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25歳の時、32歳の人妻と不倫した話

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西村さんはイタリア人の男と立派なマンションに住んでいて、当時25歳の、運転免許証の更新を忘れたために実家に戻ってきて、親に金を借りて、もう一度教習所に通っている俺が、踏み入れていい場所ではなかった。

世の中には、絶対に口説き落とせない女はいないと豪語する男がいるけど、このイタリア人も類に漏れず、毎日、西村さんの働いているカフェに通い詰めて口説き落とした。どれだけ断られても折れなかったらしい。西村さんは「絶対ない」と思っていたが、気づけば付き合って結婚までしていたという。

異国の陽気さ、鈍感さが、ストーカー気質を相手に与えなかったのだろう。日本の男は、ただ女を誠実に追いかけ続けることができない。自分を責めるか、相手を責めるかして、自滅してしまう。

このイタリア人はグラディウスというすごい名前だったが、名前負けしないすごいチンコを持っていた。日本のコンドームだと突き破ってしまうので、通販で海外のコンドームをまとめ買いしていた。

グラディウスは45歳だったが、絶倫で、365日中のうち360日は西村さんにセックスを持ちかけた。しかしチンコがあまりにもデカすぎて入らず、入っても非常に痛いらしい。その上、西村さんを犬猫のように四つん這いにさせて、頭をベッドに押し付け、有無も言わさぬピストンに及ぶので、西村さんは、とてもじゃないけど耐えられなかったらしい。グラディウスは、10回に9回はセックスを断られて、「一体いつならいいの?」とおもちゃを取り上げられた子供のように目に涙を浮かべたとのことだ。

西村さんは32歳だったが、看護士になる夢に再燃し、日中は看護学校に通って、夕方はホテルのフロント業務をやって、夜はカフェで働いていた。同時に家事もこなし、犬の散歩までした。それでいて看護学校の成績はトップだった。寝る間を削って勉強した。たまに血尿が出たと言っていた。あまりご飯を食べる人じゃなかったから、この活動量が維持できたのだろう。この手の人は皆少食である。

イタリアというのは何より食事を重んじる文化が根付いていて、食費手当を支給する会社が少なくないらしい。グラディウスは月給60万の他に、食費手当が20万支給されていた。だから、西村さんが働く理由はこれっぽっちもなかったのだが、それでも西村さんは働いた。血尿が出ても働いた。西村さんは、ボーッとしたり、思索に耽ったり、止まったりすることがなく、常に動いてないと気が済まない性質だった。時間が空くとすぐに予定を埋めてしまった。

このように、物質的な、外的な活動を通してでしか、人生の意義を悟れない人がいる。仕事をしたり、外に出てご飯を食べていないと、息をしてる人間とみなさない。西村さんは、俺をよく「電池が切れた人」「一緒にいても何もメリットがない」といった。

西村さんの外見は髪が長くて薄く、胸がでかくてEカップほどあり、顔がでかくて中肉で、目が一重の切れ長で、唇は厚く、アゴはしゃくれていて、出口王仁三郎の観相学によると、典型的な淫乱の相だった。

実際、淫乱だった。西村さんは、マイバイブを持っていた。週に3回はオナニーすると言っていた。あれだけセックスを断っておいて、オナニーするんだから、イタリア人からしたら、たまった話じゃないだろう。

西村さんに「淫乱」と言うとよく笑った。淫乱に淫乱というとみんな笑う。俺は、これはなぜだろうと思って頑張って解き明かしたのだが、よく噂や漫画で出てくる、あの淫乱に自分がなってるかもしれないという笑いだった。ヤリマンがヤリマンだと気づかないように、淫乱も淫乱だと気づかない。ずっと遠くにある場所だと思っていたのに、でも、あるいは、片足を踏み込んでいるかもしれないという笑いなのである。

西村さんは、よく俺の上に馬乗りになって全身を舐めたり、アナルまで舐めてくれた。「若い子はこんなことまでしてくれないでしょ?」「しまるこ君を繋ぎ止めるためだよ」と言った。「本当に?」と俺が返すと、「ふふ」と笑って、金玉を吸い込んだ。エッチな人妻を演じて楽しんでいるようだった。ドラマや漫画に出てくるアバンチュールなシーンを模倣していた。精神界を歩いて遊ぶ楽しみをしらない人間は、世間に洗脳された遊びが自分の遊びとなる。他人の欲望が自分の欲望なのである。西村さんは、不倫という凄まじいリスクを背負いながらも、一般の欲望をなぞっていた。

人はいくつになっても現役だと思っている。たとえ30になっても40になっても、性愛の対象だと思っている。死ぬまでこの自信は揺るがない。自分に対して持っている自己愛が、他人の目を通しても同じように映ると思ってしまう。

西村さんは、看護学校の更衣室で着替えている時、18歳の女の子に腰のくびれが綺麗ですねと言われたと嬉しそうに話した。また、あるとき「若い頃より、今の方が胸が大きくてハリがあるよ?」と、俺の気持ちを伺うように言った。

30代になって、一番性欲が亢進し、最も女盛りという時期に、放ったらかしにされるよりつらいことはないだろう。昔、付き合ってた頃、あれだけ美味しいご馳走にありついたように、ヨダレを垂らして噛みついてきたのに、今はその影もない。パチンコの景品みたいに、どっちでもいいみたいな顔をして抱かれる。

