エロゲーをやっていてせせら笑ってしまうのが、主人公がヒーロー気質だということだ。
エロゲー主人公の下にはたくさんの美少女が集まってきて選びたい放題なのだが、なぜかみんな主人公が好きで、初めて会ったときから、主人公に対して特別な運命的な波長を感じる。
エロゲーにおいて、だんだんなんとなく好きになるということは許されない。そこに運命がなければならない。
ずいぶん都合のいいように展開が進んでいく。
主人公は完全に天才型で、いつもダラダラしていて、頭をポリポリ掻いているけど、肝心な時になると自分でもよく知らないパワーでなんでも簡単に解決してしまう。
それはエロゲーに限らずに少年ジャンプでもよくみられる。
読者が主人公に自己投影して、自分が潜在能力に富んでいて、周りのクラスメイトがいくら努力しても届かない力を発揮したいという、普段、陰日向で生きている人間の夢物語を叶えるためである。
周りの人間は、その女の子の境遇を全くどうにもできないけど、主人公(自分)だけは持って生まれた不思議な能力で大体解決してしまう。
女同士で喧嘩したりイザコザがあっても、主人公が腕を組んで最終的にポツンと一言いうだけで事件は解決する。
担任の女教師からは、実力を隠してる隠密タイプだと一目置かれていて、その見立てを「気のせいっすよ」と軽く流す。クラスメイトの友人に頭が良くてカッコよくてなんでもできる奴がいるけど、最後の最後の大きな扉を開けるのはだいたい主人公だけだ。
つまり何が言いたいかと言うと、
エロゲーは、たくさんの美少女に囲まれて Happy というわけではだめなのだ。
主人公の問題解決能力が高くて、学園の難解事件をスマートに解決して、それを女の子に感心してもらいたいのだ。
自分のかっこいいところを見てもらいたい。
誰も真似できない本当の自分の良さというものに気付いてほしい。
というプレイヤーが普段の日常の中でいつも抱えている思いに応えなくてはならないのだ。
プレイヤー達が女の子にモテたり、ヤリまくれることだけではなく、男として尊敬してもらいたいのだ。
面倒臭がって頭をポリポリしながらも、潜在能力で解決しまう男にエロゲーユーザーは憧れているのだ。
そういう主人公に自分を投影して陶酔したいのだ。
男はただモテるだけや、ヤリまくれるだけじゃ物足りないのだ、問題解決がしたいのだ。
ソフマップで、エロゲを買いに来るボテボテ腹のヒキガエル達は、全員こんなことを考えている。
亜里沙の飼い犬がどっかに逃げてしまって、みんなが3時間も4時間も探し回って、もう諦めようという流れになったとき、偶然現れた主人公(自分)が「亜里沙のネックレスの匂いを辿って灯台に向かったんじゃ……?」とポツリと言いたいのだ。
そんなことを夢見てソフマップでパッケージを手に取っているのだ。
エロゲーに限らずラノベだろうが萌え漫画だろうが全部そうだ。
男は女に潜在能力を認めてもらいたがっている。