友達「俺さぁ、そういうの聞いてていつも思うんだけど、やっぱりどうしてもイライラしてきちゃうところがあるんだよね。定義とか概念がないとか、概念がないとかいうのも定義でしょ? そうやってみんな定義を持ち出して、人生をよりよく生きていこうとするけどさぁ。ニートやっててさぁ、もうすぐ38になることを考えると、マジで人生なんて真剣に生きる必要ないじゃんって思ったんだよ」
しまるこ「うん」
友達「ほんっとうにマジでくだらねーと思うわ。これ、この、この人生ってやつ。これさぁ、本当に一生懸命に生きる必要あるの? 普通に、マジで普通に考えたとき、そんなに大事にする必要ある? マジで考えてみて、マジで人生ってそんなに価値あるの? ただ人間が生きて一生を終えるだけでしょ?」
しまるこ「うん」
友達「もうすぐ38になるんだけど、38だぜ? 誰か俺のこと好きになるの? 誰が俺と結婚したいの? ニートだぜ? まぁ働いたところでも変わんねーんだけどさ、38の理学療法士なんて、その辺に掃いて捨てるほどいるじゃん?」
しまるこ「まぁ、理学療法士もニートも変わんないね」
友達「変わんない変わんない。お前は実在に概念を被せるから苦悩するって言ったけど、俺は自分を守ろうとするから不安になるんだと思う。まぁ一緒かもしれないけど。ずっとモテたかったし有名になりたかったし金持ちになりたかったけど、いまさら俺が有名になったところでなんなの?ってところがあるよね。今となっちゃ自分をテレビで見たくないもん。恥ずかして、マジで勘弁してもらいたいもん。38じゃん。ニューヒーローとしては遅すぎるし、周りが俺に期待しないのは明らかなんだけど、俺が俺を期待しなくなってきたね」
しまるこ「うん」
友達「もう一回人生をやり直せるとしたら本気出すけど、今回の人生はもういいやって感じになってる。だからあんなに異世界アニメが人気あるんじゃねーの? だから、お前に何を言われたところであんまりピンとこないんだよね」
しまるこ「なるほど」
友達「でも、この心境になってわかったこともあるよ。諦めたら諦めたらで、意外と元気がでてくるんだよ。若い頃は自分の人生に期待しすぎちゃうからね。傷がつかないように、できるだけ一分一秒を価値ある時間で構成させようとするじゃんね? それを将来に繋げたいわけね。んで一歩一歩慎重になっちゃう、んでかえって身動きが取れなくなっちゃう。それでみんな悩むんでしょ? 俺はもう何者かになりたいとか、そういうのはないね。お前がそれだけ真剣に悩むのは、それだけ人生を大事にしてるからだと思う。でも、マジでお前の人生なんてくだらないよ。本当にくだらないと思う」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「俺もそう思う(笑)」
友達「そうやって笑い飛ばしているのがいいと思う。マジで人生なんてくだらないから、笑い飛ばしているくらいがちょうどいいよ。俺は神とか真理とかはわからないけど、人生に対して真剣になる必要はないってはっきり言えるね。どうせ固くなるだけじゃん。お前はふざけて毒吐いているくらいがちょうどいいと思うけどね」
しまるこ「なるほど」
友達「ニートしてるだけだから、外から見たら何も変化はないんだけど、今は怖いもんがなくなってきたわ」
しまるこ「怖いものなしのニートは無敵だぁ」
友達「まぁ、働いている頃からずっと思ってたけどね、俺はいったい何を守ってるんだろうって。こんな身を粉にして働いて、こんな小市民みたいなボンクラ生活を、誰にも頼まれているわけじゃないのに、なんで必死に守ってるんだろうって。人生に困ったり苦悩しているやつを見ていると、イライラしてくるところがあるね。 お前が守っているそれってほんとにマジで意味ねーからさっさと捨てろよって思っちゃうんだよね。結局自分が好きだから悩んでるんじゃん、もっといい人生にしたいって、そういうことでしょ? 別に死ぬわけじゃないし、死んだっていいじゃん。 自分が好きすぎて、抱きしめすぎて圧死するよりずっといいじゃん」
しまるこ「岡本太郎と同じこと言ってら」
友達「普通に考えてみてさ、人生って大事だと思う?」
しまるこ「(笑)」
友達「35くらいまでは、どんだけ食いまくっても、ちゃんと清容して、ちゃんと服着ていけば、それなりにかっこよくなれたけど、今はハゲてきてるし、ピリッとならないんだよね。出会い系やるときも、シャワー浴びて身支度を整えれば一日を騙して通せたけど、最近、寝起きの状態をどうにかできないんだよね。朝起きて鏡見ると、ドブみたいになってるんだよね。なんで母親はこんなののために飯作ってくれるんだろうってマジで不思議に思うわ。すごいよね、こんなになっても可愛いと思ってくれてるってことだよね。あー、くるとこまできたなって思って。わかる? 相手の問題じゃなくて自分の問題さ? 自分の中で最高の状態を作り出せなくなってきちゃったっていうか。どんだけ準備しても、ピリッとした満足できる自分を作れなくなっちゃった」
しまるこ「わかるよ」
友達「もう、この状態で何すんの? たとえすごいいい女連れてたとしても、自分がこんな汚いおっさんじゃ、連れてても楽しくないんだよね。どうせ若くてかっこいいイケメンの方がいいんだろ?って自信も持てなくなってきちゃうしね。デート中もずっと頭がボーッとして、面白い一言も出てこないし」
しまるこ「それはニート生活が長くて、頭がぼーっとしてきちゃったのと違うの?」
