出会い系「90人と出会って20人ほどやった体験談」

悟りを開くために出会い系の女とおもちゃのバットで斬り合いをした話

これはくだらない話だが、俺は目に見えないこの世界の真実をどうしても解読したいと思っていた。自分でもよくわかっていないが、森羅万象でもスピリチュアルでも何でもいい。言葉では説明できない何かを悟るために一生懸命追いかけてきた。

 

人と会話するときも文章を書くときも、自然の摂理を規則的に守ることを心がけた。特に運動はわかりやすい形で実体となって表出するので、特にこだわってきた。

 

ボクシングと剣道をやってきて、これらの格闘技は、正しい身体や心の扱い方をすれば、肌感覚として実感できるし、サンドバックの揺れ具合等で実証も可能だ。

 

現在はジムや道場に通わず、ただ一人でバットや木刀を素振りするくらいだ。

 

だが、一人でそんなことを続けていても、心の使い方というものが不明瞭だ。今打ったら当たるとか、相手の攻撃する気配を読むとか、そういった勘が養成できないのだ。しかし、その勘こそが、目に見えない真実で、俺が追いかけているものであり、そしてその勘は、武道だけじゃなくて勉強やスポーツ、芸術、コミュニケーション全てに通じるものだと思っている。

 

この勘を修行するためには、どうしても相手が必要だった。

 

でも誰もいなかった。男友達は平日休みで時間が合わなかったり、一生懸命頼みまくっても断られたので、とうとう出会い系に頼むことになってしまった。

 

その出会い系の女というのは25歳の営業職で、ややブスでデブで出っ歯だった。笑うと歯茎が丸見えだった。

 

一度ご飯に行ったきりで、簡単な自己紹介を交えて1時間ぐらい世間話をしただけの女だった。

 

今回のデートはテニスをすることになっていた。テニスが終わって汗だくになった後、俺は職場にその子を案内した。

 

俺の職場はデイサービスで、十分広い感じになっていて剣道の試合ができるぐらいの広さが確保されていた。

 

テニス終わって暇を持て余したので、「とりあえず職場に行かない? うちのデイサービスはいろんな面白い器具があって面白いよ!」とわけのわからないことを言って誘い出した。

 

デイサービスの器具で遊んでいると、俺は満を持して、次のようなことを言った。

「本当に狂ってると思うかもしれないけど、剣道やってくれないかなぁ? いや、剣道というか、もっと全然簡単なヤツなんだけど(笑)」

「いやね、ちょっと今、どうしても突き詰めたいテーマがあって、ちょうど相手が攻撃しようとしてくる心の流れというか、起点を察知して、それを心で抑え込む方法っていうか、そんな感じなんだけど。自然界の運動法則について俺はなんとなく理解して、毎晩バット振って掴めてきたんだけど、それは一人でも練習できるんだよね。でも、相手の心の隙間に入ったり、相手の心の流れに応じて、それに反応して自分の体を使うというのは、やっぱり相手がいないとできないんだよね。だから、そのぉ、俺に向かって斬りかかってきて欲しいだよね(笑)。大丈夫、竹刀は使わないよ。100円で売ってるおもちゃのバットだよ。これを使って、好きなように自分のタイミングで斬りかかってきて欲しいんだよね(笑)。狂ったことを言っていることはわかってる。言われた方も困っちゃうかもしれないけど、俺の方から一切手を出さないから……! 俺はただ防御に徹して、ゆかちゃんの斬りかかろうとする攻撃の流れを感じたいだけなんだ、だから、やってくんないかなぁ? 最近はそればかり考えていて夜も寝れなくて困ってるんだよね(笑)」

 

そういったら、相手は「やば(笑)」と言って吹き出した。

「マジですか?」「うわーそれはやばいです(笑)」と言ってヘラヘラ笑っていた。

 

けどすぐに「いいですよ! おもちゃのバットで叩くだけでいいんですよね?」と言ってくれた。

 

