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職場の35歳の独身女性を観察して結婚に必要だと思ったこと

職場(デイサービス)に35歳の独身の女性がいる。

見かけは派手で、付けまつ毛をして、茶髪でギャルっぽい。中肉中背。よくタバコを吸う。

性格はさっぱりしていて、余計なことは言わず、話を聞くのが上手い。自分のことは全然話さず、ゆっくりしたテンポで聞き役に努め、相手からいろんな情報を引き出すのが得意な人だ。彼女と話していると、ついつい余計なことまで話してしまう。警戒を固めて、これ以上話さないでおこうと戒めてないと、ぽんぽん何でも話してしまうので恐ろしい。

高卒で学力は低いが、コミュニケーション力が異常に高い。学生時代も立ち回りがうまく、ワーワー騒いでいる活発なグループに属していたことだろう。高校を卒業して、そのまま社会に馴染んで働けてしまうタイプがいるが、彼女がそれだ。淡々としていて、落ち着いていて、女性にしてはとても低いトーンで話す。「う〜ん」「へぇ~~」「あ~そうなんだぁ~~」「なるほどね~」が彼女の大体の発話のパターンだ。そして「ワハハハハ!」とたまに大口を開いて豪快に笑う。面白いから笑うこともあるが、場を気持ちよくさせるために笑うことが多い。ボケよりツッコミ型で、周りをよく観察しながら、場や空気が求めているものを見つけて提供する。総じて、スナックのママさんみたいなタイプだ。

基本的にいつもダラダラしており、顔に元気がない。いつも疲れたような、やさぐれて、殴られたブルドッグみたいな顔をしている。「疲れた〜」とか「ダルい〜」と、愚痴も多い。彼女が愚痴を言うより、愚痴が彼女の口を開かせている。しかし、それを理由に怒られることはなく、人気があるのは、場の雰囲気を察知して的確な行動をすることや、人懐っこさや温かな低調なオーラだろう。

本当に仕事がよくできる。命令を卒なくこなし、命令の背後の意図も汲んで行動する。10まで聞いて確認することもなく、2、3聞いたら10まで把握してしまう。3年間一緒に働いていて、ミスしているところをほとんど見たことがなかった。ダラダラはしているが、この低いトーンの精神状態にいるから、冷静に全体を俯瞰できてミスをしないようだ。自分の部屋で仕事しているような、いや、自分のベッドで寝ているかのように仕事をする。

顔は可愛いわけでもブスでもない。ダラダラしているから少しブスッと見えるかもしれないが、造りは悪くない。そこまで太っているわけではないが、背中や腰回りに、ダラけた精神が肉化したように脂肪がついていた。中年女性特有の、豚の背脂を被ったような薄く濁った肌質だった。

この人は、これからどうするのかなぁとよく思った。このままデイサービスで働き続けるのだろうか? 介護スタッフなので月給も18万ぐらいだろう。手取りで14、5万じゃないかと思われる。毎日送迎してお茶を出して、マシントレーニングの補助をして、利用者と話して、散歩して、飾り付けをして、日報を書いたり受付したりして、一日が終わる。

朝はいつもめんどくさそうな顔をしていた。朝だけでなく、昼も夕方も面倒くさそうな顔をしていた。本当に面倒くさいんだろう。俺も死ぬほど面倒くさかった。いつも、出社したら会社が更地になってるのを期待しながら向かっていた。

朝8時から20時まで働いている。化粧が油絵みたいに濃いので、5時には起きていると思われる。いくら化粧がキマっても見返りはない。おじいちゃんとおばあちゃんと一日過ごすだけだ。夜もダラダラ残業しているが、残業中はみんなと楽しそうに、タバコを吹かして、おしゃべりしている。この時間が一番楽しそうだった。小腹も満たせない給料なのに、化粧とタバコで消えていく。肌と肺を酸化させるためになけなしの金を費やし続ける。

ちなみにこの施設の他の女性スタッフはみんな既婚者で、この人だけが独身だ。20歳の子ですら結婚している。プライベートでも、友人は全員結婚してしまったらしい。家でもお母さんに結婚しろしろと言われるらしい。

「結婚より子供が欲しい。自分の将来のために子供が欲しい」

と彼女は漏らしていた。やはり女はいつも頭にあるのは自分のことだ。男を宿り木としか見ていない。将来、子供に寄生することまで計算している。以前、トレンディエンジェルの斉藤はハゲてるしつまらないし生理的に大嫌いだけど、結婚したいと言っていた。

もう35歳の女性となると、誰も何もいえない。彼氏がどうとか結婚がどうとか言えたもんじゃない。周りのスタッフも彼女にこういう話はしない。40を越えてくると、自他共に諦めもついてくるかもしれないが、35歳というのは、一番苦しい年齢なんじゃないかと思った。

絶対的に言えることは、出会いは待っていて訪れるものではない。35歳の女性でも、貰ってくれる人は多い。ちょっと婚活すればどうにでもなる。なのに、この人は何もやらない。出会い系アプリなら、35の女性でも結構イイねがつく。

