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10年ぶりに、55歳の生活保護の安田さんから電話がかかってきて、会いたいと言われた。【後半】

投稿日:2021-03-31 更新日:

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10年ぶりに、55歳の生活保護の安田さんから電話がかかってきて、会いたいと言われた。【前半】

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その後、小生はすぐに、池上さんにLINEをした。

すると送った瞬間に電話がかかってきた。

池上「完全にネズミ講。ぜったい行っちゃダメだよ」

10年ぶりに切り出された言葉がこれだった。

しまるこ「はや! 早すぎませんか! 電話早すぎて笑いました(笑)」

池上「完全に宗教の勧誘だから」

しまるこ「まじかぁ! 信じてたのになぁ!」

池上「10年ぶりにやられると、つらいものがあるよね(笑)いや、俺もさぁ、すごい人肌恋しいのかな困ってんのかなーと思ってさぁ。もしかしたら宗教の勧誘かなとは思ってたけど、行ってみなきゃわかんないじゃん? ガストで待ち合わせしたんだけど、行ったら、安田さんの隣に60歳くらいのおばさんだかおばあちゃんだかわかんない人が立ってんだもん。そこで察したわ」

しまるこ「なんですかそのおばあちゃん」

池上「わかんない。班長らしいんだけど」

しまるこ「班長?」

しまるこ「安田さんがそのおばあちゃんのこと、ずっと班長って呼んでんの(笑)ガストに着いたら、『まずはこの動画を見てください』ってタブレット渡されて、変な動画見せられて、『会長』とかいわれている変なジジイが話してる動画見せられたのね。んで、シークバーの隣の時間見たら、『2:04:44』て表示されてて、は!? マジで!? 2時間!? ここで2時間見せられんの!? って思って」

しまるこ「2時間見たんですか!?」

池上「見ないよ(笑)3分ぐらい見て、『すいません、あの、すごくいい動画なのかもしれないんですけど、こうしてお二人にがっつり見られている状態だと動画の内容が頭に入ってこないんで、せっかく見せてもらっても、ちゃんとした感想伝えられそうにないんで』っていって断ったよ」

しまるこ「動画はどんな内容だったんですか?」

池上「最初の3分ぐらいのところまでだけど、宇宙の創世の話から始まって、ビッグバンがどうのこうのって言ってて、でも本当はビッグバンから宇宙は生まれたのではありません。本当に宇宙が作られた経緯は、神様の意思であって〜、この世界は神様の意志なのです〜って感じ」

しまるこ「長そうですね」

池上「すいません。俺宗教とかそういうのは絶対に入らないって決めてるんで、一応こうして10年ぶりに会った縁もありますから、話だけは聞きますけど、話だけですよ。絶対に入らないってことは、最初に言っておきますって言ったんだよ」

しまるこ「はい」

池上「まぁ、それでも向こうは諦めてくれなくて、3時間ぐらいずっと話されて、俺も我慢して聞いてたよ。なんか創価学会と同じルーツらしいのね。創価ではないらしいんだけど、途中で分派したのかよくわからないけど、共産党の思想を汲んでいるらしい。新興宗教らしいんだけどね。安田さんはほとんど会話がままならない感じで、話してる最中も途中で止まっちゃうんだよ。あれはたぶん薬の影響だと思う。だから代わりに班長のおばさんがずっと話してたよ(笑)」

しまるこ「じゃあ安田さんに会いに行ったというよりも班長に会いに行った感じですか?(笑)」

池上「そう。班長に会いに行った(笑)何が楽しくて60のババアに休日に会いに行かなきゃならねーんだよ! こっちは昨日も明日も仕事で、連勤中でやっと訪れた休みだってのに!」

しまるこ「(笑)」

池上「安田さんがさぁ、おばあちゃんに向かって班長っていう度にすげえ面白くて。班長ってカイジの班長しかないじゃんね? 完全にチンチロリンの班長が出てきて、安田さんが班長っていう度に吹き出しそうになるの抑えるのに必死だったわ(笑)」

しまるこ「(笑)班長ってすごいんですかね? なんかあまり格式が高そうな肩書きに聞こえませんけど。その人60歳くらいなんですよね? 60で班長だったら、先が思いやられませんか? どんだけ上を目指すの大変な組織なんだ? って感じになりません?(笑) 60だったら、エグゼクティブプロデューサーとかその辺のレベルにいてほしいですよね。もうその時点で、人に夢を与えることに失敗しているような気がしますが」