友達「かもね。38でこれってことはさぁ、これからもっとひどくなってくるわけじゃん?」
しまるこ「うん」
友達「でしょ?」
しまるこ「まぁ、食生活を整えたり、精神的な波動で肉体を頭脳を一新させていくこともできるとは思うけど」
友達「ハゲは治らないでしょ」
しまるこ「わかんない、やってみれば治るかもよ?」
友達「何すんの?」
しまるこ「瞑想とか(笑)」
友達「(笑)」
友達「よくわからないけど、瞑想でハゲが治ったとしても、それも一つの落とし穴な気がするんだよなぁ」
しまるこ「どういうこと?」
友達「ハゲてめちゃくちゃになってきたら、不安とか残念とかいうより、ちょっと嬉しくなってきちゃったところがあるんだよね」
しまるこ「嬉しいの?」
友達「あー、やっと全部から解放されたっていう? あとはメチャクチャでいいんだなって。なんかすごい自由になった気がしたね。女も結婚するとこういう気分になるんかなぁ?」
しまるこ「さっきからずっと犯罪者のような匂いがして怖いんだけど(笑) 秋葉原でナイフ振り回さないでよ?(笑)」
友達「こういう視点で生きてると、本当にみんな人生を大事にしてるなーって思う。いいから全員死ねよって思うね。髪引きちぎりたくなってくる。本当に自分が可愛くて仕方ねーんだなって思う。まぁ気持ちもわかるんだけどね。俺も、前は可愛い女つれて御殿場のアウトレット歩いている時は優越感があったけど、いまは全然なくなった。だって俺がハゲてるんだもん。こんな状態でうまいもん食っても、何もおいしくないんだよね。おいしいって何? 38歳のハゲが、おいしいとか言ってどうなるの? 何か意味あるの? バカじゃねーの?って、いっつも自分につっこんでる。服買ってもぜんぜん嬉しくない。ハゲが5万の革ジャン着てなんなの?っていつも自分でつっこんでる」
しまるこ「美意識って大事なんだね。美がなくなると、人はそうなってしまうんだね」
友達「頭も働かなくなるよ。ちゃんとパリッとした格好してないと」
友達「あー、あとは式典にパジャマ着て参加するような人生だ」
しまるこ「金さん銀さんも、TVに出てた頃はボケなかったけど、人前に立たなくなってからボケたっていうからね。美容面が廃れてくると、何もかもがどうでもよくなってくるかもね」
友達「別にそんな話をしたいわけじゃないんだよ。誰も言わないだろうから、代わりに俺が言ってやるけど、誰もお前に期待なんかしてないぜ? お前なんてどうなったっていいって思ってるからね。お前がバッティングセンター行きまくって、バッティングが上手くなろうがマジでどうでもいいわ。みんな自分のことで精一杯だもん。どうせ俺もお前も今回の人生は失敗作だから、あとはもうメチャクチャでいいってこと。どいつもこいつも人生守っててムカついてくるんだよね」
しまるこ「人の人生もめちゃくちゃにすんなよ(笑)」
友達「地球上の男の髪を引き抜いて回りたいわ」
しまるこ「ボーボボの毛刈り隊じゃねーか(笑)」
しまるこ「マジで、そんなに悩んでるだったらカツラ被れば? 人生に影響出ちゃってるじゃん」
友達「それは考えたけど、カツラ被ったところで本当の自信までは回復できないんだよね。そうやってまた小さな自分を守る生活に戻るよりも、もういっそこっちに振り切ってやろうって気持ちが出てきちゃってるんだよね」
しまるこ「不幸中の大幸いか」
友達「人生に影響出ちゃってるじゃんっていうけど、その人生を守るためにおっかなびっくりして生きる自分をやめたいって話。まぁ、色々言ったけど、本当に、こんなのはくだらないものだと思う。人生なんて真剣に考えなければならない価値なんてないんだから、別に無理して全財産をドブに投げ捨てる必要はないけど、これはマジで言えることだから、だからメチャメチャにやりなよ。それが俺の言いたいこと。お前もハゲてくればわかるよ、これはハゲなきゃわかんないと思う。お前も髪薄くなってきてるし、老けてきてるけどね」
しまるこ「髪を失って神を手にしたか」
友達「……」
しまるこ「捨てる髪あれば拾う神あり」
友達「そういう上手いこと言おうとすんのやめてくんない? マジで殺したくなるから。ニート生活でマジで頭鈍ってるから、こっちは上手い言葉思いつかなくて、むかついてくるわけ。マジで殺したくなるからやめて」
しまるこ「ただの情緒不安定じゃねーか(笑)」
友達「頭にぶってる俺に合わせて話してくんない?」
しまるこ「俺よりちゃんとキレてる気がするけどなぁ(笑) お前が言ってることの方が正しいと思う。『あとは式典にパジャマ着て参加するような人生』とか、じゅうぶん上手いこと言えてると思うけど」
友達「褒められても殺したくなるわ」
しまるこ「っていうか俺もニートなんだけどね(笑)」
友達「頭ん中に屍肉が入ってる感じがしてボーッとしてて、上手く言語化できないんだけど、つまり、この状況になってわかったことがあるってこと。もっと若い頃から自爆テロみたいな精神で生きててよかったじゃんってこと。お前もハゲたらわかるよ。お前も老けてきてるけどね」
しまるこ「さっきから、ちょいちょい俺も落としてくるのが気になるけど(笑)励ましてるのか、一緒に谷底に引っ張り込もうとしてるのかわからん(笑)」
友達「卑屈で言ってるわけじゃないんだよ。その辺わかってくれてる?」
しまるこ「わかってるよ」
友達「めちゃくちゃにやりなよ。人生は深刻に考える必要はないってこと」