんとスニーカーを履いていこうと思った。

いったって、飲んだくれてポンコツになってる55歳だから、眼鏡と靴を履いて、それだけ準備をしていれば、大丈夫だと思われる。

ここまでリスクを想定して会ったって、何のメリットもないし、10年ぶりに電話かけてきてくれた友人に、このような考えを抱いてる時点で、本当は会う資格はないのだが、なかなかここまで考えてもどうしても会うかどうか結論が出せず、いつも電話している友人に相談することにした。

友達「ぜひ会ってきてよ」

しまるこ「会ってきてほしい?」

友達「うん。会ってよ」

しまるこ「まぁ、暇だからいいんだけど。普通にめんどくささはあるよね。働いてたらぜったい会わないと思う」

友達「働いているとか関係ないと思う。俺だったら会うと思うもん。ギリギリのところだけどね。普通の人は会うかどうかすら迷わないからね。だから仕事は関係ないと思う。お前も働いてたとしても行くと思うよ。好奇心がでちゃうよね、やっぱり」

しまるこ「好奇心だね」

友達「めんどくさくなったら1時間で切り上げればいいし、まぁそれでも1日潰れるけど。でも1日潰れるだけだからねぇ」

しまるこ「俺も誘われるとホイホイ行っちゃうような、ヤリマンみたいなところがあるからなぁ」

友達「普通はぜったいに会わないからね。悩みすらしないからね」

しまるこ「まぁ、そうだろうけどね」

友達「聞いてると、もう普通に会話ができてない感じじゃん」

しまるこ「そうなんだよ。ずーーっと無言だもん」

友達「きついね。だけど気になるわぁ。気になるから会ってきてほしいわぁ」

しまるこ「もう本当に絶望の際の際までいっちゃっててさ、もう10年とか、恥ずかしいとか、そんなこともどうでもよくなって、ただ人間に触れ合いたいってところまできてるのかなって。いったって、俺なんて、そんなに大して仲良くないからね。もう何度も何度もケータイのメモリー眺めて、電話して、断られ続けて、最後の最後の頼りが俺というところまできちゃってるとしたら。じっさいそうだと思うんだよ。俺のところまで順番が回ってくるって、そういうことだと思うんだよ」

友達「でも、その最後の人間が、もしかしたら救えるかもしれないね」

しまるこ「救えたらいいんだけど、でも救ったら救ったで、今度は俺に依存し始めるんじゃないかなって怖さがあるんだよね。この状況で俺だけが手を差し伸べたら、俺しか頼りにする人がいないわけでしょ? そしたら味をしめて、毎晩のように俺に電話かけてきちゃいそうな気がするというか」

友達「無言電話で?」

しまるこ「無言電話で」

友達「イタズラじゃねーかよ(笑)」

しまるこ「(笑)」

友達「なんで命の恩人にイタズラすんだよ(笑)」

しまるこ「救われたんなら無言直せよっていうね(笑)」

友達「そしたら無言電話やめてくださいっていえばいいじゃん。そしたら死んじゃうかもしれないか」

しまるこ「会うにしてもさ、オッケーを出すタイミングが難しいんだよ。2週間後に実家に帰るから、会うんだったらそのときに会えるんだけど、今オッケーをだしたら、会う予定の日まで毎日電話がかかってきそうな気がするんだよね」

友達「じゃあ前日に電話かければ?」

しまるこ「前日に電話かけたら、向こうだって予定とかあるかもしれないし」

友達「予定なんてないだろ(笑)まぁ精神科の通院とかあるか」

しまるこ「うーん」

友達「お前の気にしてるそれ、出会い系でやるやつだからね。完全に女にやるやつじゃんそれ。生保の人にするマナーじゃないんだって。会うだけでも優しすぎるほど優しいからね」

しまるこ「まあね」

友達「だいたい、毎月14万円ぐらい支給されてるんでしょ? 生保って。精神科の費用も無料だし、じゅうぶん国から優しさをもらってると思うけどなぁ俺は」

しまるこ「『しまるこさん、日本はいい国ですよ。弱者に本当に優しい国です』って、電話でいってた」

友達「(笑)自覚はあるんだ。でも友達までは支給してくれないもんなぁ」

しまるこ「いろいろ悩みや不安を抱えている人と、会ったり話したりしたことはあるけど、ここまで話せなくなるほどヤバくなってる人は見たことないわ。完全に未知の領域だわ」

