タツ吉「しまっちゃん。荷物それだけ?」
しまるこ「うん」
ゆりあ「カバンは?」
しまるこ「ないよ」
じゅんこ「え? だって3泊4日のスキー旅行だよ?」
タツ吉「財布しか持ってきてないの?」
しまるこ「ケータイもあるよ」
ゆりあ「着替えは?」
しまるこ「ないよ」
まゆみ「パンツはどうするの?」
しまるこ「同じの履き続けるからいい」
まゆみ「ナイ!」
ゆりあ「泊まりの旅行だよ?」
しまるこ「裏返しにして履けばいい」
タツ吉「さすがしまっちゃん!」
ビック山「俺余分に持ってるから、俺の履く?」
ゆりあ「えー……それも汚くない?」
しまるこ「俺も人のパンツなんて履きたくないし」
まゆみ「しまるこ君がパンツ持ってかないなら、わたし旅行いかない!」
ゆりあ「まゆみ⋯⋯」
まゆみ「だって3泊だよ!? ずっと同じパンツなんてありえないじゃん!」
しまるこ「べつにお前が履くわけじゃねーだろ」
まゆみ「そういう人が近くにいるだけで嫌なの! わたし帰る!」
ビック山「別行動にすればよくね?」
じゅんこ「じゃあバスも別々に乗るの?」
ゆりあ「えー、こんなことで別行動とかやめようよ」
しまるこ「じゃあ向こうでパンツ洗って、そのあいだノーパンで過ごすから、それでいいだろ!」
マクド「ちんこスースーしねぇ?」
しまるこ「別にスースーしてもいい」
じゅんこ「しまるこ君は家にはパンツあるの?」
しまるこ「家にパンツなかったらおかしいだろ」
マクド「3泊の旅行でパンツもってかねーのもおかしいんだよ」
ゆりあ「いっかい家に帰って持ってくれば?」
しまるこ「やだよ面倒臭い」
まゆみ「マジナイ!」
しまるこ「あのなぁ、ノーパンだって折衷に折衷を重ねた折衷案なんだぜ? オレがノーパンになったところで、お前のまんこがスースーするわけじゃねーだろ」
ゆりあ「しまるこ君。まゆみ、今日の旅行すごく楽しみにしてたんだよ?」
しまるこ「だから……! オレが4日同じパンツ履き続けたら旅行が台無しになるっていう前提やめろよ!」
マクド「もーいいよ! コンビニでパンツ買おうぜ」
しまるこ「オレは買わない」
マクド「あーめんどくせぇなぁ! じゃあオレが買ってやるからテメェぜってぇ履けよ!」
ビック山「イヤッホーーーーーーーーー!!」
ゆりあ「わーすっごく綺麗!」
マクド「ヒュウゥゥーーーーーーーーーーーーー!!」
まゆみ「素敵ね」
じゅんこ「ねー写真撮ろう写真!」
タツ吉「たーーまやぁぁぁぁーーーーーー!!」
しまるこ「ははは! 3流大学のくせにスキー旅行しようってのがお笑い草だよな! 滑るのは受験だけで十分なのに!」
しまるこ「しかし、受験と違ってぜんぜんうまく滑れん」
しまるこ「座った方がうまく滑れる気がする」
しまるこ「うおおおおおおおおーーーーーーー! めちゃくちゃはえー!」
しまるこ「座るとめちゃくちゃはええーーーー!」
しまるこ「大学受験のように、すげー勢いで滑っていくぜ!」
タツ吉「ソリやん」
ビッグ山「ソリの方がスピード出るんやな」
じゅんこ「体重が前にのるからかな?」
しまるこ「い、イタ! イタタタタタ!!」
しまるこ「顔に雪が跳ね返って痛くて敵わん!」
ゆりあ「大丈夫ーーー?」
マクド「普通は下腿部に跳ね返るけど、しまるこは体育座りしてるから顔に跳ね返ってくるんだ」
じゅんこ「え〜〜! 痛そう」
しまるこ「うあああああああ!! マジで痛てぇ!」
しまるこ「だ、誰か! 止めてください! お願いします! 誰か僕を止めてください!」
しまるこ「かき氷! かき氷作りますから!」
ビッグ山「それ地面の雪かき集めるだけじゃね?」
しまるこ「も、もうたまらん!」
しまるこ「ふい〜。人生過去最大の難から逃れられた」
しまるこ「たったピョンと跳ねただけで、過去最大級の難から逃れられたことに感動している」
しまるこ「雪。大地。重力。自分の足で地球を歩けることの素晴らしさ。やっぱり地球は自分の足で歩いてナンボだね」
しまるこ「スノーボードは欠陥スポーツ。文部科学省に廃止のお手紙を送ろう」
しまるこ「あ! ソ、ソリが! 手綱から解き放たれたホワイトウルフのように走り出していく!」
タツ吉「あのバカ! 足とソリを固定しとかなかったんだ!」
マクド「ソリじゃなくてボードな」
ビッグ山「マジでありえん行為なんだが。他の客にめちゃくちゃ迷惑」
マクド「下手したら怪我人でるよ」
ゆりあ「ねぇ、どうやったら止まるのアレ?」
じゅんこ「傾斜がなくなりさえすれば止まるんじゃない?」
ゆりあ「ずっと傾斜だよ」
タツ吉「あれより速く滑るしかないんじゃね?」
ゆりあ「ねぇあれレンタル品だよね? なくしたらヤバくない?」
ビック山「とにかく、みんなで協力してあのソリを止めよう」
まゆみ「……」
※
タツ吉「なんでソリ固定しとかなかったんだよ!」
