創作物

尻舐め妖怪ピグラン

『尻舐め妖怪ピグラン』

 

うん、そうだよ。オイラお尻なめ妖怪のピグランさ。さ、お尻だして。ムフフフ
おい、逃げようたってだめだかんね。オイラはお前のお尻をなめるって決めたんだ。え、いつ決めたかだって?

オイラは今朝満員電車で透明になって、アミダナに寝っ転がってたんだ。

え、なんでそんなことするか?

人間観察だよ。底辺労働者が奴隷みたいに満員電車で輸送される姿を、観察するのが好きなのさ。

そこで、徹夜明けでふらふらのお前の前で、女子高生が痴漢にお尻触られてんのを目撃したのさ。

痴漢の現場で、一般の男が取る行動は痴漢を止めるか、無視するかの二つだろ?

お前は違ってたねえ。お前はただうっとりと見てたんだ。うっとりというか、ものすごーく羨ましそうに。

あああ、これはオイラの獲物(えもの)だってすぐに分かったね。うふふふ

さ、これでなんでオイラがお前の貧乏アパートに来たか分かったでしょ?

お前のお尻をお望み通り料理してあげるためさ。さ、ズボン下ろすんだよ。

はあ、嫌だって? 何でだよ。あの女子高生みたいにずっとお尻を触られたかったんだろ? 遠慮はやめなよ。

なにい、シャワー浴びてから出ないと嫌だって? お前は本当はヒゲを生やしてるくせに、乙女なのか? じゃーとっととシャワー浴びてきなよ。

はあ、オイラも一緒に入るのおお。オイラ風呂とかシャワー苦手なんだよお。なんかくすぐったいじゃん。濡れて面倒だし、ベタベタするしさあ。



分かった分かった。一緒に入れば、いいんだろ。社畜のくせに妖怪に命令するなっつうの。

ちょっといきなりシャワーかけるなよ。はあ?びびってなんかないし!
オイラ、二千年生きた妖怪だぞ。シャワーが怖くて妖怪やれるかっての。

お、おい、オイラの尻穴にばっかシャワーあてないでおくれよ。な、何だかオイラ変な気分になっちゃうよ。

は、あああ、あああ。もう勝手に後ろから妖怪の胸触るなって。ち、乳首にグリグリするのやめなよ。

あああああ、やだ、恥ずかしいよ。ああん、ああ、乳首舐めないで、ううう。やだあ、はあああん、ううう、お、おいら、こ、こういうの慣れてないんだってば。

はあはあ、もう許さん。絶対にお前の尻は触ってやらんからな。ふむ、反省したのか? まあ、その土下座で許してやるか。

じゃーその畳の上に寝転がってみな。
うひゃああーエッチなお尻の穴だねえ。すっごいピンク色だ。今までウンチしたことないみたいだよ。

さあ、力ぬいて。ゆっくり呼吸すんだよ。スーハースーハーって。まずは指いれてあげるからね。

お尻からヨダレがだらだらだよ。イジメて欲しくて仕方ないのかな。淫乱な尻だねえ

痛いの? 我慢我慢。女子の初体験なんてもっと痛いんだから。さ、もっと深くさすよ。

アハハハお尻の穴がヒクヒク、クパクパしてきた。キモーイ。でもかわいいー。じゃあ、いよいよ、お尻の穴なめてあげるね

ペチャペチャ、ニュチャネチャ、ペチャペチャ

どう、気持ちいい? お尻の穴が気持ち良すぎてヒクヒクダンスが止まらないでしょ。

今度は前立腺もなめてあげるね。うふふ、前のほうでボウヤがオッキしちゃったよ。

男ってみんなお尻なめられるとチンチン大きくするんだね。も~しょうがないなあ。前もなめてあげるね。

ジュポジュポネロネロ、ジュポジュポ、ジュルジュル
テロテロネロネロジュルジュルジュポジュポ

どういきそう、まだまだだよ。お尻に力いれて。男の子でしょ。我慢しな。

ジュポジュポネロネロペチャペチャ

オマエ結構よくみたらかわいい顔してるから特別にキスもしてやるぞ。ありがたく思えよ。

ムウムペチャクチャグ厶ムムチャムフウウムムム。

うふふ、魂抜かれたみたいだな。お前。かわいいぞ

なにいいいいいいい。オイラのオマンコにおチンチンいれさせてくれって?