友達「ね。会っても、ずっと無言だろうね。めちゃくちゃ疲れるだろうなぁ」

しまるこ「恥も外聞も捨てて、ただ人間の体温を欲しがってる。ただ一つ不安なのが、殺されたらやばいかなっていうのがあるね」

友達「ちょっと危険を感じちゃうよね」

しまるこ「ただこれは考えすぎなのかもしれないけど、そういう人から見たら、もしかしたら俺が成功者に見えるかもしれないんだよ」

友達「ん? 誰が?」

しまるこ「俺が」

友達「?」

しまるこ「……」

友達「誰が?」

しまるこ「俺が(笑)」

友達「なんでだよ(笑)」

しまるこ「いや、だってさ、見た目もシュッとしているし、自営業で、週に6日も休みがあって。まぁ安田さんは週に7日休みがあるんだけどさ。こうして出会い系やってて、二回りも若いし、安田さんから見たら、俺がイケてるように見えて、急に刺してきそうで怖いんだよね」

友達「襲ってこられても勝てる自信あるでしょ?」

しまるこ「あるけど、急に目を刺されたら無理じゃん」

友達「55歳の生保のおっさんでしょ? 刺してきても大丈夫そうだけどなぁ。まぁ、目はちょっと怖いか。伊達メガネはしてった方がいいかもね。どこで会うの? ファミレス? 居酒屋? パスタ頼まなきゃいいんじゃないの?」

しまるこ「俺が頼まなくても安田さんが頼むかもしれないじゃん」

友達「パスタやってない居酒屋にすれば?」

しまるこ「そうだねぇ」

友達「ドリアとかにすれば? 『安田さん、ここのミラノドリア絶対旨いから、ミラノドリアにしましょうよ!』っていえば?」

しまるこ「サイゼリアじゃねーか(笑)っていうか、ぜったい箸は渡されるもんなぁ。箸で刺されてきたら、けっきょく無理か」

友達「それだと飲食店ぜんぶ無理じゃん(笑)。でも飲食店以外に会う場所なんてないもんなぁ。あと靴は履いてったほうがいいと思う。お前いつもサンダルだし」

しまるこ「すごいね。同じこと考えてたわ。まぁ、こんな失礼なことを考えてる時点で、会う資格なんてないんだけど」

友達「会ってあげるだけで、めちゃくちゃ優しいと思うけどなぁ。ぜったい! 誰も会わないからね! ってかさぁ、宗教の勧誘とかじゃないの?」

しまるこ「そうかもね」

友達「でも宗教の勧誘だったら無言電話にならないか。もっと楽しそうに電話してくるはずだもんなぁ」

しまるこ「俺もそう考えた」

友達「まぁ、最悪やばかったら逃げればいいしね。その人の部屋には行かない方がいいよ」

しまるこ「安田さんが殺しにかかってくるか、そうでないかっていう人間の区別すら、そこまで親しくないからわかんないんだよ」

友達「でも安田さん、池上さんっていう人とも会ったんでしょ? 池上さんに聞けば全部わかることじゃん」

しまるこ「そうなんだよ。俺も池上さんにこれから電話しようと思ってるんだけど、池上さんと約束を取り付けた後に、3人で会いましょうって安田さんに言ったら、(僕に電話を返す前に池上さんに電話をして、池上さんと予定を取り付けてから僕と会う約束をしてきた。しまるこ君は僕と2人きりで会うのはイヤなんだ。池上さんがいないと、一緒に会ってくれないんだ)と思って、余計に落ち込んじゃいそうな気がしない?」

友達「だからそれは女にやるやつなんだって。女と会うときに心配するやつじゃんそれ。普通の人同士が心配するそれなんだって。生保のおっさんにやるやつじゃないんだって」

しまるこ「まあねぇ。なんとなく、俺と二人っきりで会いたい感じだったんだよね」

友達「10年ぶりにそんなよくわかんない人から電話かかってきたらそれぐらいの心配はするし、3人で会うことくらい許されるからね。まずは池上さんに電話しなよ。で、どんな様子だったか聞きなよ」

しまるこ「うん」

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