みかこ「今流しでおしっこした?」
しまるこ「してないよ」
みかこ「嘘。見えてたもん」
しまるこ「……」
みかこ「いつも流しでおしっこしてるの?」
しまるこ「いつもじゃないよ」
みかこ「嘘! すごい慣れてる感じだった! いつもやってるよ絶対!」
しまるこ「やってないって」
みかこ「じゃあなんであんなに自然だったの? 猿がおしっこしてるくらい自然だった」
しまるこ「……」
みかこ「ねぇ、何で流しでおしっこするの?」
しまるこ「ちょうど、ちんこの高さと台所の高さが合ってるんだよ。トイレの便器って低いじゃん?」
みかこ「でも、ごはん作るところだよ?」
しまるこ「知ってる」
みかこ「汚いよ」
しまるこ「ちゃんと水で流すから綺麗だよ」
みかこ「そういうことじゃない!」
しまるこ「じゃあどういうこと?」
みかこ「私は嫌……!」
しまるこ「つーか、俺の家だろ。俺の勝手じゃん」
みかこ「わたし帰る!」
しまるこ「なんで帰んの?」
みかこ「気持ち悪い……!」
しまるこ「みかこの気持ちはわかるよ。なんとなくイメージが悪いんだろ?」
しまるこ「でも男はみんなやってるよ? ちょうどいい高さにちんこ生えてるからな。みかこの元彼もやってたけど言わなかっただけだよ」
みかこ「え……」
しまるこ「みかこのお父さんも家族が寝静まった後やってる。安倍首相だってやってる」
しまるこ「女だってシャワー浴びながらおしっこするときあるだろ? あれと同じだよ」
みかこ「私はしない」
しまるこ「西川史子はするらしいよ。どうせシャワーで床流すんだから一石二鳥だって言ってた。後でトイレ行く方が面倒くさいじゃん? おしっこの汚れをシャワーの水圧で掃除できないと思ってる? 風呂だろうがトイレだろうが台所だろうが、ちゃんと水流せば同じ未来が待ってるだけだよ。勝間和代もやってると思う。高学歴ほどやるんだ」
みかこ「もういい。聞きたくない」
しまるこ「水道代の節約にもなるぜ。トイレで流すと1リットル以上流れて、1回2、3円かかるらしいぜ。おしっこのたびに大便用のレバーで流す奴もいるからな、俺はそっちの方が恐ろしいぜ」
みかこ「こめん私無理かも」
しまるこ「無理って何が?」
みかこ「付き合っていくの」
しまるこ「(笑)」
しまるこ「まさか、すげーな。イメージの問題ってすげーな。一年半付き合って、これでおしまいか。あれほどフェラとかイマラチオしといて、流しにおしっこはダメなんだ? お前、俺の洗ってないちんこ舐めてたよな? お前、直接ちんこ菌しゃぶりついてるんだぜ? なんで親元はしゃぶるくせに、そこから飛び出た方は嫌がるんだか」
しまるこ「ラスボス倒しといてゴブリンには負けるのか」
みかこ「……」
しまるこ「ハハ! こんなことで俺たちの一年半もおしっこみたいに流れちまうんだな! 笑えてくるな!」
みかこ「……」
しまるこ「なんだったんだろうなぁ、あれもこれも全部。一緒に夜景見に行ったり、キャッチボールしたり、やりたいことやりたくないこと、いろんなこと話し合って、通じ合った気して、あれ全部何だったんだろうな? どれもこれも、おしっこしている俺と同一人物なんだぜ? 流れるのはおしっこだけで十分だろ? みかこ」
しまるこ「何泣いてんだよ」
みかこ「もういい」
しまるこ「何がいいんだよ」
みかこ「……」
しまるこ「ッチ。まさかこんな形で終わるとは思わなかった。なんでダメなの? 誰にも迷惑かけてないし、水流せば汚くないし、節約になるし、みんなやってるし、お前の友達だってシャワー浴びながらおしっこしてるけど言わないだけだぜ? お前のスマホの方がよっぽど菌が多いぜ? 自分の性器が陥没してて届かないからって僻んでんじゃねーよ」
しまるこ「結婚したら、タンス買うためにカインズホームに行ったり、死人みたいな顔で廊下ですれ違ったり、小市民の汚い生活を見せ合うことになるんだ。世の中綺麗事ばかり言ってられないんだ。大人になれ、みかこ」
みかこ「…………」
しまるこ「別にうんこしたわけじゃあるまいし。流しにうんこはさすがに俺も引くけどな」
みかこ「…………」
しまるこ「もう何も考えるな。水道代のように思考を無駄遣いするな」