い、嫌だよお。何で妖怪とセックスするなんて発想でてくるんだよ。社畜のくせに。
お、オイラ、二千年生きてきたけどエッチなんてやったことないんだよ。

おい、強引に組み伏せてくるなよ。ら、乱暴だぞ。社畜のくせにオイラと無理やりなんて…

うあああああああああ、やだ、あああ、そ、そんな、おチンポつっこまないで、あああ、あん、あああああああ、やだあ、痛い……社畜のおチンポがおいらのマンコに強引に侵入してきたよおお。ヘビみたいにいい。

な、なんでこんなひどいことするんだよお。お、オイラただ社畜の肛門舐めてやっただけじゃないかああ。

ああ、やだ、あああ、そ、そんな、激しく、後ろからせめないで、あああ、あふう、あん、あああん、やだ気持ちいいよ。痛いのが気持ちくなってきた。

あ、あああ、いいよ、はああ、やだ、あああ、社畜チンポがオイラのマンコを行ったりきたするよお。あああああ、はあ、あああ、いい、いいいい、いっちゃうよおお。あああ。

……ふーむ、エッチもなかなか悪くないぞ。最初は痛かったけど、流石に妖怪パワーが勝ったね。痛みがすぐに気持ちよさに変わった。どうだ、すごいだろ!

こんなにセックスって気持ちいいなんて知らなかった。どうだ、社畜、オイラと同棲しないか?

おおお、賛成か。ふむふむ。オイラが尻をなめると社畜がおチンポを大きくして、オイラのおマンコに入れれば二人で気持ちいいだろ? 最高じゃないか、うんうん

じゃーもう一回パンツ脱げ。尻を舐めてやるからな。さあ、四つん這いになってオイラに肛門向けな。社畜は今日からオイラの専用の尻穴だからな。よろしくwww


おはよう。朝飯食べるかい?

妖怪だって朝食作るさ。ふむ。ああ、エプロンくらいしろって? なーに照れてんの? お互い尻穴の形まで知ってる仲だろうが。うひゃひゃひゃ。

オイラ食いしんぼだから朝からすごいの作ったぞ。パエリアってスペインの黄色いご飯だ。

はあ、身体を隠せだと。オイラ生まれてからずっと裸だぞ。こんな素敵な身体隠すのもったいないだろ。

ふむ、素敵なのは認めるって。まあ、お前は"美"のなんたるかが分かる社畜だと思っておったよ。

ちょっと待ってパエリアに塩をかけるから。塩加減を間違えると台無しだからな。仕上げに白
ワインを入れて風味を付けてと。よし、完成だ。味見してみるか。おおおおお、うまい!
お前も食ってみるか? なかなかだぞ。

うまいか? だろだろ。オイラはスペインに住んでたこともあるからな。これで国際的な妖怪なんだぞ。


ほら股間だけ隠してやったぞ。これでお前のチンポがオイラのおマンコに突撃することもないだろ? え、まだ十分エッチだって……仕方ない社畜だなあ。オイラ身体になにか付けると痒くなるんだよなあ。妖怪だからかなあ。

ほら、エプロンしてやったぞ。これで文句は言わせんぞ。さあ、パエリア食おうぜ。お前は箸とかコップ運べよな。ワインも忘れるなよ。

さ、食べようぜ。おいおい、何泣いてるんだ。腹でも痛いのか? 

え、女子にこんな優しくされたことないって? まあ、いかにもモテナさそうだもんな、社畜は。まあ、泣いてたらパエリアの味が分からんぞ。オイラが丹精こめて作ったんだからな。シーフードはアサリとシーチキンと冷凍の剥き海老で低予算バージョンだけどな。

おお泣きやんだらものすごい勢いで食いだした。ゆっくりよく噛んで食わないと腹痛くなるぞ。ほらワインでも飲んで落ち着けよ。

まあ、二人で食べると楽しいよな。オイラも楽しいよ。それにしても社畜は良く食うなあ。

あらあ下腹出てるぞ。ちょっとはダイエットしないとますます、おっさん臭くなるぞ。

あああ、エプロン面倒くさいや。もう取っちゃっていいか? うわあ、社畜目が血走りすぎだって。どんだけオイラの身体に欲情してんのよ。

え、パエリアに欲情した? どういうことなんww
パエリアから伝わるオイラの優しさで、欲情したってこと? 意味分からねえwww

じゃあ、お楽しみ始めるぞ。パンツ脱ぎなwww

え、尻穴なめる前にキスするの?……しょうがないなあ。

チュ💕……なんか照れるね。これからもよろしくな

すいません、茅場さん。このGW中、ピグランのことが頭が離れなくて、私も改ざん運動に参加せずにはいられませんでした。ピグランのせいで私の今年のGWは台無しになってしまいました。

