しまるこ「最近、『転生したらスライムだった件』ってアニメ観てるんだけどさぁ」
友達「なにそれ、そういう名前多くない? 面白さがタイトルで出オチしてんじゃん」
しまるこ「で、すごいかわいいキャラクターが一人いるんだけど、角生えてるんだよね」
友達「うん」
しまるこ「アニメが一期と二期を合わせて70話ぐらいあるんだけど、まぁ全部見てるんだけど、 ずっと、この子と付き合えるかどうか、考えてるんだよね」
友達「うん? うん」
しまるこ「LINEで画像送るから見てくれる?」
友達「うん」
しまるこ「どう?」
友達「普通に送りすぎだから。普通に一枚でいい」
友達「童貞ホイホイじゃん」
しまるこ「……」
友達「完全に童貞ホイホイじゃん」
しまるこ「(笑)」
友達「またこれなの? ずーーっとこれじゃん! ずーーーーーっとこればかりやってるじゃん。いっつも童貞ホイホイじゃん。10代の頃から何も変わってないじゃん」
しまるこ「そんなに好きなタイプなんてコロコロ変わらないだろ(笑)」
友達「いかにもお前らみたいな奴らの要望に応えるために用意されたキャラクターにしか見えないけど」
しまるこ「まぁアニメ見ないとわかんないだろうね。俺もアニメ見る前はそう思ってた」
しまるこ「ただ、やっぱり角生えてるからねー。そのへんのところを、どう考えていくかっていう……。お前だったら、この子と付き合う?」
友達「告られたら付き合うけど、自分からは告らないかな」
しまるこ「なんでそんな上からなんだよ(笑)シュナちゃんからお前に告るわけないじゃん(笑)」
友達「なんでツノ生えてんの?」
しまるこ「オーガ族っていう種族の女の子なんだけど。基本的にモンスターなんだよね」
しまるこ「このアニメは37歳の主人公が異世界でスライムに転生して、いろんな種族のモンスターたちを集めて種族間の境をなくした大王国を作ろうとしてんの。シュラテンペスト王国っていうんだけど」
しまるこ「シュナちゃんは趣味の絹織物の才能がずば抜けてて、シュナちゃんが織った反物に、鍛冶屋達が防具としての仕上げを行って、オークロード討伐戦に出かけるための防具も製作したり」
しまるこ「外交儀礼にも精通していて、各国に国賓待遇で招待されたときとか、テンペストの王としてリムル(主人公)が動く際には、シュナちゃんが同行して助ける役割も担ってる」
しまるこ「料理の腕も超一流で、各国の王侯貴族や魔王達への料理を提供する際は、シュナちゃんが担当していて、調理人達への指導も行ってる。弟子たちもメキメキとレベルを上げて、テンペストの料理のレベルの高さを世界に知らしめることになってるよ」
友達「戦闘能力はどんぐらいなの?」
しまるこ「普通に結構強いよ。何万匹というアンデッドモンスターを神聖魔法で一掃してたし、魔王の幹部のアダルマンって敵も、霊子聖砲(ホーリーカノン)で一撃で葬ってた」
友達「めっちゃ強いじゃん。セックスするときに、お前の身体バラバラになったりしないの?」
しまるこ「さぁ」
友達「そこ結構重要じゃない?」
友達「つーか、普通にキスのときに、角が刺さりそうだけど」
しまるこ「うーん」
友達「なんだ。あんまりちゃんと考えてないじゃん。どうせ付き合えないし、ただの与太話に過ぎないのはわかってるけど、それでも本気で考えてみようってことでしょ? 考えられるところまでは本気で考えて、その上で、本気でこの角の子と付き合えるかって、自分の中で答えを出したいってことでしょ? そういう話じゃないの?」
しまるこ「まぁ」
友達「俺だって、そういうこと考えることあるし、お前が本気なら付き合おうかと思ったけど、そのわりにはぜんぜん考えてないじゃん。もっと考えてるのかと思った」
しまるこ「セックスしたらバラバラになるとか、どうやってわかるんだよ(笑) わかりたくてもわかれねーんだよ(笑)」
友達「まぁなぁー」
しまるこ「でもチチだって、悟空とセックスできてるわけだし」
友達「チチは結構強くない? お前チチよりぜんぜん弱いじゃん」
しまるこ「そうだね」
友達「チチも、悟空が『冗談ばっかし』って言って、チチを軽く押したら、家の壁を突き破って外までふっとんでるシーンあったぜ? お前だったらたぶんあれで死ぬよ?」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「まぁ、シュナちゃんは、普通に椅子に座ったり、料理したり、皿を運んだりしているから。皿を割らずに運べているということは、大丈夫だと思うんだよね? そのへんの物理力はセーブできてると思う。それに、治癒魔法も使えるから、もし俺が怪我しても治してくれると思う」