池上「まあ、それでも二人ともすごく幸せだと感じているようで、『この宗教に入ったおかげで救われた』『絶望の縁にいたけど立ち直ることができた』ってずっと連呼してるんだよ。本人達が幸せならそれでいいと思うけど」

しまるこ「じゃあ俺と電話したとき無言だったのは、薬の影響だったんですね。めちゃくちゃ精神が病んでるかと思って心配しちゃいましたよ」

池上「あれは完全に薬の副作用だね。本当に止まっちゃうんだよ。俺も今、精神科に務めてるから、そういう人たくさん見てるから、同じ症状だね」

しまるこ「いま精神科で介護士やってるんですか?」

池上「そうそう。やばいよ精神科は。友達が紹介してくれて入ったんだけど、その友達も辞めちゃってね。友達がいたから入ったのに、なんで辞めんだよーー! って感じでね。くっそ遠くて片道1時間半かかるし、患者は一晩中歌うたってるし、この前もさぁ、うんこを顔に塗りつけて遊んでるんだよ。ヤバイヤバイ抑えろ! ってなって、その時はちょうど深夜で、俺ともう1人の同僚しかいなくて、二人で取り押さえて、俺は後ろから羽織い絞めしたんだけど、暴れるから、めっちゃ顔にうんこが飛んでくんの(笑) すごい力仕事だよ。向こうも本気で暴れるから、こっちも全力で抑えなきゃなんない。普通に怪我するからね」

しまるこ「よく辞めないっすね」

池上「俺ももう39だから、次はもっと落ち着いたところにする予定。でもさぁ! やっぱりヘルパー教室のころ楽しかったねー! あの頃に戻りたいよね。二人でW不倫してさ(笑)俺ももう枯れたよ。あんな体力ない(笑)ハゲたし、女の子見ても自分から引いちゃうもん。欲がもうなくなっちゃった。本当にすっかり枯れ果てて、なんもやる気起こんない(笑)」

しまるこ「そうですか、あの池上さんが」

池上「いやー! 10年ぶりだと話がつきないねー! しまるこ君、今一人暮らしなんでしょ? 今からしまるこくんち行ってもいい?」

しまるこ「今からですか??」

時計を見たら、夜の23時半だった。

しまるこ「今、23時半ですけど? 池上さん、明日仕事なんですよね? 明日何時から仕事ですか?」

池上「普通に6時45からだよ」

しまるこ「6時45分!? 今から俺のところまでくるだけでも1時間半ぐらいかかりますよね!?」

信じられない。これが39歳の人間のパワーであろううか。

池上「大丈夫大丈夫、すぐ帰るから」

しまるこ「俺は明日も明後日も休みだからいいんですけど」

池上「じゃあ今から行くよ! 近くまでいったら電話するから、また詳しい場所教えて!」

しまるこ「……」

ぜんぜん枯れてねーじゃねーか。信じられない。人のもともと持ってる人間のパワーみたいのが違うのだと思った。世の中には本当に変わり者がいる。俺もよく変わり者だと言われるけれど、池上さんのこのケースも極めて凄まじい変わり者だろう。

池上さんは、社会の底辺を這いつくばってきた人で、その上を何度も街ゆく人に踏みつぶされて、生きてきた人だ。

簡単に来歴を説明すると、高校時代は競輪部に所属していて、競輪の選手になることを夢見てがんばっていたが、挫折して、その後はホストになって水商売の業界を転々として、それからは地元のヤクザのグループとつるんで悪いことばかりしていた。

当たり屋だったり、マルチ商法やねずみ講だったり、ヤクザの車の運転手だったり、そんなことばかりやってきて、ある日、自分がマルチ商法をやっているにも関わらず、自分の方がマルチ商法にひっかかってしまって、借金を400万円作ってしまった。それも一緒にいたヤクザグループの仕組んだ罠だったらしく、ヤクザグループに金を返す日々が始まったという。ヤクザ達は池上さんの経済状態をしっていて、池上さんに返せるはずの額ではないことを知っていながらも、毎日のように池上さんの家にやってきては、脅し続けたという。

池上さんのお母さんにまで脅す卑劣ぶりで、悪質な金利をふっかけてきて、金利さえ返し続けさえすれば、お前とお前の家族は襲わないと約束し、ひたすらヤクザグループに対してお金を返し続ける日々を送っていた。