さすがに夜も寝れなくて困ってると言えば向こうも可哀想と思ってくれたのか。俺の方から攻撃しないと言ったから安心してくれたのか。とりあえずやってくれることになった。ホテルに誘うよりきついことだった。

 

女が実際におもちゃのバットを構えて、斬りかかってきた。

運動音痴の女の攻撃というの気の流れというものが存在しないらしい。馬鹿みたいにバンバン打ってくる。

 

「??」

 

俺を当てようとかそんなの考えず、ただ振り上げてただ殴るので、全く読みようがなかった。俺の修行が浅いからこういうことになっているのかもしれないが。

 

バシバシ腕を叩かれた。特に手の甲に当たると、おもちゃのバットといえども、尋常じゃなく痛い。音も結構いい音がする。「大丈夫ですか!?」と心配されてしまった。

 

以前、経験者同士でやったときは、恐ろしく簡単に相手の動きが読めて、ただ相手の攻撃してくる気持ちに合わせて、自分を空っぽにしていたら、脊髄反射で勝手に相手の攻撃を防げたのだが、今回はそうはいかなかった。身体が全く反応しない。これはおそらく俺を狙って攻撃してないからだと思う。当てようとか、俺の心の隙間を狙おうとか、そういうことを考えずに、ただ振って殴ってるので、読めなくなってしまうのだと思った。

 

運動音痴の友達とやったときもそうだった。がむしゃらに殴るというか、相手の中に意識をおかずに、自分の中だけで完結したリズムで殴られると、どう捌いていいかわからなくなってしまう。これも何度か経験すれば、防ぎようがわかってくるだろうが、なかなか機会に恵まれず放置している。

 

亀田興毅も、「素人のパンチは避けにくい」と言っていた。たしかに避けにくい。素人の女の攻撃はこんなに避けにくいのかとびっくりした。こんなに下手くそでバラバラの動きで、手打ちで重くてぎこちない動きなのに、どうしてこんなに避けづらいんだとびっくりした。攻撃しようとする気配が全く見えないのだ。

 

「修行がしたい」とか、女相手に自称剣豪のような物言いをして、カッコつけていたくせに、俺はポコポコ殴られた。

 

使っていた獲物はおもちゃ用のバットなのだが、これが痛いのだ。頭に当たったり、特に手に当たったりするとものすごく痛くて、俺は痛がった素ぶりを見せてしまい、「ごめんなさい」と謝られてしまった。

 

「ごめんなさい、あの、やっぱり私やりたくありません。私こんなことするのも、相手を叩くのも叩かれるのも本当に嫌なので終わりにさせてもらってもいいですか?」と言われてしまった。

 

確か25か26歳くらいの女の子だったと思うけど、そんな結婚適齢期で、働き盛りで、社会の生産の中心とも言える年齢の女性に、俺は一体何をやっているんだろうと思ってしまった。

 

俺も真っ赤になった手を腕組みさせて、ヘラヘラしながら「しょうがないね」と言った。

 

「大丈夫ですか? 夜ちゃんと寝れますか?」と気にかけてくれたけど、俺は「うん」とだけ答えて、ずっと遠い目をしていた。

 

イカれた時間だったが、持ち帰ったものはある。

素人女の攻撃は、心も身体もめちゃくちゃで避けずらいということ。

おもちゃのバットは当たるとすごい痛いということ。だ。

 

帰り道、車の中で、

女は「昼顔が見たい」と言っていた。

「昼顔すごいらしいんですよ、かなり描写が濃くて、見た人みんな面白いって言ってるんですよ」

 

昼顔が、かなりエッチな映画だということは俺もわかっていた。恋愛映画の中でも、更に恋愛的というか、奥に突き進んだというか、恋愛、プラトニック、愛、恋、男、女、結婚、不倫、そういったワードがゴロゴロ連想する。

 

恋愛の中でも恋愛の凄まじい映画を見たいと思っている女からすると、斬り合いの真似事をさせられるなんて、本当にわけがわからなかったに違いない。人生で一瞬でも、相手を斬りたいとか斬られたいとか思ったことがない人種だろう。

 

