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かけ湯しないで風呂に入ると、ちんこからにゅわ〜〜っと白い入道雲みたいのが浮かぶ

さて、下品な話で恐縮だが、小生は昔から、風呂に入るときに、かけ湯というものをしたことがなかった。

一日仕事をして帰ってきて、その足でそのまま湯船に入っていた。

子供の頃はとくに大丈夫だったが、20代後半からだろうか? とつぜん、家族からクレームが届くようになった。なんでも、白いプツプツしたものが湯船に浮かんでいるという。

たしかに、言われて見てみれば、湯船の中に、白いプツプツしたものが浮かんでいた。

小生は子供の頃から、身体を洗うということをしたことがなかった。タオルやたわしで身体をゴシゴシこするということをしたことがなかった。

20代後半まではそれでよかった。20代後半までは、白いプツプツしたものが風呂に浮かぶことはなかった。

さいきん、いつも電話している友達が、職場(病院)の同僚を連れて小生のマンションを訪ねてきた。

その同僚とやらは、36歳の童貞で、一度も女性と付き合ったことがなく、背は158㎝くらいで、禿げていて、11月下旬なのに半袖短パンで、釣竿を背負ってやってきた。趣味は釣りと全国の二郎系ラーメン巡りということで、休日は首都高を4時間走って二郎系ラーメンを巡るらしい。一日3〜4食二郎系ラーメンを食べることもままあるらしく、3連休もそうやって過ごし、10食以上連続で二郎系ラーメンを食べたその翌日に、病院に出勤することもあるらしかった。そういうときは物凄い匂いを発しているらしく、リハビリ室に入った瞬間、職場の連中が大騒ぎをして、「なんだこの匂い!」「匂いやべぇ!」「クッセェーーー!」とパニックになるらしい。たしかに、年がら年中、二郎系ラーメンを食べていそうな見た目をしており、背脂を吸収したためか、全体的に身体がヌルヌルしていて、小柄ではあるものの身体もチャーシューみたいにパンパンに膨らんでおり、獣のように毛深く、動物めいた匂いを皮膚中に充満させていた。

彼については、友達から「すごい男がいる」と何度も電話で聞かされていたが、会うのは初めてだった。今日は二人で釣りのために小生がいる地域にやってきたとのことで、そのついでに小生のマンションに立ち寄ってくれたのである。

しかし、小生の部屋ときたら、置き畳とMacBookPro一台しかないため、すぐに温泉に行こうという流れになった。

ろくに話をしないまま部屋を出ると、彼はマンションの階段を飛び跳ねて移動した。通路を小走りで駆けていき階段にさしかかると、階段の真ん中ぐらいのところまでジャンプして、もう半分残っている部分もまたジャンプして降りた。二つだけのジャンプでどんどん飛び降りていくと、一人、行き急いで、駐車場まで辿り着き、「どの車!?」と、まだ3階にいる小生たちの方を見て叫んだ。

「グレーのヴィッツ!」と小生が叫ぶと、「アレか!」と叫んで、また走り出していった。小生が遠くから赤外線のスイッチをピッとやってやると、彼はドアを開けて後部席に転がりこんだ。ゴール! というようだった。まだほとんど会話らしい会話をしていないのに、ずいぶんフランクな人間だなと思った。

俺と友達も車に乗り込むと、温泉に行く前にどこか食べに行こうという話になり、彼が肉を食いたいというので、近くのステーキ屋に行くことになった。

小生と友達は400g、彼は600gの肉を注文した。そのときの彼の食い方は凄まじいものだった。まず、肉を頭上高くにかかげ、それに向かって自分から肉にかぶりついていくというものだった。フォークを口元に運ぶのではなく、自分からその高さまで口を持っていった。なぜか、肉を頭上にかかげるような高い位置にかざすので、その位置まで自分の口をもっていかなくてはならなかった。それが、今まで見たことがない、とても変則的な食べ方に見えた。

 

また、噛みちぎり方も独特だった。肉を噛みちぎるさい、首を激しくふって、噛み切った反動で後頭部が後方に激しくもたれるというものだった。そのとき、アゴが天井に向くぐらい上を向くので、なんじゃこりゃ、ふざけてんのかと思った。