しかし、それでもなかなか金を返し終えられなかった池上さんは、当たり屋をやった。当たり屋というのも、流行りのスポットというものがあるらしく、飲酒運転が行われやすい場所を狙うらしい。

飲酒運転をしている人間に狙いを定めてぶつかれば、その人はどうしても警察にしょっぴかれたくないから、間違いなく示談金を払うという。池上さんは毎晩、得意の自転車でぶつかりに行き、ちょうど車が駐車場から道路に差し掛かるタイミングを狙って体当たりしていたらしい。1回あたり30万円をふっかけていたそうである。

池上さんは何度もそのときの自分を悔やんでいて、「今俺がこうして精神病棟の患者にうんこ投げつけられたり、仕事が辛くて辛くて人生が辛くて辛くてしょうがないのはそのとき行った悪行が返ってきてるんだと思う」といった。「まぁ、そのおかげで警察にしょっぴかれる前に飲酒運転をしなくなったかもわかりませんよ」と言ったら、ハハと笑った。

借金は400万から200万へと減ったが、当たり屋をやるのもつらくなってきてしまったという。自分も怖いし、相手が怖い人だったり、あるいはちゃんとしたシラフの人間だったら、逆に警察にしょっぴかれる可能性もある。池上さんはとにかくヤクザ達の顔を見るのが嫌で、また実家にいるのも家族に迷惑がかかるという理由から、期間工になることを決意した。

ヤクザグループは金さえ払えば何もしてこないので、東北の離れた土地で、期間工をやりながら金を返し続ける日々を送ったという。

期間工から帰ってヤクザグループのお金を返したけれども、その後はまた別の地元の工場で働きながら、今度は自分のためにひたすらお金を使った。

そうやって残りの200万を返し終えたけれども、今度は池上さん自身が消費者金融に借金をして、風俗とパチンコにはまってしまった。そしてすぐにまた借金を100万作ってしまった。

一度400万の借金を作ると、100万程度の借金はどうということはないらしい。消費者金融だから、ヤクザのような悪質な金利でもないという。そんな感じで、ゆっくりちょこちょこ借金を返す生活をしていた

小生と出会ったのはその頃だった。もういい加減、真っ当な仕事をして落ち着こう。介護士だったら、人手不足だし、医療費という国の税金から給料が支払われるということから、公務員みたいなものだ。親も安心するだろう。いい加減、腰を下ろしてしっかりしよう、そう思って、ハローワークが主催するヘルパー二級の職業訓練校にやってきたのである。池上さんは29歳だった。

しまるこ「出会い系の女以外で、この部屋に上がった人間は、池上さんが初めてですよ」

池上「それは光栄だね」

池上「やっぱり歳とったね」

しまるこ「(笑)定期的に会う人にはあんまりわかんないみたいだけど、10年ぶりに会う人から見たら一目瞭然なんでしょうね」

池上「まぁ、しょうがないでしょ」

しまるこ「一生20代に見える見た目を維持してやろうと思ってるんですけど、もうすでに無理そうですかね?」

池上「20代はキツイかもね。昔みたいなピチピチ感はなくなったね」

池上「しまるこ君ってさぁ、昔からそうだったけど、何している人かぜんぜんわかんないね。サラリーマンって感じでもないし、でもフリーターやニートかっていうと、それもまた少し違う感じがするし、うーん、なんだろう。YouTubeの広告で、うるさい男でてくるじゃん? 『YouTubeは稼げますか? はい! 稼げます!!』とかいって、動画の途中に出てくる飛ばせなくてうるさいヤツ。あれに出てくる男とちょっと似てるかもしれない」

しまるこ「俺、うるさくしてないじゃないですか(笑)」

池上「なんだろう。雰囲気がなんか似てる。うるさくしてないんだけど、内に秘めてるものが同じ臭いがするっていうか。あいつらも広告に出てくるとき以外は、しまるこくんみたいに大人しくしてそうだし」