友達「このキャラはなんていうの?」
しまるこ「シュナちゃん」
しまるこ「さっきからシュナちゃんって言ってんじゃん」
友達「鬼だから修羅(しゅら)とかかってんの?」
しまるこ「しらん」
友達「ちょっと比較対象がほしいね。他の女キャラはいないの?」
しまるこ「お前もたぶんシュナちゃんを選ぶと思うよ」
しまるこ「送ったよ」
友達「ぜんぶ一緒に見えるけど」
友達「俺は紫の子かな?」
しまるこ「シオン? お前はシオンがいいんだ?」
しまるこ「シオンもリムルが好きで、シュナちゃんと一緒によくリムルを取り合ってるよ」
友達「アニメってそういうことだからね。可愛いヒロインがいないと成り立たないからね。やっぱりどこかで疑似恋愛というか、どこまでも堅気に主人公を想うからね。絶対に浮気しないし。みんな、自分じゃ気づいてないかもしれないけど、心のなかでアニメキャラと恋愛してるんだと思う。だからお前のアニメの見方はそんなに間違ってないと思うけど」
しまるこ「そう?」
友達「でも、いつも童貞ホイホイなのが悲しいね。何も成長してないと思うと悲しくなるわ。10代の頃からずっとじゃん。黒髪や紫の子の方を好きって言ってくれれば、こっちも少しは安心できるんだけど」
しまるこ「でも同じだ」
友達「何が?」
しまるこ「俺もシオンには自分から告白しようとは思わないんだよなぁ。シオンから告白してきたら付き合うけど」
友達「で、何を迷ってんの? 角が生えてても付き合えるか? ってこと?」
しまるこ「そう」
友達「ちょっと角が長いかもしれないね。もう少し短ければよかったかもしれないけど」
友達「この子と付き合うのはいいとして、どっちなの? この子がお前の世界にくるの? それともお前がアニメの世界に入るの?」
しまるこ「(笑)」
友達「それくらいは考えてるでしょ?」
しまるこ「その二択を厳密に取り上げることなく、自然にシュナちゃんがこっちに来てくれているのを、想像してた」
友達「よかったわ。お前がペラペラになってんのかと思ったわ」
しまるこ「(笑)」
友達「じゃあ、えーと、次は、どうなるんだ? シュナがこっちにくるってことは、実際の、普通に街を歩いてるような女の子に角が生えてるってことを仮定するってことでしょ? それともアニメの女の子がそのままの映像でこちら側で生活するってこと? どっちなの?」
しまるこ「どっちって(笑)俺に決定権があるみたいな言い方するけど(笑)アニメの状態のままこちら側に送られてきたら、それこそやばいでしょ(笑)」
友達「いや、普通の人間に角生えてたら、それもけっこうやばいと思うけど。 例えば広瀬すずに角が生えてるってことでしょ? アニメだったらともかく、リアルの角って気持ち悪いんじゃない?」
しまるこ「うーん。ハリウッド映画みたいな感じかね?」
友達「ちゃんと、お前はシュナがリアルの人間に置き換わっているのをちゃんと脳内変換できてんの? なんか、聞いてると、アニメの映像のままこっちに送られてくるところで止まっているような気がするんだけど」
しまるこ「理系はこれだから困る(笑)俺の好きなように想像の余地を残させてくれたっていいじゃん(笑)まぁ、こんなに真剣に妄想に付き合ってくれてありがたいんだけど」
友達「ちゃんと考えたいなら付き合うけど、なんか、お前は自分の都合のいいように考えている気がするんだよね。ちゃんと角が生えているって現実を受け止めた上で、答えを出したいってことでしょ?」
しまるこ「うん」
友達「ペラペラの映像のままこちらに送られてきても、付き合いようがないじゃん。横からみたら線でしょ? お前のほうが困るんじゃないの? 普通にこっち側の物体とか、皿とか、持てないよ?」
友達「アニメだと肌が綺麗っていうか、綺麗すぎて違和感とかありそうだけど」
しまるこ「ブサイクキャラだとしても、シミひとつないからね。本当に、ただの肌色が歩いているっていうか」
友達「角が生えているせいで誰も付き合おうとしないだろうから、その分、チャンスがありそうって思ったの? お前の方で、他の男が越えられないその気持ちを乗り越えることができたら、オールオッケー、ザッツ・オーライみたいなこと?」