たまたま、うまく噛みちぎれなかったために、そういう噛み方になってしまっているのかなと思ったら、そうではなくて、すべての噛み方、すべて、一回いっかい、そんな食べ方をしていて、一回、噛みちぎるたびに、その反動で後頭部が激しく後ろに倒される格好となり、アゴが天井を向くようになっていた。

「何この食い方?」と俺は友達に聞くと、「これマジだよ」と友達は答えた。

「俺と会うのが初めてだから、爪痕を残そうとしてるんじゃなくて?」

「違うよ」と、友達は、本当に信じてほしいときに信じてもらいたいときの口調で言った。「こいつはいつもこうなの。いつも、病院の食堂でもこの食べ方をしていて、もう病院名物になってる」

「へぇ」と俺は感心して答えた。

「まぁ、何度見ても見慣れないせいか、病院のおばさんたちはみんな笑ってるよ。ちっとも慣れる気配がないわ」

「最初の一口だけふざけてやってるのかと思ったら、ずっとやってるじゃん」

「そう。食べ方の癖だけは直らないっていうからね」

「へぇ〜〜!」と、俺は感心して、彼をマジマジと見つめた。「狙ってやってたら寒いけど、これ、マジなんだぁ……。あぁ、たしかに、マジだね、これはマジだわ。いや、これはすごいわ。やっぱり、いるんだね、こういう人って、いや、いいよ。これはいい。これはすごくいいと思う。これは、なくなっちゃったら、ちょっと寂しいやつかもね」

「でしょ?」と友達は、嬉しそうに、自分の手柄のように言った。「俺もすごい好きなんだよ」

「女はどうかね?」と俺は言った。

「女から見たら、ちょっと引くかもね」と友達は言った。

「やっぱ、引かれるかねぇ。俺は、すごくいいと思うんだけどなぁ」と俺は目を輝かせながら言った。

彼は、これだけ目の前で、自分の食べている様子を、一挙手一投足マジマジと見入られ、感想までこうして詳しく語られるというのに、まったくお構いなしといった調子で肉を食べ続けた。もちろん、そのあいだずっと、頭上に肉を掲げて、その天高く吊るされた肉に向かって自分の口を持っていって、そこから後頭部を急降下させるように「バクン!」と噛みちぎる食べ方を続けていた。

俺はそれを見ながら言った。「俺がさ、俺が、この、たった一人の人間が、これだけ強く感動してるんだからさ、たぶん、女のほうでも、感動するやつがいても不思議じゃないような気がするんだけどなぁ? 同じように感動する子は絶対いると思う。男より少ないだろうけど」

「俺も登呂田(とろた)を見ていると思うんだけどね」と友達は言った。「でもこいつ、もう諦めてるらしくて、今世は恋愛はいいんだってさ」

「今世は?」と俺は言った。

「ん、まぁ」と彼は、肉を激しく噛み切りながら答えた。

「『いらっしゃーい』みたいな感じになっちゃってんじゃん」と小生は言った。

「俺は、そのままでいいと思う。なくなっちゃったら、ちょっと寂しいね。冬なのに短パン、半袖、背中に釣竿背負ってる。初対面の人の車にダッシュで乗り込んでいく。おまけにこんな飯の食い方されたら……ねぇ」

「病院でも、けっこうこいつのこと好きな人多いんだよ。もちろん女でね」

「……」

彼は恋愛の話になると、どこ吹く風といったように会話に参加しようとはしなかった。

とつぜん、友達が疑問を投げかけた。「その、さぁ……。こういうのを、自信満々でやられるのと、つい、癖で、しかたなく出ちゃった、というので、大きな差があると思わない? 俺はこいつの、この、勝手に出ちゃった感がすごいいいと思う。直そうとしているけど、直らなくて出ちゃうんだといった……、その感じが可愛いような気がする。これが、自分から出そうとしたり、許しちゃってると、気持ち悪くなってくるけど、この、どうしても出ちゃう感じがね。アプリの女と会えば、アプリの女はやっぱり引くかなぁ。うーん、でも、その、直そうとしているけどつい出ちゃう感じが、そのまま出たら、たぶん、アプリの女にも可愛いと思ってもらえるんじゃないかなって思うんだけどね」

