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ハイジのおじいさんが作ったチーズを食べたい

投稿日:2020-08-19 更新日:

多くの人は生身ではやっていけない。本や経験から処世術を身につけ、それを武器に人を攻略していく。理論武装というやつだ。なんとそれは世間の体裁用だったはずだが、付き合うとか、結婚するとか、そういうところにまで関わってきてしまうらしい。

本当の私はぜんぜん違うのに、この人が好きだといってくれている私は本当の私じゃないのに、ただ適切な対応をしていたら好きになられてしまった。

悪口をいわない。お辞儀をするときは静止する。奢るよといわれても3回は断る。そんな当たり前のことを続けていたら、好きになられてしまった。

昔はもっと原始的なレベルで人と付き合っていた気がする。今はもう本当の交友関係というのがわからない。どうやって人と向き合えばよかったんだっけ。私は社会と付き合って社会と結婚している。

この人、よく見れば他人じゃないのか? ふとしたとき、なんでこの人といるのかわからなくなる。まったくの赤の他人。どうして一緒に運命を共同しているんだろう。彼は、そんな私の思いをつゆ知らず、今日も深夜にカップラーメンを2杯食べている(そっちのつゆは知っているらしい)

いつか壊れてしまいそうな気がする。真実の部分で付き合った仲ではないから、どこかでバレてしまいそうな気がする。

刺身にマヨネーズをつけて食べる姿は信じられない。宇宙人に見える。

歯が汚い。キスをするときはできるだけ見ないようにしている。というより怖くて見れない。しっかり見たら二度とキスができなくなりそう。歯周病ギリギリの歯茎をしている気がする。臭いものに蓋をするような、芸能人のような真っ白な歯をされたら、それもそれで気持ち悪い。

平日はちゃんと仕事にいってくれる。お弁当も米粒一つ残さないで持って帰ってきてくれる。夕食の洗い物と一緒に洗ってしまえるように、仕事から帰ってきたらすぐにお弁当箱を取り出して台所に置いておいてくれる。

休日はカインズホームにタンスを買いに行き、やれ横が何センチとか、縦があと何センチほしいとか、今、すごい小市民的なことをしているなぁという私の心の中にも気づかないでいてくれる。私が車のウォッシャー液の補充ができないから、それもやってくれる。

幼稚園の頃は、男の子と一緒に奇声をあげながら壁に落書きをしていたのを覚えている。

あの頃は急に後ろからハイキックをかましても、それがコミュニケーションとして成立していた。今はハイキック一つですべてが終わる。あの頃は積み木が崩れるだけだったけど、今は本当に家が崩れる。

こんなことを考えているなんていえやしない。この気持ちほど、家庭生活で邪魔になるものはない。まるで、会社で自分を殺しているときと同じ心持ちだ。

全裸でアルプスの山を駆け回りたい。ハイジのおじいさんが作ってくれるチーズを、食卓で足をバタバタさせながら待っていたい。タンスを倒したい。あなたが買ってくれたタンス。すごい音がするだろう。だから何? それだけのことじゃん。それだけのこと。どうしてそれで離婚しなきゃならないの? 精神病院? まさか。

私は、生きている。あなたの知らない本当の私は、誰からも忘れ去られてしまった場所で、奇声をあげながら壁に落書きを描き続けている。あの頃からずっと。

私は朝起きたら、布団の中に本当の私を置いてくる。朝日が眩しい。朝日が眩しいから、これでいいのかと思える。

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