ある理系の岡田という男がいた。
初めて岡田と会った時は、「○○学校卒業ですか? 僕もそこを卒業したんです、なんかあったら何でも相談してくださいね!」と、とても感じのいい穏やかな笑顔を浮かべて、岡田の方から話しかけてくれた。
岡田はハゲでデブで天パでメガネで冴えない男だったけど、愛想よく話しかけてきた男は岡田だけだった。
俺は昼休みになるとすぐ職場から消えたり、スタッフと話さなかったり、教えられたことを覚えなかったり、トイレにこもったまま1時間ぐらい出てこなくて大捜索をさせてしまったり、よろしくない態度を取り続けた結果、全員から嫌われてしまった。俺がいないとき、よく陰口を叩いているようだった。
ある日、用があって岡田に話しかけると、岡田の態度が以前と違った。会話を早く切り上げようとしたり、視線をそらしたり、どことなくオドオドしているのだ。
初めて会った時の愛想の良さがなくなってしまって、事務的に話すようになってしまった。みんなからの評価が悪い嫌われ者にどう対応していいのか分からないようで、オドオドしながら事務的に話すようになった。
みんなが嫌っているから嫌うのである。自分が嫌いだから嫌うわけではない。そこら辺が小物の特徴だ。
理系で小物の人間は、得てしてこういう態度を取る。あからさまに怒ったり、無視したり、冷たい態度も取れないので、「愛想が良かった状態を取り除く」という小さな変化しか起こせない(笑)。
理系男子はみんな、そういう変化しか起こせないので面白い。
ある時、学校の女教師が様子を見に来て、「岡田君は本当に純粋でまじめで可愛い。だけど草食系で女の子にグイグイいけないからもったいない。岡田君の魅力がみんなに早く伝わってほしい」と言って、岡田もまんざらでもない顔していた。
「自分、ちょっと女の子と話すのが苦手で……」
「え? 女の子は好きなの??」
「は……はぁ……まあ……(照)」
と見ているこっちが吐きそうになる糞な芝居を見せられた。こういうことをされると、服に童貞臭い匂いや、ぶりっ子臭や、CLANNADとかの臭いが染み付くので、帰って洗濯しないといけなくなる。
理系の男は、自分は優しすぎるがゆえ行動力が不足してイマイチ魅力を伝えられない、という自分を演出するのに長けている。
ただ人に合わせてハイハイ言っているだけで、周りに流されて生きているだけなのに、そこに初心な演出と勤勉な仕事ぶりを加えてやることで、目の肥えた人には分かるいい男を創作している。尖って生きられない弱さを悪利用している。
学校の女教師ようなクソババアはそんなことを言ってくれるけど、そんなババアですら、結局は強引な男に引っ張られていくのだ。
初心や純粋を売りにして、みんなに可愛がってもらおうとする男ほど気持ち悪いものはない。そういう奴に限って、他人に怒ることも冷たくすることもできない、振り撒いていた愛想を消し去るという小さな変化しか起こせない小物なのだ。俺はいつもその小ささにあきれてしまう。
女も俺と同じ気持ちだろう。まだ顔に「あなたとセックスしたいです」って書いてある男のがよっぽどマシだろう。
この手のタイプは、小さな頃から近所のおばさんに、「○○君はみんながサボってるのに一人だけお掃除してえらいわね~」なんて言ってもらうことがとにかく好きで、それが大人になっても抜けないのだ。
人に褒められたくてしょうがないのだ。みんな確かに人に褒められたいけど、みんなと質が違う。
昔、近所のおばさんに褒められたような褒められ方をされたくて仕方ないのだ。あの手応えを求めているのだ。だから初心で可愛い男の子を演出するのだ(笑)。
理系で初心で、ださい靴を履いてる男は大体こんな感じだ。