私は小学生の頃、学校の帰りに下級生達から石を投げつけられる可哀想な生き物でした。

俺は小学生のとき、下校途中に下級生の集団から石を投げつけられるといういじめにあっていた。


俺は小さい頃から変わっていて、授業中に突然グラウンドに飛び出して草を食べたりしていた。


「みんなあなたを愛してるから、ずっとあなたをみ〜つめてる、たいせつに〜おも〜う気持ちで、くらべて選べる、みやひで♫」とCMの音楽をでかい声でいつも歌ったりしていた。


ちんちんを出して走り回ることも多く、稲中卓球部のギャグを真似するのが好きで、上着を捲って乳首をだして「ペニーダ!!」と言ったり、ダンボール箱に入って「送れえええええええええーーーーーーーーーーーーッ!!!」と叫んだりしていた。


「ペニーダ」をやりすぎて、英会話教室も退学させられてしまったこともある。


給食のときは、糊をすべての食物にいっぱいに塗りつけて食べるので、一口食べる度に大騒ぎになり、みんなに席を離され、1人ポツンとすることもあった。


同級生とは生活の中で仲間意識を獲得するのに成功したからか、ウケをとったりしていたからか、いじめられることはなかったが、下級生からみたら、ただの頭がおかしい奴だと思われたんだろう。


だからよく石を投げられた。俺も尋常じゃないくらい怒り狂って、石を投げ返しまくった。


後輩達は小さな石を投げつける程度だったが、俺は殺傷性のあるでかい石を平気で投げつけるので(当時それはタブーとされていた)、この頃から一線を平気で越えてしまうところがあったのかもしれない。

 

近所の変人おじさんを子供たちが攻撃する絵図と全く同じだ。そして、近所の変人おじさんも禁忌というものを平気で破りそうだ。金属バットで人の頭を殴るのにためらいがなさそうだ。

 

 

 


そして中学に進み、卓球部(笑)に所属することになったが、ここでも後輩にナメられていた(卓球部ですらやばいのに、卓球部の後輩に舐められるというのはもう終わっている)。

 

俺の友達に対しては、あからさまに恭しい後輩の態度を取るのだが、俺に対してはどこまでも舐め腐っていた。


俺の友人が、代わりに後輩達を叱ってくれたことがあって、いじめられることが一時なくなったこともあったが、それはとても惨めだった。


俺も俺で、卓球の練習なんて一度もしたことがなく、急に卓球台に登っては、隣の卓球台に飛び移り、4台あった卓球台を順番に飛び移って、何度も往復するという遊びを3年間ずっとやっていた。みんなの練習の邪魔をするのが楽しかった。

 

同級生達は、無視してくれるのでことなきを得たが、ある日、いつものように卓球台ジャンピングをしていると、1人の後輩に急に後ろから卓球ボールをスマッシュされた。


俺はいつものように怒り狂って追いかけ回すのだが、後輩もとんでもない速さで逃げていく。


後輩がいつも決まって逃げて行く先は職員室で、職員室の中に入りさえすれば、俺も断念せざるを得ないからだった。


そんなことが10回ぐらい続いて、俺もとうとう我慢ならなくなってしまった。


職員室にさえ逃げ込んでしまえば、安心が約束されるという甘えがむかついた。

 

職員室から出てきたところを捕らえてぶん殴ってやろうと、ハンター試験のときのようのゴンのように息を潜めて待機していたが、俺が待ち伏せている間は絶対に出てこないので、仕方なく部室に戻るしかなかった。

 

そして、仕方なく卓球台ジャンピングをしていると、また遠くから俺にスマッシュボールを打ち付けてくるので、また俺が怒り狂って追いかけていくと、職員室に逃げ込むというありさまだった。

 

信長が比叡山を焼き討ちしたのは、僧侶たちが、不可侵と奉られていた比叡山に逃げ込んでしまえば、信長も手出しはできないだろうと、こずるい作戦をしたことが、信長をブチ切れさせたからだ。


俺もさすがに職員室の中で、後輩をぶん殴るのはまずいかなと思っていたが、ここにさえ逃げ込んでしまえば、安全だとあぐらをかいている汚さが腹が立ってしょうがなくなった。

 

 

俺は猛ダッシュで職員室を駆け抜けて行き、後輩を捕まえてボコボコに殴りまくった。職員室の中は大騒ぎになり、とある女教師が絶叫して、「あなた何してるの!!」「ここをどこだと思ってるの!!」とめちゃめちゃ騒ぎ立てた。


俺はすぐに教師たちに取り囲まれてしまったが、何発か後輩を殴れたし、後輩の仰天した顔を見れたので少しは満足した。

 

「なんで熊本君を殴ったの?」

「こいつが俺の頭に卓球ボールをスマッシュしてくるんです」

「でもここ職員室でしょ!!」

「わかってます」

「場所を考えなさい、職員室でそんなことしていいと思ってるの?」

「他の場所だったらいいんですか? むしろ教師の皆さんが見ているところで悪さする方が、見えないところでやるよりずっといいことだと思います」

そう言うと女教師も黙ってしまった。

 

だけど俺の反論がなかったかのように「ここがどういう場所か考えなさい」、「こんなところで暴力事件を振るうということがどういうことか考えなさい」とその一点張りだった。

 

 

 

 

その後、不思議なことに、後輩は俺の頭に卓球ボールをスマッシュしてくることはなくなった。

 

それどころかひどく懐くようになってきて、お気に入りの遊戯王カードを見せてくれるようにまでなった。

 

どういう了見で、こんな心変わりがあったのか、俺は考えてみた。


一度ボコボコにされれば、その相手に対して恐怖が生まれる。問答無用で無差別に暴力を振るわれたら、恐怖より憎しみが上回り、相手から距離を置くようになるが、今回のように正当な理由でボコボコにされるのならば、恐怖と尊敬の念に変わる。


正当な理由でしっかりボコボコにされると、男として認めざるを得ないらしい。

 

中途半端に怒ったり追いかけたりしていてはダメで、しっかりボコボコにしてやることが肝心だった(今回は途中で止められてしまったが、2発顔面にいいパンチが入った)。

 

 

 

それからは本当によく懐いてくれて、その後輩だけでなく、卓球部の後輩全員が、俺をさん付けで呼ぶようになり(それまでは呼び捨てをされていた)、遊戯王カードや、今日はクラスの女の子と放課後教室で2人きりになった、などと話してくれたりもした。


職員室にまで乗り込んでボコボコにするのは男らしいのかどうか。少なくても陰でいじめをするよりよっぽど男らしいと思う。今でもそう思っている。


後輩とは卒業までは仲のいい関係が続いた。

 

 

 


それから高校に進学して、俺は何気なく自転車で通学していると、偶然その後輩にあった。俺が高校2年で、そいつが一年だ。卒業してから一年の空白があった。

 

後輩は自転車で俺の横を通り過ぎる際に、

「お前んとこのババア、犬連れて散歩してたぜ! ばーーーか!!」と言って、すごい勢いで自転車を飛ばして逃げていくので、俺も怒り狂って追いかけ回した。