 

『尻舐め妖怪ピグラン』

 

『尻舐め妖怪ピグラン』、以下、通称ピグランは量産型の下級妖怪の一種で、ゴキブリのようにどこにでも沸き、壁のシミのようにどこにでも見られるので、希少性はまったくない。戦闘力をほとんど持たず、知能も低く、人間界でもっとも低次の一生を過ごしたものが転生先としてこの存在になる。いちばん大きな特徴は、“尻が好き”ということであり、ほかの妖怪の臀部を見ては、赤い絨毯のような長い舌を出し、掃除婦が窓をピカピカにするように念入りに舐めてくる。

グルメであり、地中海系の料理にはめっぽう詳しく、そのため任される仕事としては閻魔大王の台所役家臣の補佐として調理にあたることが多い。しかし知能が低いため調理過程を忘れてしまうこともしばしばで、同じく調理にあたっていた妖怪に聞いては、その妖怪もさっぱりわからない場合、「Hey Siri」と言ってスマホで調べようものなら、“尻”という言葉に反応し、調理どころではなくなってしまい、免職させられることも多い。

命名の由来は、“ピグ”=“豚” “ラン”=“ランドセルを背負ったバカな小学生”という意味からきている。頭の悪さを文字られたものであるが、その量産型下級妖怪の同情すべき運命を揶揄し、引っこ抜かれてあなただけについてゆく今日も運ぶ戦う増えるそして食べられるといった“ピクミン”の人生をなぞらえたとも言われている。

ある日、ピグランは、閻魔大王邸宅の門番の任についていたが、牛車によって他国から輸入されてきた荷台の上でゆらゆら揺れている桃を、尻と勘違いして、持ち場を離れて追いかけていってしまい、そのペナルティとして人間界に堕とされた。

人間界に堕とされたピグランがいちばん初めに興味を持ったのは、“アミダナ”だった。

七輪の一種で、自分の尻を地獄の業火に焼かれるのを連想させるのか、網状に張られたきめ細かい鉄線が皮膚に擦れるのが気持ちよさそうだと思ったのか、あるいは電車内でいっせいに並んだケツが牛車に運ばれる桃のように映ったのか、ピグランはすぐにアミダナの虜になった。人間界において、妖怪は透明になれるという特性をもち、ピグランは日がな一日、列車のアミダナに透明の姿で過ごした。

ある朝、ピグランは、女子高生が痴漢されているのを見た。彼女が声を出せないことをいいことに、したりがおで、キュウキュウと揉みしだいている。ピグランは待ってましたと言わんばかりに、アミダナから身を乗り出し、全神経を集中させて、焼きついた有機ELディスプレイのように目に焼きつけようと努めた。視線のあいだを邪魔するのっぴきならないうだつの上がらないサラリーマンの群れをことごとく排除し、都合よく、何の隔たりもなくした状態で、もみしだかれる臀部だけをクローズアップさせるといった、妖怪の視力だけがかなう特別な鑑賞をした。

痴漢男はパン生地をこねるように女子高生の臀部を揉みしだいていた。ピグランはもしかしたらこの男の職業はパン職人かもしれないと思った。こねて、うずまき状に旋回されて、魔法陣でも描いているかのような複雑でグルグルな幾何学模様がピグランの眼前に迫ってきて、妖怪の特別な鑑賞法によって、目と鼻の先にそれが展開されるピグランにとって、まるで洗濯機の中でまわされている気分になった。思わずアミダナから落っこちてしまいそうになった。人間界に堕ちたピグランにとって、もうこれ以上堕ちるところはないというのに。痴漢男の手の動きには、私怨のようなものが含まれていた。この女子高生の臀部を、憎き社会への恨みをはらす仇敵のように見立て、引き裂かんばかりに揉みしだいていた。どっちが妖怪界だとピグランは思った。はたしてこの列車は知らずして妖怪界まで運行していたのかもしれない。