俺は昼顔なんて死ぬほど見たくないし、そんなものを見るぐらいだったら、吹雪の中で裸になって木刀を振る方がマシだと思っている。

 

改めて女と相性が悪い。女が好きなものを楽しめない。ディズニーも大嫌いだ。女と見ているものが違いすぎるなと思った。

 

「じゃあ今度昼顔見に行こうか」と言ったら、「え!? 本当ですか!!」と女はものすごく嬉しがった。「じゃあいつにしますか?」「来週、この日が上映なんですけど縲懊€怐vと、俺がさっき斬り合いを催促したのと同じやる気を見せた。

 

その日は無事送り届けて終わった。それから数日LINEのやりとりをしていたが、返事はこなくなった。

 

なぜこなくなったのか。やはり斬り合いがダメだったか。

 

斬り合いがダメだったら、どうして「昼顔」を見に行くことを嬉しがったのか。どうしてその日にLINEを無視せず、数日経ってから無視するようになったのか。

 

おそらく友達に「え!? おもちゃのバット!? 斬り合い!? やめときなよ! 絶対危ないよ、え!? 30歳!? やっぱ出会い系ってやっぱ変な人しかいないんだ!」とか言われたんだろう。

 

ほとんどの女はこんな風に周りにすぐ洗脳されてしまうので、全く軟弱極まりない。

 

ブスのくせに調子乗りやがって。ブスでデブなんだから、俺が剣振り回す変人だとしても、どっこいどっこいだろ。いや、ブスでデブよりも、剣振り回す方が断然マシだろ。剣振らないからデブなんだよ。ブスなんだよ。

 

昼顔見てねーで、剣振れよ。デブこそ剣振らなきゃしょうがねーだろ。

 

なんで俺がフラれなきゃならねーんだよ。なんで俺が負けるんだよ。

 

30歳の大の男が、剣振ってたらそんなにおかしいか!? ディズニー行くよりよっぽど素晴らしいだろうが。ディズニー、昼顔、セシルマクビー、から揚げ棒……! 消費ばっかしやがって……! 消費することしか楽しみをを見出せないことより、ずっと素晴らしいだろうが……!

 

自分の世界に耽溺して、自分の色を濃くしていく人間は嫌われてしまう。間違った方向はもちろん、良い方向だとしても嫌われてしまう。たとえ金を稼いでいたとしてもダメだ。人一倍エネルギーがあるというだけで嫌われてしまう恐れもある。

 

アレルギーを起こされるのだ。もう、そういうナルシシズムや意識高い系やスピリチュアルは胃もたれしてしまうのだ。特に世界の真実とか、そういうワードほど嫌厭されるものはない。

 

ましてや、何者でもない誰かが、そんな大それたことを隅っこでヒィヒィ言ってても、「なんだよこいつ、いいからそれを使って金を稼げよ」と思われるくらいで、そして、金を稼いだとしても、「うざったい精神。心に重りを感じる」とうざがられてしまう。

 

それくらい消費者として板についてきてしまって、奴隷、小市民的な精神が細胞に深く合成されてしまったのだ。私と同じく社会の犬でいて欲しい。等しい社会的価値観を持って一緒に鎖に繋がれたいと思っている。その方が安全な気がして落ち着くんだろう。

 

一緒に地の果てに堕ちていくのはもちろん嫌だけど、だったら昇り竜の方がいいけど、一番いいのはアリやカマキリのように癖のない生き物が好きなんだろう。

 

自分と同じ景色を見ていてほしいんだろう。

 

 

昼顔か。

俺は、女と一緒に楽しめる趣味が何一つなくて困ってしまう。

俺自身が女に寄り添うように合わせていく方がいいのか。

それともこんな俺を受け入れてくれる人を選んだ方がいいのか。

その両方か。

 

趣味は恋愛や結婚生活においてとても重要だという意見もあれば、それぞれが独立した好きな時間を過ごして、男女や人間の根本的な部分だけ繋がっていればいいという意見もあるが、どうだろう。

 

 

できれば俺に向かって斬りかかってくる女の子が一番理想なのだが。

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