トントン
しまるこP「入りなさい」
久保史緒里「しまるこP、よろしくお願いします」
しまるこP「ノックは3回すること。覚えておきなさい」
久保史緒里「は、はい、すいませんでした!」
しまるこP「座りなさい」
久保史緒里「はい!」
しまるこP「よろしい。私が『座りなさい』というまで立っていたことは評価に値する。先に面談した北野はすぐに腰掛けたからね」
久保史緒里「は、はい。気をつけます」
しまるこP「さいきんどうだね。久保」
久保史緒里「はい。しまるこP。楽曲の方も選抜入りが続いているし、最近はバラエティの仕事もたくさん頂けて、とても順調です! しまるこPがいつも父親みたいに見守ってくれているおかげです。ありがとうございます」
しまるこP「久保。だいぶ乃木坂の顔になってきたね。キャラも立ってきたし、歌もうまい。芸人に振られた時の切り返しもうまくなってきた。19歳でありながら肝も座っていて、ラジオでも久保が仕切り役になっている。メンバーも久保を自然と頼っているようだね」
久保史緒里「恐縮です」
しまるこP「普段日記をつけていることもあるだろうが、言語化能力が高い。歌やダンス、メンバーや共演者、スタッフへの気遣い。自己改革に余念なく、常に1回1回の仕事を振り返って反省しているから成長が早いのだろう。笑顔の練習を怠らず、常に自分で自分を励まし、邪気を払い、人と会うときはどんなに落ち込んでいても太陽のようであろうとする。以前はネガティブだったが、順境にも逆境にも左右されなくなってきた。久保はアイドルでなくてもどこの業界どこの分野でも成功するだろう。久保の聖母のような純真さはこれからも多くのファンに希望を与えるだろう。これまで撒いてきた種がいま順調に咲き始めている。今はとてもいい時期だ」
久保史緒里「しまるこP……。ありがとうございます!」
しまるこP「ただ久保は太りやすい傾向があるから食生活には気をつけなさい。小腹が空いたら果物で満たして、たくさん食べるのは一日のすべての仕事が終わってからにしなさい」
久保史緒里「でも、さいきんは深夜の収録も多くて」
しまるこP「よろしい。私の方からマネージャーに伝えておこう」
久保史緒里「お手数おかけしてすみません」
しまるこP「久保は基本的にはこのままでいい。十分今のままで戦っていける。これから乃木坂の中心になっていくだろう」
久保史緒里「本当ですか?」
しまるこP「だが、忌憚なくいえば、久保はまだその才能を活かしきれていない」
久保史緒里「しまるこP。教えてください。わたしはどうしたらもっと輝けるのですか?」
しまるこP「久保。アイドルにいちばん重要なものはなんだと思う?」
久保史緒里「ファンの皆さんに元気を与えることですか?」
しまるこP「それだったら、お笑い芸人でもいいだろう」
久保史緒里「はぁ」
しまるこP「久保。アイドルにいちばん重要なのは色気だ」
久保史緒里「色気……」
しまるこP「久保が堀や与田に一歩先をいかれているのは色気だ。男性経験をしろといっているわけじゃない。ジャニーズと不祥事を起こせといっているわけでもない」
久保史緒里「はい」
しまるこP「色気。乃木坂自体がそういうカラーではないと思うかもしれない。久保がメンバーでいちばん肌が白く、いちばん清楚で、いちばん乃木坂というものを表現しているのは否定できない」
久保史緒里「……」
しまるこP「久保。今ワコールの下着を履いているね?」
久保史緒里「えっ……! どうしてわかるんですか?」
しまるこP「久保は頭がよくて、色んなことに気がつくけど、まっすぐにいい人間であろうとするだけじゃダメだ。それだったらクリスチャン達が法衣を着てステージで踊っていればいい話になる。アイドルがアイドルとして社会に求められている役割は色気に他ならない」
久保史緒里「しまるこPがお話していることは、わかるような気がします」
しまるこP「久保。頭のいい久保のことだから、自分はいったいどんな下着を履くべきか、考えたことはあるだろう。そしてもう結論づけているだろう。久保の結論はこうだ。『派手過ぎず、地味過ぎず、機能性よりも見た目を重視する。ファンをがっかりさせるような下着を身につけてはならない。普通の女の子より少しだけ攻めた下着にしよう。たとえ実家の風呂上がりだとしても、スポーツブラやパンツは履いてはならない』」
久保史緒里「……」
しまるこP「図星のようだね。よろしい。それは概ね正しい。叶姉妹は一度履いたパンティは捨ててしまうらしいが、ものを大事にする久保にそれは難しいだろう。久保のものへの扱いは、イチローのバットに似た哲学を感じる。しかし糸がほズレてきたら、決してそのパンティでステージに立ってはならない。それがダンス時にコンマ数秒の命取りになる。頭の働きも鈍くなり、バラエティ番組で当意即妙を得た言葉が出てこなくなる」
久保史緒里「……」
しまるこP「アイドルとしてふさわしい下着は何か。久保はそういう疑問や哲学をほかのメンバーより多分に持っている。そのため久保は今、少しだけエッチな下着を身につけているね。少しだけエッチな下着を履くことは、アイドルとしてのエチケットだと思っている。アイドルがみっともないブラジャーやパンツを身につけることはファンへの裏切りだと思っているし、身につけている下着が人間の精神を左右するということまで心得ている。その女剣士のような精神には感嘆せざるを得ない。アイドルにとってパンティとは、女剣士でいう薙刀のようなものだからね」
久保史緒里「しまるこP。わたしはどんな下着を身につければいいのですか?」
しまるこP「久保がどうがんばっても履けないようなパンティを履きなさい」
久保史緒里「えっ」
しまるこP「線のような下着を履きなさい」
久保史緒里「線……。ただ着替えのときに困るというか。みんなで衣装とかの着替えが多くて、ちょっと、見られたらドン引きされちゃうというか」
しまるこP「私にいわれたといいなさい。すべて私のせいにしなさい。私にすべての責任を押し付けなさい」
久保史緒里「しまるこP」
しまるこP「年増の女が紐みたいな下着をつけていると下品に見えるが、10代の子が履いていると神聖に見えるものだ。君は新しいステージにいける」
久保史緒里「……」
しまるこP「眠っている細胞を目覚めさせなさい。今、久保の前にすべての扉が開かれている。今履かなかったら二度と履く機会はやってこないだろう。今履かずにいつ履くんだね?」
久保史緒里「い、今でしょ……!」
しまるこP「よろしい。素晴らしい反応だ。バラエティをよく勉強しているね。久保が恋をしたくてしたくてたまらない、セックスをしたくてしたくてたまらないということはしっている。アイドルが街を歩いている普通の女の子よりエロいことは顔を見ればわかる。一生懸命押さえつけている。そのまま押さえつけていなさい。恋もセックスもまったくしたくないなんて思っている女がいたとしたら、アイドルになんてなれないし、まったく色気のない生き物に成り下がるだけだ。アイドルは普通の女の子よりすべての面で優れている。頭もずっと聡明だ。美と知力は連動している。アイドルは、たとえ明日世界が滅亡するとしても、エッチな下着を履いていなければならない。久保。輝きなさい」
久保史緒里「ありがとうございます。しまるこP」