しまるこ「ヒカルとかラファエルみたいな感じですか?」

池上「いや、そっちじゃなくて、広告に出てくる方(笑)」

しまるこ「10年ぶりに会った人間にめちゃくちゃいいますね(笑)」

池上「変人っちゃあ変人かもしれないけど、そこまで変人っぽくないところが逆に変人っぽいかもしれない。結婚はしてなさそうに見えるかも?」

しまるこ「まぁ、それはよくいわれます(笑)」

池上「いつも何食べてるの?」

しまるこ「玄米食べてるだけですね」

池上「これしか食べてないの?? 食費どれくらい?」

しまるこ「1500円くらいかな」

池上「どうゆこと!?」

しまるこ「この暮らしができるかどうかは食欲にかかってるんですよ。食欲がすべての欲の導火線になってるんです。食事を我慢できれば他のどんな欲も我慢できると水野南北も言ってます。そんなに大きい家にも住みたいと思わなくなるから、家賃だってかからなくなりますよ。この暮らしやってて思ったんですけど、食費以外は本当に金使わないんですよ。だから逆に食べるのが大好きって人はちょっと厳しいでしょうね」

池上「ほんとに玄米しか食べてないの!?」

しまるこ「はい」

池上「すごいねー。生活費が6万って言ってたっけ? その内訳はどうなってんの?」

しまるこ「食費が1500円ぐらい。家賃が3万。ネット代と携帯代は無料。電気代150円。水道代は1500円。ガス代0円。Kindle Unlimitedが1000円。ドトール代が5000円。ガソリン代が5000円。その他色々あって結局5万から6万円ぐらいじゃないですかね」

池上「ネット代は何で無料なの?」

しまるこ「ネット代は楽天モバイルで1年間無料なんですよ。楽天モバイルをポケットWiFi代わりにしてるから、ネットも電話も無料です。1年間だけですけど。1年過ぎたら、使った分だけ使用料がかかります。1GBまでは無料で、いくら使っても上限は2980円です。通話料もかかりません」

池上「すっげえな、へー。俺いつも8000円払ってるわ」

しまるこ「今すぐ楽天モバイルにしたほうがいいですね。池上さんの住んでいるエリアは楽天の高速回線が使えます。1年間無料だし、1年過ぎた後でもそんなに使わなければ無料で使い続けられますよ。家に光回線が通っているなら、そっちでYouTube見るわけでしょ? そしたら多分スマホの使用は1 GB未満に収まるだろうから、その後もずっと無料ですよ」

池上「これから無料!? 今すぐ楽天モバイルにするわ(笑)  解約金かかるけど、これから無料なら大したことないね!」

しまるこ「はい」

池上「年金とか保険とか住民税とかは?」

しまるこ「年金は全額免除。保険は2万円ぐらい払いましたね(1年分)。住民税は0円でした。稼いだ分が少ないと、こういった費用はほとんど見過ごしてくれるんですね。といっても年金は支払いを先送りしてるだけで、あとでちゃんと払わなきゃいけないんですが」

池上「でも、後でちゃんと払えば、今払わなかった期間は見逃してくれんでしょ?」

しまるこ「はい」

池上「いやぁ! ほんとーに! この10年は、ずーっと借金返済してたね! ほとんどパチンコと風俗と作った借金(笑)ヤクザから金を借りることはなくなったけど、パチンコと風俗行きまくったせいで、借金がまた200万円ぐらいに膨らんじゃってね(笑)。消費者金融3つと友達と、色んなところに返してばっかりいたわ。俺の給料が手取りで17万なんだけど、12万は借金返済に消えてくの(笑)マジでおかしくなってくるよ、そんな生活してると。でも、どうしても風俗がやめられなくてね。やめられないっていうより、もうそれだけが楽しみだったから、それだけは自分から続けてたんだけど。お気に入りの嬢がいたんだけどね、その子とは月に1回90分コースをやるって決めてたの(笑)。それが2万かかるんだよ。あと俺タバコ1日に二箱吸うから、それでタバコ代が月に3万円でね。だから借金返済に12万使ったら、残りの5万は風俗とタバコで終わり。給料日になると、真っ先に嬢に逢いに行くんだわ(笑)今はもうその子もいないし、風俗に行く欲も失せちゃったけどね。本当に頭おかしくなるんだよ。17万稼いで、そのうち12万が借金返済に消えていっちゃうとね。しかもほとんど金利なの(笑)金利を返し続けるために、ずっと働いてた感じ(笑)本当に頭おかしくなるよ、そんな生活をずっと10年ぐらい続けてた」

