理学療法「独立開業・副業・仕事体験記」

信じられないかもしれないけど、こんなデイサービスがあるんです

 

世の中には恐ろしいデイサービスがある。

 

俺は理学療法士として、とあるデイサービスに勤めていたが、そこのデイサービスはびっくりするほどひどかった。

社長は60歳ぐらいの初老の男がやっているのだが、ほとんど引退しており、たまにしか顔を出さないので、業務の決定権は40歳の変なババアが握っていた。

 

特に何の知識も資格も持たないババアで、開設当初から勤務というだけで、不思議なくらい凄まじい権力を持っていた。

 

この40歳のババアが空は赤いといえば赤くなるし、その辺の石ころもクッキーと言えばクッキーになるのが、このデイサービスだった。

 

 

まずはじめに、このデイサービスは電話を借りるだけで500円とる。

 

利用者さんが、デイサービスでの訓練を終えて、お弁当を取り寄せてお家で食べたいなと思って、うちの施設から出前を注文しようとしたら500円取られてしまうのだ。お弁当が500円だとしたら1000円かかってしまう。

そして、飲み物は「水かお湯」のみだ。信じられないだろう。お茶すら出さない。

 

昔はお茶だったりジュースだったりコーヒーや紅茶が出ていたが、節約のために「水とお湯」しか出さなくなった。

 

ジュース代を節約したところで月に5000円ぐらいにしか浮かないと思うのだが、5000円と顧客の信用度を天秤にかけた結果、5000円を取ったのだろう。

しかも「水とお湯」を飲んでもいい時間は決められていて、3時間の滞在時間の間に、2回だけ飲む時間が設けられる。自由に水すら飲めない。

 

これは何のためにやっているのか俺にもわからない。ただいじめたいのだろうか?

 

おじいちゃんやおばあちゃんが苦しむ姿を見たいためにやっているのか。

 

長年にわたって生きてきて、粋も甘いも知り尽くして、皮膚のひとつひとつにこれまでの苦労と人生が刻まれたシワがあり、ジジやババの半分の年齢の自分が、思うがままに、この生きた神をコントロールできることが楽しいのだろうか。

散歩に付き添うだけで5000円とる。
散歩の途中で買い物をするようだったらまたそこで5000円をとる。

 

いったいこの5000円はどういう了見で、どういう内訳で5000円になっているのか、監査で尋ねられたらどう答えるつもりなのだろうか。

 

個人経営のデイサービスだからといって何をやってもいいのだろうか。

おじいちゃんおばあちゃんは不満を言わない。

若者中心社会の中で置き去りにされてるおじいちゃんおばあちゃんは、常に我慢を強要されていて、家族の中でも虐げられている。

 

デイサービスを利用する客の立場に立っても、ここでも虐げられるのだ。

決められたことに従うという性分は若者と比べ物にならない。肉体さえ頑健だったら、若者よりよほど生産力を誇るのじゃないかと思ってしまう。

 

なんて空気が悪いデイサービスだろう。活気も笑顔もない。食べ物や飲み物の持ち込みは不可だし、自分の席すら用意はされていないのでデイサービスに着いた途端にマシントレーニングをするはめになる。

 

一応休憩のために座れる場所が用意されてはいるが、そこにも長時間滞在してはいけない決まりになっている。常に落ち着く空間がなく、マシンから次のマシンへと移動し続けるはめになる。まるで労役に向かう刑務所の住人か、出荷される子牛の行進だ。

 

どうして食べ物を用意させなかったり持ち込み禁止だったり椅子を用意しないかと言うと、後片付けや掃除がめんどくさいからだ。

 

なぜか従業員専用の冷蔵庫はどデカイのがズシンと置かれており、そこには色とりどりの食品や飲み物が詰め込まれている。

この施設は食事介助やお風呂介助もないので、せいぜいスタッフの仕事といえば、マシントレーニングをやる際の補助ぐらいで、他に何もやることはない。

 

スタッフは10人いるけど、その10人はずっと立ったままぼーっとしている。経費削減のためにジュースを廃止するのに、こういう人件費は節約しない。

 

それでもどうしておじいちゃんおばあちゃん達が、このデイサービスに通うかと言うと、一つはマッサージ師によるマッサージが気に入っているからだ。

 

みんなマッサージをやってもらいたいから来ていると口を並べて言っている。
アンケートでも大体そう書かれている。

 