しまるこ「ソリなだけに反りが合わなかった」
しまるこ「ジグザグじゃなく真っ直ぐ進んでいくね。飼い主の性格に似たのかな」
しまるこ「それより大変なことが起きた」
しまるこ「姿勢を低くして運転し過ぎた結果、雪がケツまで浸水してきちまったんだわ」
しまるこ「早い話、パンツが濡れちまった」
しまるこ「思っていたより早く、パンツとのお別れ時期がやってきてしまったかもしれない」
タツ吉「だからいったじゃん。3泊4日の旅行を一つのパンツで乗り切るなんて無理だって」
しまるこ「そうじゃなくて! そうじゃないんだよ! パンツ濡れなかったら達成できたから!」
しまるこ「そこだけは勘違いしないでほしい! 普通の場合はやれるから!」
ビッグ山「何の弁解だよ」
じゅんこ「どうするの? いや、どうしたいの?」
しまるこ「3泊4日の旅行で同じパンツを履き続けられなかったとみなされるのだけは我慢ならないっていうか」
ゆりあ「だからどうしたいの?」
しまるこ「パンツが濡れて力が出ないっていうか」
マクド「アンパンマンみたいにいうな」
ゆりあ「コンビニのパンツ、マクドに買ってもらったんでしょ? それを履きに戻る?」
しまるこ「本来だったら同じパンツで過ごせるんだけど。くれぐれもそこは覚えておいてほしいっていうか」
タツ吉「下山する?」
しまるこ「こういう場合も下山っていうの?」
ビッグ山「どうしたいんだよ。下りたいのか下りたくないのか」
しまるこ「うーん」
マクド「しかし戻るにしても、ソリがないと戻るにも戻れんだろ」
※
ザーザーザーーー! ズザーーーーーーー!!
滑りがうまい客「これキミ達のボード?」
ゆりあ「あ、はいそうです」
じゅんこ「すみません……」
滑りがうまい客「ハイ」
しまるこ「ソリーーーーーーーー!」
しまるこ「会いたかったよーーーーーーーーーー!」
しまるこ「もう離したりしないんだからっ!!」
しまるこ「お腹空いた? 待ってて。今、お乳をあげるから」
しまるこ「ンンーーーーーーーーーーーーーーー!!」
しまるこ「すごい吸い付き! とってもお腹が空いてたのねーーーーーーー!!」
滑りの上手い客「あんた達大学生だろ」
ゆりあ「はい」
滑りの上手い客「滑っている人に当たったらどうなるかわからないの? ただでさえ危険なスポーツなんだよ? 」
じゅんこ「すいません」
滑りの上手い客「とても高等教育を受けているとは思えないね。大学で何を勉強してるの? 中高生でもわかりそうなもんだけどねぇ」
じゅんこ「すいません」
ゆりあ「すみません」
滑りの上手い客「だいたいねぇ、コースにいる最中にバインディングを外すなんてありえないから」
しまるこ「ちょっと静かにして!!!! 今お乳あげてるんだから!!!!」
しまるこ「今! 授乳のお時間なの!!!!!」
しまるこ「ンンーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
しまるこ「ローラーなしでこの吸い付きとは!」
しまるこ「道路で使うスケボーのようにローラーがついていたら、もっとすごいことになりそう!!!!!」
しまるこ「タッちゃん」
タツ吉「ん?」
しまるこ「不思議とパンツが乾いてきた」
しまるこ「寒くてケツがブルブル震えたから、熱が生産されたのかもしれない」
しまるこ「すみません! お客様の中で、ローラー付きのソリで滑っている方はいらっしゃいませんか!?」
しまるこ「ローラー付きのソリをください!!!!」
ゆりあ「ローラー付きだったら滑れないんじゃない?」
※
タツ吉「しっかしこいつのせいでえらい目にあったな」
ビック山「ほんと」
マクド「もうぜったいこいつ呼ばないにしよう」
しまるこ「⋯⋯」
ビック山「最後ボード返す時も泣くし」
しまるこ「人さらいーーーーーーーー!!」
しまるこ「誘拐犯ーーーーーーーーーーー!!」
しまるこ「あたいの子供を返しなさいーーーーーーーーーーーーー!!」
しまるこ「人権問題で訴えます!」
店員「明日また会えますよ」
しまるこ「明日は筋肉痛がひどいのでここには来ません!!」
しまるこ「ちゃんと30分に一回は授乳してくださいね!」
しまるこ「すいません! この店にローラーは置いてありませんか!!?」
しまるこ「ローラー付きのソリをレンタルしたいのですが!!!」
店員「今からですか?」
しまるこ「はい! 今からローラー付きのソリをレンタルします!!」
マクド「しまるこ」
しまるこ「ん? ああコンビニパンツ」
しまるこ「おーありがと! 悪いな」
しまるこ「本当にありがとうーーーーーー!!」
しまるこ「ところでそのちんちんの下についてる2つのローラーレンタルできない!?」
まゆみ「ねぇ、同じパンツ履いてる?」
しまるこ「履いてないよ」
まゆみ「ホントに?」
しまるこ「うん」
まゆみ「そう、ならいいけど」