しまるこ「月に12万返していれば、数年で返済し終わりそうですが」

池上「(笑)たまに風俗2回も3回も行ったりして、パチンコいったり友達と麻雀やったりしてたからね。たまにすげー金必要になるときあって、また別の消費者金融に借りたりしてたんだわ(笑)消費者金融って一つの所だと借りれる額に限度があるからさ。もうどこに返してるかよくわかんなかったわ。あっちに返してこっちに返してって」

しまるこ「なるほど」

池上「一度気合い入れて、さあ返そう! と思えば返せるのかもしれないけど、それができたら、こんなに借金してないからね(笑) そこまでの踏ん切りがつかなくて、結局増えたり減ったりの繰り返しで、それでもだんだんだんだん減ってきて、数年前に母親がさ、大腸癌で亡くなったんだよ。そのときぐらいからかな? パチンコも風俗も行く気もしなくなって。マジで本気で返そうと思って。母親の治療費なんかも結構金がかかってね。うちの親父も金がなくて、今でも新聞配達やってるからさ。若い頃は経営者だったけど、会社倒産させちゃってね。国民年金すらもらってないの(笑)だから今も70になるけど新聞配達やってる」

池上「そんなこんなで、やっと今、本当に借金がゼロになったよ。こんなのもう20年ぶりだよ!」

しまるこ「やりましたねぇ」

池上「マジで気持ちいいね! 本当に働いて働いて働きまくった。やっぱり安田さんの宗教じゃ人は救われないね、結局金だと思う。金がすべてだとは思わないけど、金がなきゃなんにもできないもん」

しまるこ「金は最高条件ではないけど、最低条件だと思います。俺の暮らしだって、けっきょく金がなきゃできないんです」

池上「別にそんなにすごい金持ちにならなくてもいいけど、本当に最低限の金があって、それなりにゆっくりできれば、それが一番いいと思うねー。だから、しまるこ君くんみたいな暮らしが一番いいかもしれないね。いいなー、俺もやりたいかなぁ」

しまるこ「どうですかねー。今まで20年間、週5とかで働いてきた人間が急に週休6日になると、何をしていいかわかんなくなっちゃうかもしれませんね」

池上「俺は特にやりたいこともないんだよなぁ。ただ、休みたいだけ(笑)」

しまるこ「まあ、俺みたいに週一にしなくてもいいと思いますよ。週5から週4に変わるだけでも全然違うと思いますし。週3にしたら世界が変わりますよ。週3だけ働いて残りの4日は休むって形なら、全然いけるんじゃないですか? 借金もないわけですから」

池上「そうだね、確かにそうかもしれないねー。今でもやろうと思えばできるかも? 俺は週2か週3がベストだと思うね。週1はちょっと暇すぎちゃうかもしれない(笑)実はね、YouTuberとかやってみようと思ったけど、こんな40の男が何か発信したところで誰も見ないしね」

しまるこ「YouTubeは何見てるんですか?」

池上「ずっと競輪の動画だよ。ほら、俺、競輪選手目指してたから」

しまるこ「じゃあ、そういう競輪選手の解説動画とか、まとめた動画みたいなの作ってみるとかいいんじゃないですか?」

池上「それがねー、しまるこ君。めちゃくちゃいるんだよ。すっげえ編集バッチリやってクオリティ高い動画出してまくってる先行者たちがね。俺が参入してもすぐ弾かれると思う」

しまるこ「なるほど」

池上「今こうして思うことは、金も女も要らないけど、競輪選手になりたかったなぁって思うね。それだけが俺の人生において唯一の後悔というか、本当にそれだけ。まあ、たぶん頑張ってもなれなかったとは思うんだけど、高校卒業して1年くらいで辞めちゃったから、たとえなれなかったとしても、もっと本気でチャレンジしていれば、こんな風な後悔は残んなかったと思うんだよ。本当に後悔はそれだけだよ。もう一回高校時代からやり直したいとはべつに思わないけど、もし戻れたら、それだけをやりたいね」

しまるこ「そうですか」

池上「今もよく競輪見に行くんだけどさぁ。見てると涙でできちゃうんだよね。結局さぁ、パチンコとか風俗とか麻雀とか、本当にくだらないんだよ。自分の夢に向かってどれだけやったか、それだけが残るような気がする。別に成功しなかったとしてもね。今じゃスーパーまで漕ぐだけでハァハァになって、高校生にも追い抜かされてる(笑)」