ピグランは気を取り直して、周囲に目を向けたところ、一人の中年サラリーマンが、その痴漢光景に釘づけになっている様子に気づいた。まるで数秒前の自分を見ているようだった。徹夜明け仕事か、スーツはよれていて、朝の新鮮な空気は感じられない、この男もまたうだつの上がらないサラリーマンといったところか。しかし、彼が、痴漢現場を目撃することで、英気を取り戻し、まるで社長にまで上り詰めたかのように、一駅のあいだに、立身出世を果たし、全身が輝き出したことに、ピグランは驚きを隠せなかった。

義彦は、痴漢行為を止めにはいるでもなく、その場から一歩も動こうとはしなかった。まるで女子高生の保護者のように行為を見届けていた。その姿は母ライオンが小ライオンが狩りをするのを遠くから見守るそれと似ていた。これを見たピグランは、またしてもアミダナから落っこちてしまいそうになった。頭の悪いピグランは、今、いったい、どこで、誰が、何をしているのか、わからなくなってしまい、知能が低いピグランは、この男がお尻を触られたいと思っているに違いない、と勘違いしてしまった。

「さ、これでなんでオイラがお前の貧乏アパートに来たか分かったでしょ?」

「……」

義彦は自分の目を疑った。目の前に、およそ衣類の一つも身につけてないピンク色の謎の物体が、自分のマンションにやってきて話しかけている。

「お前のお尻をお望み通り料理してあげるためさ。さ、ズボン下ろすんだよ」

自体をうまく飲み込めていない義彦は、ただ反射的に、「嫌だ」と言った。

「はあ、嫌だって? 何でだよ。あの女子高生みたいにずっとお尻を触られたかったんだろ? 遠慮はやめなよ」

遠慮? まるでネットフリックスを無料視聴できますよといった調子で言いやがる。新しいNHKの訪問か何かかと義彦は思った。こんな妖怪に目をつけられて家までついてこられるとは、まるで桃鉄の貧乏神だ。あの列車に乗ったときに、ついてきてしまったのか。

「 なにい、シャワー浴びてから出ないと嫌だって? お前は本当はヒゲを生やしてるくせに、乙女なのか? じゃーとっととシャワー浴びてきなよ」

「嫌だ」の次に浮かんできた言葉は、「シャワー浴びてないから嫌だ」というものだった。我ながら雑なセリフだと義彦は思った。この状況に異和を覚えながらも、適当にあしらうための簡易な言葉だけは浮かんでくる。それを口にするだけだった。徹夜明けで疲れた頭、貪婪な社会に食い尽くされた心は、妖怪相手にさえ、まともに機能しなくなっていた。

「はあ、オイラも一緒に入るのおお。オイラ風呂とかシャワー苦手なんだよお。なんかくすぐったいじゃん。濡れて面倒だし、ベタベタするしさあ。」

きったねぇ妖怪だな、と義彦は思った。こいつは一体どれだけ風呂に入ってないんだろう、と思った。

「分かった分かった。一緒に入れば、いいんだろ。社畜のくせに妖怪に命令するなっつうの」

義彦は、子供が実験するように、ピグランのピンクの肌にシャワーをぶっかけてみた。ひょっとしたら溶けてしまうだろうか? いや、むしろ、溶けてほしいという期待が込められていた。

「ちょっといきなりシャワーかけるなよ」

妖怪は、これまでのひょうきんだった声に似合わず、冷酷で真顔の声を出した。

「びびってんのかよ」と言って、義彦はニヤリと笑った。痴漢を見ながらニヤニヤしていた時のそれの顔である。

「はあ?びびってなんかないし! オイラ、二千年生きた妖怪だぞ。シャワーが怖くて妖怪やれるかっての」

妖怪のメンツも水で洗い流されそうになることを恐れたのか。とかく風呂に入れられるのを嫌がる猫のような気配を義彦は嗅ぎ取った。さすが痴漢ウォッチャーである。

「お、おい、オイラの尻穴にばっかシャワーあてないでおくれよ。な、何だかオイラ変な気分になっちゃうよ」

義彦は、ピグランの尻穴に、シャワーの水圧を“強”にして、ぶちかけた。妖怪は、「は、あああ、あああ」とやるせない声を出して、尻尾を握られた孫悟空のように、みるみる力が抜けていった。思わず背を向けて逃げ出そうとするピグランを、義彦は羽交い締めして、胸を揉んだ。

「は、あああ、あああ。もう勝手に後ろから妖怪の胸触るなって。ち、乳首にグリグリするのやめなよ」

義彦はピグランの乳首をグリグリまわした。その指先の軌道は、トンボを捕まえるときの、あのぐるぐる指を回して混乱させるときの、幻惑的、蠱惑的な軌道とよく似ていた。本来は直に接触して効果を期待するものではないが、ピグランの乳首を混乱させるには十分だった。

ピグランの乳首は悲鳴をあげていた。義彦は助け舟を出すように、ピグランの乳首を口で窄み、力いっぱい吸引した。

「あああああ、やだ、恥ずかしいよ。ああん、ああ、乳首舐めないで、ううう。やだあ、はあああん、ううう、お、おいら、こ、こういうの慣れてないんだってば」

慣れてない? その言葉に義彦は違和感を覚えた。二千年も生きておいてどこで油を売っていたのだろう。マッチでも売っていたのだろうか?