なぜ行動しないのか? 調べないからだ。

職場や友人の紹介など、限られた空間の中で結婚するという固定観念から離れられない昔の人だからだ。明らかに情報が足りてない。ペアーズに登録してしまえば全て解決する。俺の周りはみんなペアーズで結婚している。生理的に大嫌いな人間と結婚できる覚悟があるなら、どうにでもなる。

器量も普通で周りから人気があって、仕事もできて、そんなに悪い人間でもないから、行動さえすれば結婚できる。

彼女は毎日ため息をついて、同じ職場の20歳の既婚者を遠い目で見つめて、子供の話をする主婦の会話を複雑な顔で聞いている。そんなときの痛みが俺まで伝わってくる。周りの人の気持ちを察するのがうまく、社会的な性格の彼女だからこそ、余計に痛々しく映る。これが、ボロ雑巾みたいに、いつも汚く横たわっているだけの人間だったり、気にせず覇道を突き進む豪の人だったら、かえってこっちも気持ちよくなれるのだが、普通の人だから、可哀相だ。

普通に生きて、周りから人気があって、癖もないのに、ずっと結婚できずに、つまらない仕事を毎日し続ける女性は、可哀相だ。俺が代わりに結婚してあげたくなる。

なぜ俺は彼女と結婚しないかというと、やはり、表情が好きじゃないからだ。だらだらした顔を見ているとイラついてくる。だらだらした低いトーンが仕事では功を奏しているが、俺は不快だ。沈んだつまらなそうな顔を見ていると、こっちも沈んでくる。彼女自身はこれに一生気づかないし、気づいても直せないだろう。このせいで彼女は結婚できない。

同じ職場の45歳の独身の先輩に、この女性と結婚すればいいじゃないですかと言ったら、

「なんか、だらだらしていて、朝とか全然動いてくれなさそうなんだよなぁ」

とポツンと漏らして笑った。やっぱり同じこと考えてたんだなぁと思った。たしかに、重そうな、万年生理みたいな顔をしていて、朝は石のように動かなそうだった。

「後がないから、結婚したらやることはやると思いますよ?」と言ったら、

「ああ、そうそう、やるやる、うん! たぶんやると思う!」

と、先輩は申し訳なさそうに今漏らした彼女への侮辱を取り返そうとした。この先輩は俺と違って、いくら率直に思ったことでも悪に徹しきれないところがあった。

「おそらく、結婚したらちゃんとやることはやると思います。いい年だから離婚するわけにもいかないし、共同生活で何もしないなんて相当な度胸がないとできませんからね。だけど、ちゃんとやるといっても、つまらなそう顔で、ダラダラしながら窓を開けたり拭いたり飯を作ったりすると思うんですよ。きちんとやることはやってくれるだろうけど、死んだ顔でやると思うんですよ。今まで付き合った彼氏は、その顔を見るのが嫌で、その未来が見えたから結婚しなかったんじゃないですかね」

「ひどいこと言うなぁ~」

と先輩は言いつつも爆笑していた。

俺の論旨がまったくトンチンカンだったら爆笑が生まれるはずはない。爆笑したということは同意したということだ。そしてこの人は、俺が勝手に悪口を言っているだけで、自分は関係ないという顔をしていたのが面白かった。

やはり、女は愛嬌だ。

トルストイも、人間の仕事は、ただキラキラしてさえいればいい、と言っている。

このキラキラというのは、表面的な、八方美人を指すわけではない。心に纏わりついている汚れを払拭して、本然の輝きで生きるということだ。

昔から『女は愛嬌』とよく言われているが、あれを簡単に捉えてはいけない。アーサー王物語が、女が求めていることは『自分の意思を持つこと』と究明させたように、『愛嬌』という一言にすべてが集約されている。

結局は愛嬌なのだ。勉強も仕事も家事も容姿もそこそこでいいから、ただ花が綻ぶような笑顔があればいい。結婚できない女は、みんな毒ガスがモウモウ吹き出ている。外も内も非常におしゃべりだ。女は歳をとると余計におしゃべりになる。黙ってニコニコしていられない。男が結婚を躊躇するのはこのためなのだ。

清潔で、気持ちのいい、いい表情であることが、女は一番重要だ。造り物でなく、本然の。いくら仕事ができても、顔に生気がないと、45歳の独身男にも見限られてしまう。

口数は少ないけど、返事と笑顔だけがいい女がいる。というか、同じ職場にいるのだが、その女性は大手企業のサラリーマンと結婚している。幸せそうだ。本当に口数が少なく、滅多に長い言葉を話さないが、とても素敵な明るい笑顔をする。というか笑顔だけで会話する。俺はこの人のことを特に美人だとも思わないし、まともに話したことがないから中身も知らないけど、今すぐに結婚してもいいと思う(もう結婚しているんだけど)。全ての男が彼女の方を選ぶだろう。

二人の違いは笑顔だけだ。みんな、黙ってニコニコするということができない。コミュニケーションがどうとか、面白いことを言えるとか、相槌とかテクニックがどうとか、色々あって、あり過ぎるくらい情報が乱雑してるけど、本然の笑顔以外、女は何もいらない。

 

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