しまるこ「……」

池上「あのとき、どうしてもっと漕がなかったのかったね。プロになれなかったとしても、もっと本気でチャレンジしていれば、こんな風に後悔は残んなかったと思う。本当にこれだけだよ」

しまるこ「これからは何かやりたいとかないですか?」

池上「何だろうねー。まったくないなぁ。俺はどうしたいかなぁ。休みたいわぁ。しまるこくんみたいな生活送りたいわぁ」

しまるこ「ははは(笑)」

池上「50万円ぐらい貯金が貯まったら、俺もしまるこ暮らしやってみるかなぁ」

しまるこ「いいじゃないですか」

池上「そういうのさ、ホリエモンとかひろゆきがよくYouTubeで言ったりしてるけど、身近で実践してる人は初めて見たわ! 月6万稼いで6万円以内に暮らしてるとか、まじですごくない? 下手に年収1,00万越えないほうがいいっていうもんね。俺はちょっと6万円以内には収まんない気がするけど。まぁ家賃次第かもね。でも、俺も本当に金使わないからなぁ」

しまるこ「実家暮らしだったらいけるんじゃないですか?」

池上「さすがに実家暮らしでその暮らしはきついでしょー。やるとしたら俺もマンション借りるけど、しまるこくんのこのマンションいいね! 俺もここに引っ越してこようかな?(笑)」

しまるこ「いいと思いますよ」

池上「やばい! ほんとにやりたくなってきた! めっちゃワクワクしてきた!」

しまるこ「ただ、みんなが働く理由っていうのは多くの場合、時間の浪費を恐れるからだと思うんですよ。たくさんの休みを与えられたとしても、そんなに一日中ずっとYouTube見てダラダラしていられるほど、精神が強くないんですよ。その時間は1円も生み出すわけじゃないじゃないですか。そのあいだ、みんな、友達だったり、家族だったり、親戚だったり、みんなちゃんと働いてると、自分はいったい何やってるんだろう? って思ってきちゃうんですよね。もしこの時間をちゃんと働いていれば、確実にちゃんと金に換金されていきますから。人間はやっぱり不毛な時間を過ごし続けることは、なかなか耐えられないんですね」

池上「でもそれは、これから結婚しようとしてたり、もう結婚しちゃってたり、家や車のローンがあったり、お金が必要な人に当てはまることじゃない? ほら、俺とかはさ、もうこの通り40の独身だから、俺と結婚したいなんて酔狂な女はいないし、俺自身も別に結婚したくないし、結婚したって不幸な人間を生むだけだからね(笑) 俺食欲もないし、まぁしまるこ君みたいに玄米しか食べないってわけじゃないけど、あんまり食べないし、風俗も行かないし、パチンコもやらなくなった。マジで金使わなくなったんだよ。だからさ、みんなみたいにガツガツ働く必要はないと思うんだよね、俺の場合は。さすがに週1で働くってわけにはいかないけど、週3くらいならやれる気がするんだよね。でも貯金がないとね。だから貯金を50万円ぐらいためてからやろうかなぁ? 何かあったらアレだし、辞めた後も健康保険の金とかも払わなきゃいけないっしょ? だから50万円ぐらいは欲しいよね? そこから週3で働こうかなぁ? ヤバかったら週4に増やしてもいいわけだし?」

しまるこ「いいと思いますよ。池上さんは介護福祉士の資格も持ってるし、この10年間ずっと介護士として働いてきてるんだから、経験もあるから、別にいつでも復帰できると思います。復帰しようと思えば、正社員として雇ってもらえるところはあると思います」

池上「いや俺めっちゃくはワクワクしてきたわー! 10年ぶりにしまるこ君と会ってよかったぁ! そっか、その手があったかー! 別に無理してガツガツ働かなくてもいいんだよなぁ! この抜け道があったか! いやこんな単純なことだったけど、もうずっと気づかなかったわ! まじですげえなしまるこくん! 安田さんと大違い! 安田さんよりずっと洗脳力あるよ! 班長だよ班長!」

