彼女はもう霊でしか話せない!
「ダメですね」
それだって、本当はまかりとおらない理論なんだぜ?
いいよ。そっちは気楽でね。ならこっちも霊として話させてもらうだけだ。しかしどうしてだろう? それはそれで、こんなふうに話すことができるというのも、それはそれでビタいち丸儲けという気分になって、そっちが用意してくれたテリトリーにお預かりになりたくなる。この気持ちはそれはそれで敗北感に似た勝利というものだ。いや勝利に似た敗北感というものか?
いいよ。そっちは気楽でね。もういよいよ詩才に目覚めてきて、精神も円熟して、歳もとってきて角が取れたんだろう。ただ吹き抜ける冷風のようだ。いっしょに理性も知識も同時に取れてしまったんだろう。霊の世界にいる人だからね。こっちが何を言っても霊で返される気がする。もうほとんど、外にある風そのままに、吹いている言葉そのままに話しているだけだろう。自分の気持ちなんてしったこっちゃない。
吹いてくる風そのままに話しているんだろう。気楽なもんさ。それをこっちでどうにかしようとして理性の壁を叩いてそれはおかしい。〜〜はこうしてこうだったんだから、もっと俺に対して気を遣ってもいいはずだ。なんて言葉はまかりとおらない。というより、届かない。もうそんな人間のレベルの人と人との会話を卒業しちゃってるんだから。それももう飽いてきたからかな。歳をとって円熟してきたから? まぁそれがいちばん自然というものはあるんだろう。会話において、ただ空間から導き出されてきた言葉を当てずっぽうで話すのは。
心を使わないで話すなんて、そんなうらやましい所業はほとんどラマナマハルシと同じじゃねーか。正直に話そうとしたって、そっちはそれが正直なんだもんなぁ。まだせいぜい追いかけようとする。ぐじゃぐじゃな部分から泥沼から手を出して掴もうとする。その手で引っ掻きまわそうとする。その所業がね、まったくどうにもならなくて、ただただ空回りこんな空回りするくらいだったら電話なんてするんじゃなかった。でもね。でも?でも、でも? デモも何もないんだがな。いつ出るかわからないドラクエ12のデモ版じゃあるまいし。でもやっぱりずるいと思うね。そんなに自由に話すなんてものは。第一心なんて使ってない。頭も心も使わずに話されたんじゃそれが正直としか言いようがない。自分でも正直かわからない。正直だ。俺から見てもそれが正直なのかわからないけれど、多分正直なんだろう。だとしたら? だとしたら、彼女もまたおびえているんだ。男から見えているその奇怪な姿とやらに。その純粋性とやらで。まぁ純粋とやらがあればの話だが。また一人、また二人と男を傷つけているんじゃないかって。だからそんなに勘がいいのだろう? だからそんなにキリンみたいに首を長くしたサルみたいにキョロキョロしているんだろう。やっぱり俺の方にはちょっと期待みたいなものがあっちゃったからね。欲しい欲しくないかつったら欲しくないんだけどね。ただねちょっとこっちをここまで向いてくれないとなるとちょっとね。やっぱりすっきりしないというか同じように霊で話せるんだぜ。霊と霊で会話することはできる。多分できる。でもそれにはもう少し晴れ晴れとした気分が必要で、今夜はちょっと無理だった。今夜はちょっとアルコールの度数が入った。ぬるぬるしたオリーブオイルみたいにちょっと粘性が強くって。おしまいだ。