しまるこ「俺だって角が生えてないほうがいいけどね」
友達「でも角が生えてなかったら、競争率が高くなるでしょ? 初めから角がないただの美少女だったら、自分には無理だと思って、初めからお前は考えようとしなかったと思う。その気持を免罪符にして付き合おうとしてるんでしょ? お前がそういう気持ちでいるなら、角があったほうが安心できるんじゃない?」
しまるこ「そうかもね」
友達「子供はどうなるの? 生まれてくるとき、角がひっかからないもんかね?」
しまるこ「後から生えてくるんじゃない?」
友達「そうなの? オーガ族っていうぐらいだから、後から生えてくるほど、アイデンティティが希薄なものとは思えないけど」
しまるこ「角がひっかかって生まれてこれないんじゃ、オーガ族自体がそもそも成立しないじゃん。滅びちゃうじゃん」
友達「ああ。それはそうか」
しまるこ「このアニメ、主人公がスライムなんだけど、こうやってよく、膝枕したり、抱っこされたりして。スライムに性別はないから、お風呂も一緒に入ってんの。汚れもよく落ちるらしくて、スポンジ代わりにされて、それで女性キャラに身体擦られてんの」
友達「もともとは37歳の男なんでしょ? めちゃくちゃスケベだね。お前と同じこと考えてるわけだ。年も似たようなもんだし」
友達「お前もスライムになりたいってこと?」
しまるこ「わかんないけど(笑)」
友達「ところで、街は一緒に歩けるの?」
しまるこ「それは平気だよ。言い切れる」
友達「へー、すごいじゃん。恥ずかしくないんだ?」
しまるこ「たぶんシュナちゃんのほうが嫌がって外に出ようとしないだろうけど、俺の方はそれは我慢できる。何度も思考実験して、できるという確信を得た」
友達「そこを我慢できる度量があるから、付き合えてもいいってお前は言いたいんだろうけど、それじゃあまだ弱い気がする」
しまるこ「結構な人は、たぶん街を一緒に歩けないでしょ? お前だったら一緒に歩ける?」
友達「どうかなー。俺はシュナのことあんまりしらないし好きじゃないからあれだけど、普通にいいと思ったら、たぶん大丈夫……かなぁ?」
しまるこ「角生えてるんだよ!? 角生えてて、普通に角生えてるんだよっ!!? 普通に考えてよ! いいの!?」
友達「俺はね。その分、他のとこで補って余りあるぐらいの良さがあれば、ぜんぜんイケると思う。ぜんぜんってほとじゃないけど。たぶん、イケるかなぁ? 普通にファッションでやってんのかな? と思うんじゃない? 通りすがりの人は。ダサいと思うけど。まさかオーガ族が歩いていると思わないだろうし、コスプレだと思うんじゃない?」
しまるこ「そうなんだよ。だからね、周りの目は俺もそんなに気にならないんだけど」
友達「ほんとに? 俺はお前がちゃんとリアルな女の子に角が生えている映像をちゃんと脳内変換できてない気がする。ずっとお前の頭にあるのは、アニメのままのシュナのイメージのような気がする」
しまるこ「できてるって(笑)ただねー、問題はうちの親なんだよ。やっと結婚相手を連れてきたと思ったら、角生えてるんだよ? たぶんね、静かに怒ると思う。『帰りなさい』って、すごい冷たい一言をいって、いっさい聞く耳を持たないと思う。いや、黙ってその場を立ち去ると思う。たぶんコスプレだと思って信じてくれないと思うんだよ。馬鹿にされてると思っちゃうと思う。本当に冗談通じないからなぁ」
友達「マジで? そこでマザコンになんの? マザコンじゃん! そこでお母さんが出てきちゃうんだ。へー、そっちのほうががっかりだわ。シュナもがっかりだと思う。お母さんに反対されるから考え直すの? そしたらたぶんシュナの方が出ていくと思うよ」
しまるこ「でも、本当に角が生えてるってわかってくれたら、話は変わってくるかなぁ? 『角 病気』で検索して、そういうが病気あるのかな? ってすごい真剣に調べるかもしれない。でも、信じてくれないだろうなぁ」
友達「そういう病気があれば信じてもらえたかもしれないけどね」
友達「子供が学校でいじめられたり、そういう先のこともちゃんと考えてんの? マスコミとかも黙ってないんじゃない? 晒し者にされて、普通に静かな一生は送れないと思うよ? それはいいの?」
しまるこ「それは大丈夫だよ。我慢できる。シュナちゃんと子供はわからないけど、俺は我慢できる」
友達「じゃあ、障害は親か」
しまるこ「親だね」