しまるこ「班長はやめてくださいよ(笑)」

池上「いよっ! 班長ーーーーーー!」

しまるこ「隣、寝てますから(笑)」

池上「ごみんごみん(笑)」

しまるこ「池上さんに班長って言われると、地下工事現場の班長になった気分になりますから(笑) で、えーと、俺はある程度の貯金を蓄えてからこの生活を始めましたし、正社員時代じゃないとマンションも契約できなかったりするし、そういうところを考えた上で1年ぐらい準備しましたよ。辞めるときも恐る恐るでしたよ。今思えば、もっと早くやればよかったとは思いますけどね。でも、今のうちに節約生活に慣れたり、正社員じゃないとできないことをやったり、貯金だって本当に50万円貯められるかどうか難しいところですから、まずは今の仕事をしながら本当に節約生活できたら、やってみてもいいかもしれません。例えば月8万円以内で暮らそうと思うんであれば、本当に8万円以内で暮らせるのかっていうシミュレーションのようなものをはじめてみてはどうでしょう」

池上「そうだね。うん、まずはそうするよ。いやーでもさ、本当に正直死のうと思う日もあったんだよ。仕事中とか、夜とか、たまにふと死にたくなるときがあってさ、夜遅くに車出して、気づいたら横浜まで走ってて。そのまま朝までずっと車の中でうずくまってたりね(笑)一体いつまでこの生活続けんのかなーとか、毎日本当に地獄だなぁと思ってたんだけど、明日も死ぬほど仕事行きたくないんだけど。こういう抜け道があるのか! と思えただけでも感謝だわ。この生活がずっと定年まで続くとマジで思ってたからね。そっか、いざとなったらしまるこ暮らしすればいいのか。そう思えるだけで本当に気が楽になったわ。今すぐは無理かもしんないけど、俺たぶんやると思う。マジでこのマンション引っ越してくるかもしれないよ?」

しまるこ「めっちゃ燃えてますね(笑)みんな確かに俺の話聞くと羨ましいって、すごい羨ましがるんですけど、でも絶対みんなやんないんですよ。そいつらだって、別に結婚する予定もないし、貯金だってそれなりにあるし、資格もあるから、この暮らしをやったとしても、すぐに社会復帰なんてできるんですけど、でもやっぱりやらないんですよ。さっきいった通り、ただ時間が過ぎていくことに耐えられないと思うんですよ。休みだーー! っていったって、2ヶ月もすれば、YouTubeだってつまんなくなりますよ。ちゃんと働いてれば楽しいかもしれないけど、働かないで見るYouTubeは辛いですよ。この時間なんだろうって、人間は正しく時間を使いたいっていうプログラムが植え付けられているようですね。それが想像できちゃうんですよ。そんな風に過ごしている自分が想像できちゃうから、やっぱりやらないんだと思います。やりたいことがあればいいんですがね。ちゃんと時間を使えないほど苦しいことはないんだと思います。2億とかあったら話は別かもしれませんがね」

本当のことを言えば、こんな風に多動性で、深夜に急に友達に会いにやってくるような男は、そして何百万も借金を作ってしまうような金の管理のできない男は、こういう暮らしは向いてないと思った。池上さんは結局すぐに働きたくなってしまうように思う。まぁそれでもいい。そしたら、その気持ちの分だけ働けばいいだけだ。

それから、池上さんは朝の5時までずっと話していた。会社に間に合うかどうかという、ギリギリの時間まで、目いっぱい話していた。安田さんのこと、お母さんのこと、仕事の愚痴、これまでの10年間のこと、競輪のこと、とにかく喋り続けていた。小生は聞き役に徹していた。ほとんど相づちだけを打っているに過ぎなかったが、「本当に楽しかった! 久々にこんなに楽しく話した!」「またくるよ!!」と、何度も何度も連呼して帰っていった。

小生は「今日はありがとうございます。楽しかったです」とは言うが、「あー楽しかった! 本当に楽しかった!」という感情表現はしない。あまりにも素直で、美しさを感じた。こういった美しい感情表現ができる人は、死んではならない。

多くの場合、話すより聞くことを多くする方がいい。出会い系でもそうだ。出会い系でも、小生はほとんど話さず女の子ばかり話しているときほど成功する。10対1の割合で女の子が話したりでもしたら、勝利は約束されたも同然だ。とてもスッキリした顔で帰っていき、「今度はいつ会える?」と向こうから聞いてくる。その反面、小生はぐったりしている。

今回も相当にぐったりしたが、爽やかな顔で帰っていく池上さんを見て、小生もとても幸せな気持ちになれた。みんな働いていると、働いている人の支えになれないものだ。暇というのは、それだけで誰かの助けになることもある。

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