しまるこ「お前、これまで生きてきてさ、服にいくら金使った?」
友達「知らないけど300万円ぐらいじゃない?」
しまるこ「300万か」
しまるこ「で、今のお前があるわけか」
友達「……」
しまるこ「お前、3年前くらいにさ、変な革ジャン買ってたじゃん? 4万円ぐらいのやつ」
しまるこ「あれ、今まったく着てねーよな」
友達「着てないね」
しまるこ「まだあんの?」
友達「あるよ」
しまるこ「もう着ないでしょ?」
友達「わかんない」
しまるこ「お前があれ着てるとこ2回くらいしか見たことないんだけど」
友達「お前以外の人間と会ったときに着てるわ(笑)」
しまるこ「合計で何回くらい着た?」
友達「5回くらいかなぁ?」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「4万払って5回とか(笑)」
友達「(笑)」
しまるこ「4万を5回で割ると8000円じゃねえか」
しまるこ「お前、あの革ジャンを着る権利を一日得るために8000円払ったってことなんだぜ?」
しまるこ「レンタル屋さんに行って8000円払ったのと変わらないんだよ」
友達「変わらないかもね」
しまるこ「バカじゃねーか(笑)」
しまるこ「しかも一日着てるわけじゃねえだろ? せいぜい3、4時間だろ? つまりあの革ジャンを着るために1時間2000円払ったってことなんだよお前は」
しまるこ「お前の時給もだいたい2000円くらいだろ? あの革ジャンを1時間着るために1時間働いてんだよ(笑)」
しまるこ「1時間の仕事と、あの革ジャンを1時間着た時の実感は釣り合い取れてんのかよ」
友達「どうだろうね(笑)」
しまるこ「今はもう7000円払えば立派な革ジャンが手に入る。周りからみたら7000円の革ジャンも4万円の革ジャンも変わんないよ」
しまるこ「出会い系に7000円の革ジャンを着て行こうが、4万円の革ジャンを着て行こうが、全く同じ未来が待ち受けてるだけだ。命かけてもいいよ」
しまるこ「もし三年前に7000円の革ジャンを選んでいたとしても、今お前は頭脳も肉体も価値感情も何一つ変わらない生命体として、変わらず俺の目の前で息していたはずだ」
しまるこ「まったく同じ未来が待っていたのに、ただ33000円の喪失をしたんだ」
友達「(笑)」
しまるこ「まあこっからは俺の話なんだけど、俺もデュベティカの65000円のダウンジャケットを買ったわけだよ、三年前に。で、着ないからメルカリで1万円で売りに出したんだけど、まったく落札されねーの(笑) 今年の冬も去年の冬もまったく着なかったから、もう一生着ないと思ってさ」
しまるこ「どう思う? これ」
友達「別に。どうも思わない」
しまるこ「でしょ?(笑)どうも思わないでしょ?」
友達「うん」
友達「何回くらい着たの?」
しまるこ「3回くらい」
友達「俺よりひでーじゃねーか(笑)」
友達「なんでこんなの65000円で買おうと思ったの?」
しまるこ「おめーの革ジャンと一緒だよ(笑)」
しまるこ「今年の冬はずっとチャンピオンの5000円のパーカーをずっと着てた」
しまるこ「部屋にいる時も外にいる時も、出会い系の時もずっとこれ」
しまるこ「このチャンピオンのパーカーどう思う?」
友達「どうも思わないよ」
しまるこ「どうも思わないでしょ?」
友達「うん」
しまるこ「そういうこと」
しまるこ「俺はそういうことをいいたかった」
友達「マジでどうも思わないわ」
しまるこ「10月から3月まで着てたから、まあ5ヶ月着てたわけだよ。日数にすると150日くらい。換算すると一日30円くらいなわけ」
しまるこ「一日30円くらいなわけ!!」
友達「(笑)」
しまるこ「昔からこういう服の買い方すべきだった」
友達「いいたいことはわかるけどさ、俺たちも34だからそうやって割り切れるけど、10代や20代でそこまで割り切れるもんじゃないからね。散々失敗してそういう判断ができるようになったんだよ」
しまるこ「そんなことはないよ」
しまるこ「昔はどうだったか知らないけど、今はAmazonや楽天でそれなりの値段でいいものいっぱいあるよ。このチャンピオンのパーカーだって楽天で買ったわけだけど」
しまるこ「しまむらやユニクロを買えとはいわないけど、BEAMSとかはいらないね。その中間の辺りを狙い続ければいい話なんだよ」
しまるこ「さらに俺は研究をした結果、服には7000円の法則があることを発見した。どんなに高くても、服やズボンも靴も7000円で十分なんだ」
しまるこ「7000円以上は絶対にダメ。それ以上は自己満足の世界、周りから見たら7000円と7000円以上の服はもう見分けがつかないんだよ」
友達「なんで7000円なの? 5000円じゃダメなの」
しまるこ「5000円でも全然いけないことはないよ。ただ、これ欲しいなぁと思うのはね、なぜか7000円あたりが多いんだよ。5000円~7000円の辺りが多いの。アウターやスニーカーも5000円に収めようとすると、心許なさが残るわけだよ」
友達「ふーん」
友達「俺はお前が5000円の服着ててもなんにも思わないけど(笑)」
しまるこ「そういうことをいいたかった(笑)」