もう一つはせっかく知り合えた仲間と離れ離れになるのが嫌だかららしい。

 

もう後はゆっくり死ぬのを待つだけの人達にこんな心苦しい思いをさせるのはどうだろうか。

 

 

ちなみにうちのスタッフはいつも10人ぐらいいる。施設としてはそんなに大きな建物ではなく、だいたい午前と午後に20人ずつ利用者さんがやってくる形となる。

 

利用者20人に対してスタッフ10人だ。どう考えても多すぎるだろう。利用者さんも風邪でお休みとかがあって、17人くらいしかいない時がある。

 

利用者が17人しかいないのにスタッフが10人いる時は面白すぎて笑えてしまう。

普通のデイサービスだったらスタッフは4人か5人くらいだろう。

 

 

スタッフのやることと言ったら、マシンから次のマシンへと案内したり、利用者と雑談するぐらいだ。

 

利用者はほとんどマシーンの使い方を理解しているので今更教えることもない。

 

そもそもスタッフはマシンの使い方を理解している人間はひとりもいない。利用者が間違った使い方をしていても、みんな気づかないので素通りしている。

 

だからスタッフは基本的にずっと立っている。
スタッフ同士が立ち並んでおしゃべりをしていると怒られるので、ただ黙って立っている。

他のデイサービスと違って食事もなければお風呂もないので、ただ立っているしかない。

なんと、お散歩することもない! お散歩も5000円取るので、利用者は誰もお散歩しようとは思わない。

 

お茶出しもない。例の通りお茶と水を飲む機会も完全に時間と回数を決められているからだ。

 

あまりにも仕事がなさすぎるので、仕事の取り合いになっている。仕事しないでずっと立っているのも気が引けるらしく、マッサージ師の俺がちょっと用事を注文すると、すぐに飛んでやって来る。

 

基本的に10人のスタッフが壁に背を向けて立ち並んでいる姿は異様だ。

それでもなぜ10人もいるかと言うと、例の大ボスのパートのババアが、偉そうにずっとふんぞり返っていたいからである。

 

自分はずっと外からの注意に妨げられることなく、ずっとパソコンに向かってダラダラしていたいのだ。
急に人手が足りなくなったり車の送迎を頼まれたり、何かあった時に腰をあげるのが本当に嫌なのだ。

 

仕事中は本当にずっと座っていて、朝から夕方までずっと座っていて、学校の事務員の女みたいにケツと椅子が完全にくっついてしまって、二度と離れなくなっているように座り続けている。

そう、立つのが面倒くさいからたくさんの人を雇っているのだ。

一度社長に、「スタッフ多すぎませんか?」と言ったら、「そうだなぁ、なんか多いなぁ」と言うだけだった。

 

この社長ももう60歳で、半分ボケているので、このパートのババアの言いなりになってしまっている。

 

一日中パソコンに向かって何をしているのかと言うと、ただ漫画を読んでいるだけだ。パソコンじゃなくてスマホをいじっていることもよくある。

 

席を立ってどっか出かけたと思ったら500円ぐらいする変なドリンクを買って戻ってくる。

会社創立時からずっといただけに過ぎない、ただのババアだ。
何の資格も能力もない。が、この施設ではすべてを持っている。

 

スタッフは全員こいつの前ではかしこまる。

俺もしょうがないので、いつも命令をいやいや聞いてやっている。

 

このババアを見て一番思うのは、こんなクズなことをして、自分で自分が嫌にならないのかということだ。

 

他人に何も言われなくても、自分で自分が嫌になってもおかしくないはずだ。

 

だがこいつはチビでデブで40歳なのだが、見かけは50歳ぐらいに見えて、肌もボロボロで変なぶつぶつがいっぱいできている。

 

顔も殴られたように腫れていて、変なドリンクを飲みすぎているせいか、全身が水ぶくれしている。

 

化粧も何もしてこないし、ホームレス上がりのお掃除おばさんに見える。

 

これは神が与えた罰のように見える。心が醜悪にできていて、それが顕在するように外面に表われている。

やはり美しい心は美しい外見にしか宿らない。見た目と中身は確かに呼応する関係にある。

非常に健康に悪そうな見た目をしているので、もうすぐにでも死んでしまうだろう。

 

俺はこのデイサービスをとっくに辞めたが、今もまだこのような悲劇は続いているんだろう。

 

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