恋愛

結局人間は自分と似た人間じゃないと付き合えない

久々に出会い系の女と会った。二十歳の子だ。

空手を5年やっていて、週5でバイトをやって、母子家庭で、貧乏で、バイトで稼いだお金をぜんぶ家にいれているらしい。

現在は動物病院の専門学校に通っているらしいが、その学費も自分で捻出しているらしい。

なぜこんな子が出会い系をやるのかわからないが、やはり二十歳の女の子だから恋もしたくなるんだろう。

 

苦労人だけあってしっかりはしていた。

二十歳だというのに、臆さずちゃんと人と話せるし、自分から会話を持ち出してくれた。

よく街を案内してくれたし、毎日2時間犬の散歩をするので健脚で、長い散歩にも付き合ってくれた。

顔もかなり可愛かった。日焼けはしていたが、とても綺麗な肌をしていた。服装はダボダボの古いマウンテンパーカーを着ていてダサかったけど、それが逆に可愛く思えた。

食べず寝ずの生活をしているらしく、2、3日、平気で食べなかったり、寝ないで、仕事や勉強にはげんでいるらしい。

家でただダラダラしていることができないらしく、いつも働きづめらしい。

裕福でない環境もあるけれど、そこまでがんばれるのは本人の性格によるところが大きい。飲まず食わず寝ずで2日3日も働けるというのは尋常ではない。しかし、そんなに痩せているという感じではなかった。

だから夢遊病者の特有なちょっと虚ろな目をしていた。

飲まず食わずで働きまくる人はそういう目をしている。急にいつか倒れそうな目をしている。

よく食べる人間に活動的な人間もいるが、食べない人間の活動家の場合、キビキビ動くけど、源泉にあるパワーの種類が何か違うような気がする。空っぽの元気、空元気、最後のガソリンがなくなった状態でずっと動き回っている感じがあった。

 

しかし俺はこういうストイックな女の子は嫌いではない。

顔も可愛い。20歳なのにしっかりちゃんとエスコートしてくれたり会話もちゃんとできる。

俺は32歳なので本当は俺がお金出さなきゃいけないのに、「私が出しますよ」とか、わけのわからんことを言ったりもする。

 

別れる時も駅までついてきてくれた。当然か。

だがバイバイと言った後、すぐに背を向いて帰ってしまうあたりは、やっぱり子供だ。

いい大人だったら、俺が視界から消えるまでは、ずっと立って見送っているものだ。

ま、出会い系で100人に6人くらいだけどね。できるのは。

 

だが、どうもうまくいかなかった。

デート自体はそれなりに楽しかったし、いい時間を過ごせたような気がする。

だが、つまらなすぎた。真面目すぎてつまらない。普通のことしか言わない。

おはよう、いただきます、おいしい、ごちそうさま。

そんな会話をずっと羅列して話していたようなもんだ。

バイトをがんばっているとか勉強がどうだとか、そんな話をずっとしていて、俺に対する質問がなかった。

延々に自分の話をしていた。その辺もやはり子供だなと思った。

初対面の人と会って、自分の話ばかりする人間の神経が俺には理解ができない。

そして、よくもこんなにまあ、つまらない話を延々とできるなと思う。

「バイトをしていたらイケメンがいたけど、その人おかしなメガネをしてて、それを社員さんとこっそり厨房から見てました(笑)」

と言われても、「そうか」しか言えない。

じっさいに、「そうか」とだけ言った。

そんなものは、ビルの建物が大きいとそのまま俺に伝えているのと変わらない。

誰がいたとか、何が起きたとか、視覚的に見える表面的なことを、そのまま言うだけだ。その後の自分の気持ちや考察がない。そういった内部観察がないからつまらないのだ。そして、いつも忙しくしていて、静かな時間のなかで自分と対話することがないから、つまらないままなのだ。

 

これだけ働いたり苦労したり、お金をぜんぶ親に取り上げられたりして、一生懸命なのに、つまらなくなってしまうという不幸がある。

思えば、不真面目で、学校もろくに行かず、やることを逃げてきた人間の方がよっぽど面白かったりする。

紆余曲折を経て、人生のレールからガンガン外れまくって、恥の多い人生を送ってきた人間の方がよっぽど面白い人間が多い。

一生懸命、真面目に生きていると逆につまらなくなってしまうのか。

こんなに可愛くて、若くて、それなりに気遣いもできて、良い物件だなと思ったけど、だが、どうしてもこの子と付き合いたいとは思わなかった。

32歳の男が20歳の子と遊べただけで感謝しないといけないし、幸運なことなのに、なんでこんなに自分でも偉そうなのかがわからない。

32歳だったら、20歳の女の子を楽しませられるようにがんばれよ、と、いま家に帰ってきてもそう思うが、また同じことをしでかしてしまいそうだ。

 

人間は似た者同士でつるむ。

親友なんてものは自分と瓜二つの人間が一緒にいるようなもんだ。

親友も恋愛も結婚も似たようなもんだろう。

本当に本当に近い人間だけが結びつくようになっている。

俺は自分と近い人間に出会ったことがない。親友で、一人いるだけだ。

わかりあえたかとか、わかりあえないとか、そんなことを基準にして、未だに結婚に対して足踏みをしている。

このわかりあえないつらさから、付き合えない。

モテるやつは、わかりあえたか、わかりあえないとか、そんなこと気にせず、ただ口説いて、ただ付き合うんだろう。意味とか考えないんだろう。

32歳になって、まだこんなことをやっている。

 

ミスチルの桜井さんは、「僕らは似てるのかな、それとも似てきたのかな」という歌詞を書いているだけあって、自分と似た人間と出会えたから恋愛関係に発展した。

あの天才の奇人ですら、自分と瓜二つの人間を見つけた、その人じゃなきゃダメだった。

どれだけ若くて可愛い子でも、自分と似た人間でないと結局は付き合えないのだ。

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