(本当に自分の価値はなくなったのだろうか? 一歩外に出れば発情してくれる人はいくらでもいる。学生も、サラリーマンも、Amazonの配達員も、私を女として見てくれる。けど、家の中にだけはいない。まだ生きている女子力はどこに向かって放てばいいのだろう? いい服を着て、誰に見せればいいんだろう。夫とセックスしないのだったら、もう一生誰ともセックスしないことになる。一生……。それでいいのか。もったいない気がする。生物として間違ってる気がする。まだ30かそこらなのに。20代と何がそんなに違うのか。舐めても同じ味がするはず。失ったのは彼の中でしょ? 私を求めてくれる人として何が悪いの? あなたはもう私を必要としないんでしょ? だったら別にいいはず。私も別にしたくない。夫婦だからといって無理してする必要もない。正直、いまさら女として見られても気持ち悪い)

すでに塩辛く干上がってしまった夫婦愛は、取り返す事は叶わず、浮気が起こるのは仕方がないと言える。だから、浮気されて怒ったり泣いたり殺したくなるのは、裏切られたことよりも、お前ばっかりいい思いしやがって……! という気持ちの方が大きかったりする。結婚とは、二人で青春を犠牲にする約束のことをいうのだから。

浮気は、夫の愛を感じられないためにする人もいるけど、夫の愛を十分に受けていてもしてしまう人もいる。西村さんは後者だった。

俺と会っている時の西村さんは、一夏のバカンスのような、小旅行に向かう人に見られる浮ついた顔をしていた。当時は、俺も全身をZOZOTOWNで固めていたこともあって、西村さんは、俺と二人で並んでる時の絵が好きそうだった。

西村さんは、昼食のことを「ランチ」といい、デザートのことを「スイーツ」といい、ジーパンのことを「ジーンズ」といった。その言葉を使ったら負けという概念がなかった。すぐにキラキラしたものに飛びついた。コンビニの外灯に群がる小虫のようだった。今では、社会はそんな彼女たちを洗脳することに完全にシフトしている。コンビニもカフェもラーメン屋も、ホストクラブみたいなもんだ。俺は、不倫もこれと似たようなものだと思っている。

女という生き物は、キラキラした服を着て、キラキラした場所に行って、キラキラしたものを食べて過ごす時間が何よりの至福だ。乃木坂の子たちは、みんなステージの上で発情している。コンサートなんてものは、ファンとセックスしているようなもんだ。彼女たちは全身全霊で女子力を爆発させて、指先の1本も動かなくなるほど、神経を焼き焦がしている。あれが、女として至上の喜びだ。街で彼氏と手を繋いで歩く女の子よりも、幸せそうな顔をしている。いい男を手にするよりも、自分が綺麗になる方が満足が大きいのである。

西村さんに、「俺の何が良くて一緒にいるの?」と聞いたら、「顔」と言った。「私にだって選ぶ権利がある」と笑いながら言った。

女の本質はどこまでもキラキラを求めている。女としてとっくに死んだと思われる、毎日水道水と戯れているうちの母親ですら求めている。近所のおばさんですら、デイサービスのおばあちゃんですら、リカちゃん人形で遊ぶ幼女も、漫画家志望のドテラを着てペンを走らせる女も、これを最上に置いている。それは彼女の作品によく表れている。不倫において、性や愛よりも、このキラキラが、一つ上の位置にある。

ある日、西村さんが急に夜中に電話してきた。号泣していた。グラディウスにレイプされたらしい。

その日は俺と会った日だった。家に帰ったら、いきなりグラディウスに腕を引っ張られ、寝室に連れていかれて、前戯もなしに強引に突っ込まれたらしい。

いつも以上に頭をベッドに押し付けられ、西村さんはワンワン泣いて、いくらやめるように言ってもとまらず、小一時間ほど行為に及んだらしい。

俺は直感した。グラディウスは、デートから帰ってきた西村さんのホヤホヤの表情、華美な服、いつもより雌の色に帯びている空気に勘づいて、浮気してきたなと思ったんだろう。そして腹を立てて西村さんを暴行した。そして、西村さんもそれを望んでいた。この、キラキラと同時に起こる背後の罪悪感を誰かに裁いてほしいと思っていた。その役はもちろん夫が一番適任である。

女は、朝起きたら夢遊病者のように裸足のまま外を歩きたくなったり、排水口へ流れていく水道水を見つめたまま止まってしまったり、思い切り傷つけられたい夜がある。グラディウスはその夜が今日だと見抜いた。メンテナンスなのだ。グラディウスは内側から、俺は外側から西村さんをメンテナンスしていた。

西村さんは、わんわん泣いていた。ひどく傷つけられたと言っていた。「私は物じゃないのにな……」とポツリと呟いた。

どうやっても、ただ静かに家庭の中に自分を溶かすことができない女がいる。むしろ、ほとんどの女がそうだろう。 今まで官能な視線を浴びて育った魔物が子宮の中に潜んでいて、急に現れて感覚器官を燃やし尽くしてしまう。女は楽しいときしかわんわん泣き崩れたりしない。西村さんの中の魔物は、気持ちよさそうに泣いていた。

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