出会い系「90人と出会って20人ほどやった体験談」

大体出会い系はいつもこんな感じで終わる

投稿日:2019-11-22 更新日:

普通、人は黙っていても心の中はお喋りだけど、彼女は内側も静かだった。

水膨れのような腫れぼったい顔で、細身だけどおっぱいはでかい。夜勤ばかりやっている看護師は、10年老けるのが早いと言われる通り、目の下に消えそうにない大きなクマがあった。

ずっと下を向いていて、YouTubeで犬の動画でも見るような顔で放心していた。30秒に1回はあくびをしていた。全く隠すつもりのない堂々としたあくびだった。

食事中はずっとスマホを見ていた。会話の種でも探してくれてるのかと思ったら、洋服のサイトを見ているだけだった。

自分からは一切会話を切り出さず、話しかけられた時、それも、答えたくなったものだけ答えるという、どう修行したらそんな域に到れるのかと思うことを、ごく自然に行うことができた。

あまりにも退屈だから、こんなことをするのか、つまらないから早く帰りたいというメッセージなのか。

「少し会っただけで解散したことがある」と彼女は言ったが、そういうことだろう。ギブアップする男はいただろう。俺はもう少し調べてみたかった。これが彼女の自然なのか、それとも俺に魅力がないためか。それは今日眠りにつくとき、安心して眠れるか、涙に濡れるか変わってくる大事なところなので、はっきりさせておきたかった。

彼女は運転がうまかった。交通ルールがハンドルを握っているようだった。この手の人は、いつも無駄な力がないので、何でもできる。仕事がとてもできる。どうやって冷静になろうとしても、ここまで心の体温を下げられるものではない。羨ましく思った。愛や思いやりがなくても、行為そのものと結びついている人がいる。むしろ、愛や思いやりがない方が、行為から外れないのかもしれない。

ずっとでかいあくびをされて、一度も目を合わせてくれず、疑問系じゃない言葉は無視されて、目の前で店員がチーズを溶かしても感想を口にせず、それなのにも関わず、彼女は、「この後どうします? ドライブでもします?」と言った。

嬉しかった。不機嫌だったり、退屈そうな顔をしている人間ほど、寂しがりだったり、人に飢えたりしているものだけど、これは見抜けなかった。おそらく、長年一緒にいてやっとたどり着ける人間同士の仲の空気でいるのだ。勝手にひとりだけ先にそこに行っているのだ。彼女にとって人と会うということはそういうことなのだ。確かに、俺も友達と遊んでるとき平気でスマホを見るけど、彼女は今(いつも)そういう気分だった。これは嬉しかった。この子と会う出会い系の男はみんな同じ想いを抱くだろう。みんな、ここで、一度捨てたホテルへの案内マップを拾い戻すのだろう。

「仕事? 楽しいわけないじゃないですか。うちの病院は2交替制だから1日16時間働くんですよ。早く辞めたいです。結婚して派遣で働きたいです。家に帰ったらですか? 何もしませんよ。本当に何もしません。何もやりたくないです。何かやりたいけど、やりたいこともないです。あのー、出会い系の女の写真見せてもらったんですけど、めっちゃブスばっかりじゃないですか? どう見てもメンヘラばっかだし、ろくなのいませんよね?」

彼女は、愚痴の話になると、とても元気になった。

「男もろくなのはいないけどね」

「出会い系の男ってヤリモクしかいないですよね?」

「だろうね」

「10人いたら9人はヤリモクってわかりました。私も半分は遊びでやっているから別にいいんですけど」

「半分遊びなんだ」

「でもそういう人とは1回限りで切っちゃいますね」

「そこから恋愛に発展はしないの?」

「恋愛に発展したのは、1回目で身体の関係がなかった時だけですね。夜に会うから悪いのかなと思って、昼に会ったんでけど、出会い系の男って、昼もラブホに誘ってくるんですね(笑)」