「はあはあ、もう許さん。絶対にお前の尻は触ってやらんからな。ふむ、反省したのか? まあ、その土下座で許してやるか」

あれほど卑猥な声をあげておきながら、まだ自分の主張が通ると思っている。フッと内心で笑いながらも、義彦はピグランに土下座した。上げてから下ろすのもいいかと思ったのだ。ふだんから上司に土下座ばかりしている義彦にとって、土下座など痛くも痒くもなかった。

「じゃーその畳の上に寝転がってみな」

義彦は言われた通りにした。

「うひゃああーエッチなお尻の穴だねえ。すっごいピンク色だ。今までウンチしたことないみたいだよ」

そう言われて義彦は嫌な気分を覚えなかった。いつもガソリンスタンドで車の洗浄をするたびに、自分の肛門もこうやって洗浄できないものかと憂いていた矢先だったからだ。

「さあ、力ぬいて。ゆっくり呼吸すんだよ。スーハースーハーって。まずは指いれてあげるからね」

お産か。と義彦は思った。

「お尻からヨダレがだらだらだよ。イジメて欲しくて仕方ないのかな。淫乱な尻だねえ」

そう言われて、義彦は尻穴に触れて確認してみると、確かにノアの方舟の洪水のような事態になっていることに驚いた。

「痛いの? 我慢我慢。女子の初体験なんてもっと痛いんだから。さ、もっと深くさすよ」

破瓜の苦しみ。毎朝、満員電車に揺られて、人間性を引き裂かれている義彦だったが、ここにはまた別の苦しみがあるに違いないと思った。

「アハハハお尻の穴がヒクヒク、クパクパしてきた。キモーイ。でもかわいいー。じゃあ、いよいよ、お尻の穴なめてあげるね」

股を広げ、赤ちゃんのおむつ交換のような姿勢をとっていると、自分が自分ではないような気がしてくる。不思議と義彦は泣き出してしまいたくなり、手の動かし方も、足の動かし方も、忘れてしまいそうになった。

ペチャペチャ、ニュチャネチャ、ペチャペチャ

ピグランは、けたたましい、暴風雨のような、地球上の下品をいっぱいに集めたような音を立てて舐め始めた。尻舐め妖怪ピグラン、ここに爆誕である。尻舐めとして生きてきて、ここだけは譲れないといったアイデンティティのようなものがうかがえた。木が木であるように、石が石であるように、生命としての一つの個性が、それをまっとうしている姿である。

「どう、気持ちいい? お尻の穴が気持ち良すぎてヒクヒクダンスが止まらないでしょ」

ヒク……ヒク……と、確かに、腰に羽が生えたかのように重力を感じず、軽快なステップで天衣無縫に動き、自分のマンションがコンサート会場に思えて、ピグランと息を合わせてラップダンスをしているように思えた。義彦の心の中に、音楽が鳴り響いてくる。

ENJOY 音楽は鳴り続ける

IT’S JOIN  届けたい 胸の鼓動

ココロオドル アンコール わかす

Dance Dance Dance(READY GO!) 

今 ゴーイング ゴールインより 

飛び越し 音に乗り 泳ぎ続ける

ENJOY(ENJOY) IT’S JOIN (ITS’JOIN)

呼応する心 響き続ける

「ENJOY」と義彦が言うと、ピグランは「ENJOY!」と叫んだ。

「IT’JOIN」とピグランがいうと、「IT’JOIN!」と義彦が叫んだ。

「今度は前立腺もなめてあげるね。うふふ、前のほうでボウヤがオッキしちゃったよ。男ってみんなお尻なめられるとチンチン大きくするんだね。も~しょうがないなあ。前もなめてあげるね」

