なんでも「ハイ、ハイ!」と返事をしてしまうから仕事ができなくなってしまう
どこの職場にも、なんでも、「ハイ! ハイ!」と返事する人間がいる。
わかってないのに、「ハイ!」と言う。
案の定、わかってないのでミスをする。怒られても、その間も「ハイ!」と返事をしてるだけで、全く話を聞いてないので、また同じミスをする。
この手の人の心境というのは、とにかく怖がりだ。怒られるのが怖いから、返事だけ済ましてはやくその場から切り抜けようとする。実は、話しかけられる前から、「ハイ!」と言おうとしている。
仕事の要点を抑えようとしない。要点さえ抑えてしまえば、それほどミスは起きない。最初によく話を聞いておいて、抑えるところだけ抑えてしまえばいい。我々が任される仕事のほとんどがこの程度のものだ。
命令する方も、普通に「お願いします」といって仕事を頼みたいだけなのだ。難しいことなんて求めてない。ただ安心して任せたいだけだ。本人も要点を抑えようと必死なのだが、度胸がないのでちゃんと話を聞けない。だから要点を掴めない。
10代や20代前半の俺は、まさしくそんな人間で、誰もしないミスを完全に制覇できた。ミスのスタンプラリーがあったら、枠をはみ出してしまうほどミスばかりしていた。そのくせ変な見栄があり、怒られることは嫌で、愛想よくなんでもハイハイいっていた。能力面で自信がないから、気持ちのいい発音やテンポでカバーしようとしていた。
名前を呼ばれるだけで、怒られるんじゃないかと、いつもビクビクしていた。自分でも本当にかっこ悪い男だったと思う。どんなにイケメンで背が高かったとしても、職場では、誰も俺と結婚してくれそうになかった。
いつもビクビクしてミスばかりして、怒られても返事だけはよくて、いい返事をするので分かったのかと思ったら同じミスをする男と誰が結婚したいんだろう? とよく思った。結婚したら、ガスの元栓を閉め忘れて火事を起こす、パチンコに夢中で炎天下の車中に子供を置き去りにして焼き殺す男だと思われていたことだろう。
ミスばかりしているのでいつも怒られていた。話しかけられるときは大体怒られる時だから、同僚や上司に話を振られても、例え普通の会話をしようと思って話しかけてきてくれたとしても、そこからミスの話に繋がっていくのではないかと恐怖してしまい、普通の会話すら怖くなってしまった。もう、どんな会話にせよ、一刻もはやく終わらせたかった。
怒られても、聞き返してしまうと話が長くなり、その分怒られる時間が増えるから、急いで返事して終わらせたかった。だからわかってないのに「ハイ!」を言いまくった。
あんまり、同じ「ハイ!」を繰り返すと、馬鹿っぽく見えると思ったし、本当にわかっているのか? と疑われそうだから、「あー、なるほど!」とか「わかりました!」「そうですね……」を付け加えてみたり、ただ神妙に頷いてみたり、「あ~~~そういうことだったのか! やっとわかりました!」というように、長年の疑問が解けた風に装ったこともある。なんで怒られているのかではなく、どんな風に「ハイ!」を言うかに心を砕いていた。
仕事ができる人が羨ましくて、よく人の仕事ぶりを観察していた。俺は既に十分に仕事ができない男の烙印を押されているにも関わらず、取り返したいという想いが残っていて、自分より仕事ができない人間を見つけると歓喜した。
仕事ができる人はゆっくりでいて、そつがない。テンポよくハイをいわない。例えミスして怒られても、ゆっくり押し黙って「それは~~すればいいということですか?」といった具合に、ゆっくり聞き返し、理解に努める。聞き返すことが多い。質問が多い。終始止まって考える。
上から命令され、ただ従う立場だとしても、しっかり聞き返す。自分の懐で、しっかり内容を掌握するまで聞き返す。従う立場でも、主導的に見えたりする。
仕事は、命令されたことをしっかりやれるかに尽きる。すごい逆転シュートや、大穴一発狙いなどはどうでもよくて、ミスしないことだけが大事だ。毎日同じことしかしないので、その役割を滞りなく守ればいい。頭脳や才能は必要ない。しっかりしている事が大事だ。受験でいえば、入試で高得点を取るよりも、普段の日常生活でしっかり提出物を納めて内申点を確保して、推薦入試を勝ち取る人間がいい。学級委員長タイプのような、しっかり者さんが一番仕事ができる。
俺のような人間でも、普段家で一人で過ごす時は、恐ろしく仕事ができる。自分の好きなことを好きな時間と場所でやる分には、おそろしく何でもできる。
例えば新しいキーボードを買おうとして、windowsだと使えるけどandroidタブレットだと使えない、しかしUSBのコネクタを変換されれば使えそうだ、と想像して先回りした買い物もできる。ダメだった場合、返品できるかどうかも考慮しておく。楽天にするかアマゾンにするかポイント5倍デーはいつだったか? 色々頭の中に情報が駆け巡り、最終的にいつも素晴らしい解を出す。そんなときの俺の状態が、仕事していいるときのみんなの状態なのだ。
こういったことは1人なら余裕だが、いざ仕事の場だとできなくなってしまう。職場だと自分が10分の1になってしまったような気分になる。
すぐにハイハイ言う人間は、反射的に返事してるだけなので、いつも心が上方へ浮ついている。結局は精神の問題で、心をいかに下流へ流すか。肚に留めるかということが肝心なのだ。
上昇しまった心を、静かに腹の底に押しとどめ、亀のようにじっくり相手に向き合わなければならない。自分が本当に何をするべきなのか、わかるまで、勇気を出して、繰り返し質問しなければならない。
10代や20代前半というのは、人間が未熟で、大人しすぎて、繊細で、周りのことが考えられない。そのくせ理想だけは高かったりするので、上手くコミュニケーションがとれない。コミュニケーションがとれないと、相手がここだけは、ここだけは押さえてほしいと願っているポイントすら捕まえることはできず、誰でもできる簡単な仕事さえミスをする。
理想だけは高いので、これ以上怒られたくない、バカにされたくない、と考え、その遅れを取り戻すかのように、ハイハイテンポよく返事してしまい。大事な事を聞き漏らす。
つまり心の問題なのだ。心が未熟だから、いつも焦ってばかりいるのだ。年をとると、人は落ち着いてくる。なんでも対応できるようになってくる。
若い十代の女の子が、スマホショップでスマホを契約しているところを見たことあるが、自分が月々支払う大事なローンの話ですら、焦ってハイハイいって聞き流しているのを見た。勇気を出して、流れを止められないんだろう。こういう子は本当に苦労する。
まぁ、これも早いか遅いかで、ヤンキーのように早熟なタイプは、仕事をし始める頃には間に合うが、遅い子は間に合わない。
しかし、年をとれば人間は必ず度胸がつく。
解決方法
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