「その日に身体の関係がなかっとしても、2回目だったり4回目だったり、辛抱強く狙う男もいるけどね。付き合って正々堂々とやるヤリモクもいる」

「やっぱり後になって寂しくなる?」

「ならないですね」

「結婚して、派遣やりたいんだったら、結婚相談所の方がいいよ」

「それはガチじゃないですか」

「出会い系に結婚できる男なんていないよ」

「でも、付き合いましたよ?」

「どれくらい?」

「1ヶ月半」

「ヤリモクじゃん」と思ったけど言わなかった。

「でも、私から振りました。いびきがうるさくて無理でした。いびきがうるさい人って気持ち悪くないですか? なんかすぐ死にそう。毎回、『子作りの練習しない?』って誘ってくるのもイヤでした。したいなら普通にしたいって言えよって、思いました」

ずっと、クソな女だなぁと思っていた。ワンナイトラブを繰り返してこんなにやさぐれてしまったのか、それとも元々か。そしてこの会話中もずっとあくびをしていた。3回に1回は質問を無視された。だけど、可愛くはないけど細身で巨乳だし、この子が出会い系の男達にいいようにされている想像を楽しんでしまう自分がいた。

待ち合わせに15分遅れてくるし、その上、「車の中にいるんで入ってきてください」と言われたり、飯の会計が5500円だったのに、財布を出す素振りもなかったり、本当にクソ野郎で、俺はそんな軽蔑している相手にも頭を下げるのか? セックスを誘うのか? 異性としてあなたが魅力的ですという態度にでるのか?

この女より、ずっと高いところにいたかった。この女が俺を求めるのが当然だと思った。俺も無関心でいたかった。可愛くもないし性格もクソ、出会い系のガンのような女なのに、どうしても負けてしまう。軽蔑というより、嫌いなのだ。嫌いな相手をセックスに誘うほど、見下げた行為はない。

この性欲は一体どこから湧いてくるんだ? 男はこの性欲にいつも悩まされる。人生を棒に振るわせられる。学生時代はこれのせいで勉強が手につかず、社会に出ても、くだらない女のケツを追いかけてるうちに機を失う。男の人生なんてそんなもんだ。

女が羨ましかった。俺に対して何の感情も持たない女が羨ましかった。恋の駆け引きは何も考えていない方が勝つ。自分を全く良く見せようとしないし、正直でいられるからだ。俺も正直でいたかった。性欲に惑わされず、代わりに愛を目的地にピン刺しして走れたら、どれだけよかったか。少なくともこの勝負で負けることはなかった。そして、俺は、男達との勝負にも負けた。これまで彼女を食い散らかしてきた馬の骨達にも勝てなかった。いびきがうるさくて、子作りの練習をしようなんて寒いことを口にする男にも勝てなかった。

「このままじゃ、駅に着いちゃうね」と俺は言った。

無言が帰ってきた。

(それは何? まだ一緒にいたいってこと? ホテルに行こうってこと? 行きたいなら行きたいって言えよ)という無言に聴こえた。

ワンナイトラブをやり過ぎた女や風俗嬢は、ジメジメしながらセックスのチャンスを窺う男を見ると吐き気を覚える。ストレートに迫ってくる男と、ジメジメしながら策略を駆使してくる男の、二通りをたくさん経験してきて、前者の潔さを大いに認める判断材料が豊富だからである。

「お互いが良しとするのなら、出会ったその日に結婚してもいい」と彼女は言った。これは恋愛の修養期間が満了した人がいう台詞だ。

遊びなら遊びってはっきり言え。結婚や恋を振りかざして一夜を誘う男が一番くだらない。でも、応じるかどうかはわからない。私は息を吸うだけ。

駅についた。「今日はありがとう。機会があればまた会おうよ」と言ってしまった。この期に及んで悪あがきをしてしまった。もしかしたら、今日セックスしないことで認められて、次にできるかもしれないという期待から生まれた言葉だった。

彼女は面倒くさそうな顔をして、大きなあくびをしていた。

1+

-出会い系「90人と出会って20人ほどやった体験談」

Copyright© しまるこブログ , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.