しまるこ「っていうかさ8年間カットさせてもらえないってどういうこと?」
しまるこ「店にとっても不利益しかないと思うんだけど、仕事できるようになっていって貰わないと困るんじゃないの?」
美容師「まあ」
しまるこ「一日中何してるの?」
美容師「ずっとシャンプーしてます」
美容師「手、みます?」
しまるこ「うわぁ」
美容師「ミートソースこぼしたみたいですよね。汚いもの見せちゃってすいません」
しまるこ「あ……いや……」
美容師「店は、どうだろう? たぶんわたしの給料少ないから困らないのかも」
しまるこ「給料はどれくらいなの?」
美容師「手取りで12万円ぐらいですね」
しまるこ「ぶーーーッ!?」
美容師「ちょっとコーヒー吹かないでくださいよ(笑)」
しまるこ「一人暮らしでしょ!? 生活できんの!?」
美容師「ギリギリですね。家賃は58000円だし、美容師ってお金かかるんですよ、毎日ファッションショーみたいに様々なコーデ着なきゃいけないし、お店で販売してるトリートメントとかも自腹で買って試さなきゃいけないから、費用量みます」
しまるこ「なんだかそれだと、働く方がむしろ金がかかりそうだね」
美容師「ホントに!」
美容師「居酒屋でバイトした方がよっぽどよさそう」
しまるこ「副業でバイトしようとか思わないの?」
美容師「したいと思うんですけど……、週に一日しか休みないし、朝9時から22時まで働いて、その後、22時から23時までの1時間は先輩にカットの勉強をさせてもらう時間なんですよ。そして掃除して戸締りしたら、帰るの24時過ぎですよ〜」
しまるこ「ああ、そういう研修の日があるんだね」
美容師「いえ、毎日です」
しまるこ「毎日?(笑)」
しまるこ「嘘でしょ(笑)」
美容師「本当ですよ!!」
しまるこ「その1時間の勉強会は給料でんの?」
美容師「出るわけないじゃないですか!」
美容師「この業界は始業時間は遅いんですけど、わたしは見習いだから一番早くきて一番遅く帰りますね」
しまるこ「9時から24時までの週6日勤務で手取り12万円……」
しまるこ「俺のブログの読者さんで、女にすごい恨みをもってる人がいるんだけどさ、その人が天柱を下して回らなくても、十分に女は不幸になっているわけだ」
美容師「ブログ? え?」
しまるこ「郵便局のバイトは9時から17時までで給料25万円らしいよ。労働時間が半分になって給料が倍になるよ」
美容師「すごーい」
しまるこ「8年働いて、見習いって……、美容師みんなそうなの?」
美容師「店によりますね、小さな店だと1、2年でカットさせてもらえるところもあるし、東京とかの大きい有名店だと、10年以上ずっとシャンプーの人も当たり前にいますよ」
しまるこ「やば」
しまるこ「絶対意味ないけどね。カットできる人間を神格化させたいだけだよ」
美容師「神格化?」
しまるこ「カットできる人間を神格化させて、カットできない人間とセックスしようとしてるんだよ」
美容師「何言ってるんですか?」
しまるこ「本当は、いい歳して奇抜なヘアスタイルしているだけのただの凡人だってことは自分が一番よくわかってるんだけど、そんな自分を少しでもかっこよく見せるために、カットというものを難くて神聖で格式高い自分たちの専売特許にして、見習いの女には決して届かない深遠なものにして、羨望を集めているんだ」
しまるこ「見習いの女の子とセックスする方法はそれしか思いつかなかったってこと。それが美容師業界の実態」
美容師「言ってる意味がわかんないです(笑)」
しまるこ「人の手をミートソースみたいにしておいて、その手に握らせるのはハサミじゃなくて、櫛というか串なんだ」
しまるこ「やつら、トリート↓メントって言えばいいいのに、トリート↑メントって発音するよね? あれがすべてを物語っている」
しまるこ「カット選民思想は、セックスもそうだけど安月給でこき使うことができる。君はカットできなくてシャンプーしかできないんだから、手取り12万で当然でしょ? ってね。シャリを握らせてもらえない寿司職人の世界と似てるかもね」
しまるこ「他の店にいこうとおもわないの?」
美容師「うーん、8年やっててカットの経験ないと、どこも雇ってくれないと思います」
しまるこ「自分でさ、毎日一時間残らされて、なんなんだろう、とか思わないの?」
美容師「そりゃ思いますけど、でも、教えてくれる先輩に感謝というか」
しまるこ「完全に洗脳されてるね」
しまるこ「一時間の勉強会は、君を安月給で繋ぎ止めるための洗脳の時間なの。私達はこれだけ君のために親身になってあげてるんだよ? 辞めるなんて言わないよね? という確認の時間」
しまるこ「教える方なんてのは、腕組んで壁に寄りかかって、あることないこと言ってればいいだけだから楽なんだよ、ずっと立ちっぱなしでお客さんにヘコヘコして疲れたから、新人をいたぶって精神の回復を図る時間なんだ。どうせ人形をカットさせて、出来上がりを見にくるだけでしょ? それまでくっちゃべって遊んでるだけでしょ? だから先輩はつらくない。つらいのは君だけだ。君に感謝の念を植え付けるための調教システムなんだ」
しまるこ「正直、カットくらいやれる自信あるでしょ? 俺でもやれそうだもん」
美容師「バカにしないでください(笑)うーん、簡単なのなら」
しまるこ「つーか専門学校で習ったんでしょ?」
美容師「はい」
しまるこ「ただ髪をすくだけとか、全体を2センチ短くとか、それぐらいできるでしょ?」
美容師「できると思います」
しまるこ「それすらやらせないって、どんだけカット好きなんだよ。バルタン星人か」
美容師「(笑)」
しまるこ「美容師に限らず、どこにでもいるけどね。ラガーマンみたいに自分のボール(仕事)を抱きかかえて突っ走るヤツ。自分がいないと職場が廻らないみたいな空気出すんだよな」
美容師「三年で卒業していかない部活の先輩みたい(笑)」
しまるこ「可哀想に。まったく、俺が結婚してあげたくなってくるよ」
美容師「結婚してくれるんですかー?(笑)」