「たしかに」と俺は言った。

「勝手に出ちゃった感はやっぱり必要じゃん? でも、君のこと気にしてるんだよっていう配慮は欲しいと思う」

「一応は?」と俺は聞いた。

「一応は」と友達は答えた。

彼はなんのことかさっぱりわからない、といった様子で、会話には参加せずに肉に喰らいついていた。

銭湯に行くと、また例のごとく彼は床のタイルを駆けていき、「どーーーん!」と言って、湯船に飛び込んだ。

小生は思わず「おお……」と言ってしまった。「今どきやるっていうね」

ふだん、こういうとき、どちらかというと、常識知らずのために注意される方の立場であることが多い小生と友達だったが、「お前、まわりの人に迷惑だからやめろよ」と友達が言った。

「いいじゃん! 今、だれもいないじゃん!」と登呂田くんは言った。

まるで人がいないときは飛びこまなければ損と言わんばかりだった。プールの飛び込み台かなにかのように思っているらしい。

ふだん、常識知らずのために、注意することに慣れていないためか、彼の言うことも一理あるんじゃないかと思い直したように、友達は閉口した。

たしかに、これまで多くの奇人変人を見てきたが。ブログでの活動を通じても、いろんな変人を見てきた。しかし、彼はまたそういう輩とは一味違うらしかった。この手の輩は、たいがいニートだったり働かなかったり、底辺層をウロウロしているのが常だが、彼は立派に作業療法士の資格をもって病院に勤めている36歳なのだ。ちょうど常識人と変人のあいだを自由に行き来し、こちらとしても、どちらで対応していいかわからなくなる。そのため、その都度信用を裏切られるような、腰を抜かすような展開になってしまうのだろう。

「すごいよ、こんな人間がそこらを車で運転している事実があるんだから」と小生は言った。

「身体洗えよ」と友達が言った。

登呂田は身体を洗わずに湯船に入っていた。「えーいいじゃん! はやく入ろうよ!」と彼は子供みたいに言った。小生と友達は洗い場で身体を洗っていた。先に話した通り、小生はもともと身体を洗う習慣がなかったが、彼もまたそうらしかった。しかし、小生は公共浴場や、TPOに合わせてときたまに身体を洗ったりはするが、彼はそれすらしなかった、というより頭から考えていないようだった。

小生は軽くシャワーだけ済ませて、友達より先に彼のもとへ行った。彼はのほほんとした顔で、「た〜まや〜」と言うような顔で、湯に浸かっていた。

小生は彼のとなりに座ると、その瞬間、すごい光景を見た。

彼の身体から、脂身のようなものがにゅわ〜〜っと浮かんでいたのだ。

なんだ、これは、と思った。

背脂? ラーメンのスープの脂身みたいなものが浮かんでいた。白く濁って脂分が浮いている。ポツポツしたもの、というレベルではなかった。二郎系ラーメンの背脂? それをつぶさに観察していると、とくに彼のちんこの裏の部分、金玉の裏部から、にゅわ〜〜っと、白い雲のような、金玉の裏がタバコを吸っているかのような、あきらかにちんこが基盤として(基盤というより黒幕?)、放たれている白い入道雲のようなものがあった。

やっぱりちんこなんだなぁと思った。世間のちんこに対する答えがあらわれていると思った。たしかに、これは「悪」だと思った。

だから、みんな、ちんこに対して、悪徳めいたもの、悪い、邪悪なものとして対峙するのだろう。

たしかに、いちばん、「こもる」のだろう。金玉の裏がへばりつく、あのやるせなさ。あの不快感、湿気感、下着の中の陰気、それが湯気という形で外にひらかれている。

ちんこだけ特別にとんこつペーストを塗りたくったわけではない、条件でいえば同じなのだ。条件でいえば、ちんこも全身も同じ肌であり、湯に浸かることで毛穴が開かれるという同じ条件でつらぬかれている。が、入道雲を発しているのはちんこだけだった。

「悪」だと思った。人々がちんこを魔的なもの、魔大国の帝王みたいに考えているのは、ここからきていると思った。

外国のトイレには、腰ぐらいの高さの、妙な高さの洗面台が常設されていると聞いたことがあるが、いったいそれはなんのために使うのかわからない高さのために日本人は最初戸惑ってしまうらしいが、あれは、ちんこを洗うためらしい。彼らは毎日風呂には入らないが、ちんこだけはしばしば洗うのは、この魔の所業をおさえるためだろう。

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