ジュポジュポネロネロ、ジュポジュポ、ジュルジュル

テロテロネロネロジュルジュルジュポジュポ

以前、なけなしの金で行ったデリヘルにやってもらったそれよりよっぽど上手かった。まるで炎さえ食べてきたかと思われる灼熱のような舌で、囚人を縛り付けるかのように、義彦の社畜チンポを絡め取ってきた。

「どういきそう、まだまだだよ。お尻に力いれて。男の子でしょ。我慢しな」

ッチ。フィニッシュ前に余計なこと言うんじゃねえよと義彦は思った。この前、コロナワクチンの注射をしたときに、老婆の看護師にまったく同じセリフを言われたことを思い出し、ババアの顔が浮かんできてしまったのだ。

ジュポジュポネロネロペチャペチャオマエ

「結構よくみたらかわいい顔してるから特別にキスもしてやるぞ。ありがたく思えよ」

キスというよりも、それは食事といった方が正しかった。紅きヨルムンガルドといったような舌で入念に舐められ、義彦の顔はバケツいっぱいのとろろ汁を被ったかのようにドロドロになった。この妖怪にとって、キスも尻舐めも一緒なのだろう。

「うふふ、魂抜かれたみたいだな。お前。かわいいぞ」

ムウムペチャクチャグ厶ムムチャムフウウムムム。

「なにいいいいいいい。オイラのオマンコにおチンチンいれさせてくれって?」

義彦はそんなことは一言もいっていなかったが、妖怪は勝手に一人で話を進めた。

「い、嫌だよお。何で妖怪とセックスするなんて発想でてくるんだよ。社畜のくせに。お、オイラ、二千年生きてきたけどエッチなんてやったことないんだよ」

「……」

「おい、強引に組み伏せてくるなよ。ら、乱暴だぞ。社畜のくせにオイラと無理やりなんて…」

そう言いながら、ピグランは自分から畳の上に倒れ込んでいった。義彦は覆い被さるような格好をとり、ピグランの腕を掴んでみるも、抵抗力を一ミリも感じなかった。

「うあああああああああ、やだ、あああ、そ、そんな、おチンポつっこまないで、あああ、あん、あああああああ、やだあ、痛い……社畜のおチンポがおいらのマンコに強引に侵入してきたよおお。ヘビみたいにいい」

確かに、満員電車に揺られ、うだつの上がらないサラリーマンを長年やっていると、その負のオーラは股間に凝縮され、このちんこが触れるもの皆傷つけてしまいそうになる。彼女らをも社畜にし、賃金をおとし、ゆくゆくは自己破産させ、「この呪われたちんこ!」と石を投げられてもおかしくないくらい、破滅的なものを匂わせる。

「ああ、やだ、あああ、そ、そんな、激しく、後ろからせめないで、あああ、あふう、あん、あああん、やだ気持ちいいよ。痛いのが気持ちくなってきた」

足ツボマッサージか。と義彦は思った。

「あ、あああ、いいよ、はああ、やだ、あああ、社畜チンポがオイラのマンコを行ったりきたするよお。あああああ、はあ、あああ、いい、いいいい、いっちゃうよおお。あああ」

ピグランの自身の下半身の中を行ったりきたりする光景は、回送列車のアミダナの上で、何度も往来する景色をただ一人眺めていた時間を思い出させた。それは妖怪の心にとってさえいくらかセンチメンタルにさせるものだったが、今は孤独感を感じなかった。

「……ふーむ、エッチもなかなか悪くないぞ。最初は痛かったけど、流石に妖怪パワーが勝ったね。痛みがすぐに気持ちよさに変わった。どうだ、すごいだろ!」

ピグランはエヘンと胸を張って言った。

「こんなにセックスって気持ちいいなんて知らなかった。どうだ、社畜、オイラと同棲しないか?」

大きく、屹立したちんぽが、義彦の代わりに答えていた。

「おおお、賛成か。ふむふむ。オイラが尻をなめると社畜がおチンポを大きくして、オイラのおマンコに入れれば二人で気持ちいいだろ? 最高じゃないか、うんうん」

ピグランは、まるでコナンに麻酔銃を撃たれる前の、事件現場を歩きながらうぬぼれた自説展開をする毛利小五郎みたいに言った。

「じゃーもう一回パンツ脱げ。尻を舐めてやるからな。さあ、四つん這いになってオイラに肛門向けな。社畜は今日からオイラの専用の尻穴だからな。よろしくwww」

こうして、義彦とピグランの、奇妙な同棲生活が始まった。

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