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可愛いと思っていた看護士の子が、赤ちゃんを連れてドトールにやってきた

2020-11-25

ずっと前から可愛いと思っていた看護士の女の子がいて、その子のことは看護学生の頃から知っていた。

小生はその子とよくドトールで一緒に勉強した。一言も話したことはないが、小生が困難な哲学上の問題にペンを走らせている横で、その子は解剖学の参考書を開いていた。

一度参考書を開くと、一心不乱に集中して取り掛かっていた。ほとんど毎日3時間ほど勉強していた。他の子は、すぐにスマホを触ってしまうが、この子は絶対に触らなかった。

看護士試験に受かったときは、ドトールにまでやってきて、勉強させていただきありがとうございました、おかげで合格することができました、と挨拶していた。小生もそれを奥の方から覗いていて、よかったよかったと安心して、その日は赤飯を炊いて一人で食べた。

看護士になった後も、よくドトールに来ていた。特筆すべき点は、看護士になったというのに、まだ勉強していた。先輩看護士から教わったことをまとめたメモを整理したり、学生時代に勉強した知識を忘れないように、昔の参考書も持ち込んでいた。そして新しいことも。机の上はいつも色んな書類でいっぱいだった。学生時代の頃より勉強していた。

ドトールのおばさん達は、いつも、「がんばってるね!」と声をかけながらコーヒーを渡していた。毎日来る小生に言ってくれたことはない。しかし、この子と同世代の20歳くらいの女の子たちは、あまりこの子のことをよく思っていないようだった。

(私はドトール。この子は看護士。将来有望。コーヒーなんてつくってやるもんですか。私はこれから時給上がっていかないけど、この子はいっぱい上がっていく)という目で、よく彼女のことを見ていた。

しかし、年配のスタッフ達とは仲が良かったから、こうして自分の赤ちゃんを見せにきたのだ。

「可愛いー!」

「本当に可愛いね〜!」

赤ちゃんか。昔、友達に、「赤ちゃん抱っこしてみる?」といわれ、小生が、「嫌だ。ぜったい持ちたくない」といったら、「持つっていうな。抱っこっていえよ」と怒られた。「持つって言葉に、お前の赤ちゃんに対する感情のすべてが表われている」とまでいわれた。

看護士の子は真面目だけど、非常にオシャレで露出が多く、たまに下着のような格好でドトールにやってくることもあったが(その辺りも賢い!)、すっかり全身ユニクロになっていた。子供のおむつ交換に素早く対応できそうな服装だった。

小生はショックだった。この前まで一緒に勉強してたのに、どうして置いていくんだ! 小生に断りなく結婚したんだ!

お前まだ新人2年目だろ。何をそんなに急ぐんだ。そんなに早く産んだって職場の行き遅れから反感買うだけだぞ。

どれだけ人生順風満帆に進むんだ。世の中には手取り13万の34歳の介護士がいるのに。

看護士で、赤ちゃんも生まれた。看護士だから職場復帰も簡単だ。雰囲気からして、結婚が早そうな子だとは思っていたが。ぜったいに人生のルートから外れない安定したものが纏っていると思っていた。

可愛い上に看護士で、結婚も片付けて、子供を産んで、あとは何をやるんだ? もう全部終わっちゃったじゃん。盆栽でもいじるのか?

「私も抱っこしていい〜?」

「どうぞ〜!」

……。

ドトールなんて来ても、同世代の女の子からはウケが悪いし(男からはめちゃくちゃよかった!)、おばさんだって、結婚してないおばさんがいる。抱っこなんてさせたら、てっきり誰かが手を滑らすんじゃないかと思ったが、杞憂だった。みんな、赤ちゃんを祝福していた。

家庭も裕福そうだった。育ちがいいことは一目見てわかった。きっと両方の親達が、かなり出してくれるだろう。

「その家はいくらなんだね?」
「3000万……です。あ、いえ、自分たちで払います」
「あなた達はまだ私達の協力が必要ではなくて?」
「でも、ママ達には結婚式代も出してもらったし……」
「お父さん、困ります。自分たちでなんとかしますから」
「ゆうすけくん」
「はい」
「君には君の役目があるね? 君の役目はつまらない維持を通す事かね?」
「それは……」
「ゆうすけくん。ちかこを幸せにしてくれるかね?」
「お父さん……」
「パパ……」
「ワンワン!」
「こら、ペル! こういうときは静かにしてるの!」
「ペルが半分出してくれるのかな?」
一同「ワハハハハハハ!」

いいなぁ。俺も3000万の家欲しいなぁ。俺にも買ってくれないかなぁ。

いいじゃん看護士なんだから。これからたくさん稼ぐんでしょ? 男も稼ぐんでしょ? それに加えて親の援助金かー。

赤ちゃんはいらないけど、3000万の家は欲しいなぁ。

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