ホリデイスポーツクラブにおける愛憎劇

今ジムでトレーニングをしていたら、20代前半くらいの若い男女が並んで話をしていた。

腹筋マシーンに並んで座っていて、男はよくありがちな、控えめさと、控えめでだけで終わらせない強さと、笑いどころがったら笑う。多少ぎこちないけど、ぎこちなさを無視してがんばって話を進めよう。ちょっと無言になったけど仕方ない。慌てない。新人サラリーマンらしい清潔な空気。っぽい感じだった。

 

二人は付き合っているのか。それともたまたまここで知り合って仲良くなったのか。きっかけはなんだったのか。男から話しかけたのか? 満を持して話しかけたのか、今日見かけて話しかけたのか? 

 

若い男女が話しているだけで気になってしまうのは俺だけではない。恋愛関係のゴシップが巷に溢れることが何よりの証拠だ。

 

ブログの記事にするぐらいだから、そんなに気になったのか? と思うかもしれないが、別にそんなに気になってはいない。何も書くことがないので、仕方なく書いている。

 

男は色が白くてなかなかイケメンだ。ジムに通ってるぐらいだから筋肉質で、いい身体をしている。チェストプレスで80kgを10回こなしているのを見たことがある。俺は70kgを10回なので、負けている。

 

色が白くて短髪で捲くしあげており、おでこが白く輝いているので精悍な印象を受ける。目が細くて笑うと目がなくなるので、普通の人より爽やかな笑顔に見える。

 

女は普通より少し太めだけど、悪くない。別に標準的なスタイルだ。脚がムッチリしていていやらしい。ホットパンツを履いて、黒くてムッチリした脚が露わになっている。男とは対照的に肌が黒い。

 

色が黒くて茶髪なので、松ぼっくりがうんこみたいに見えなくもない。だが、その健康的な肌や肉感が、確かにいやらしくもある。

 

スポーツをしているせいなのか顔が溌剌としている。後ろに髪を一つにまとめて。おでこをいっぱいに出して、顔に水分も多いのでテカテカしている。

 

目もぱっちりで可愛らしく、笑顔がゆっくりで、ゆっくり人の心に染み入るような感じがある。10分満点中で言えば7点の女の子だ。

 

俺はといえば、全体的に黒い格好をしていて、70kgのチェストプレスをしながら、眉間にシワを寄せて、深く沈みながらも力強い瞳で、この男女を見つめている。

 

「このマシンはどうだ」とか「私体が硬いんですよ」とか「頑張って痩せない」「慣れれば結構これも楽勝になってきますよ」とか。いかにも小市民が世間の習慣で培ったクソみたいな会話をしている。自分達の関係上、会話はここら辺のラインだろうという生温い腐った会話をしている。こういうのを見ていると、男を突き飛ばして女を掻っさらいたくなる。ダンベルをぶん投げたくなる。エルゴメーターで走ってるところを、後ろから足を引っ掛けてコケさせたくなる。

 

男の方は、そのホットパンツから顕になっている焼けた黒いムッチリした脚を舐め回したいのであり、彼氏はいるのか、経験人数が何人だとか、一番最近はいつセックスしたのか、その時フェラチオはしたのか。ということが大問題であり、それで頭がいっぱいなのである。

 

本音を切り離して、「このマシンはうんたらかんたら〜」と話しているのが不自由そうだ。不自由ながらも、女と話す喜びや、この先の展開に胸を膨らませたり、青春の喜びも入り混じっており、見てるこっちがエロい気分になってくる。

 

女の方はというと、笑顔は爽やかで、あなたと話していて楽しいですよ、素晴らしいマシンの知識を教えてくれて嬉しいですよ、従業員みたいですねという顔をしているが、自分からは話す感じではない。相手に話題を振られたら、笑顔で反射的に聞かれたことに返している。

 

特に用事がなければ自分からは一生懸命話そうとは思わないけれど、話しかけられたら愛想よく気持ちよく返している。一人でトレーニングしてもいいし、あなたがいても、どちらでもいいといった感じだ。

 

ルックスレベルを比べると、男の方が価値は高いが、女の方が有利の立場にいる。

 

そして俺は今場所を移動してランニングマシンに乗っている。二人の位置から20メートルくらい左奥にあり、とてもゆっくりなペースで襟元にピンマイクをつけて、音声入力で記事を書いているといった始末だ。チラチラと二人の方を見ながら、ブツブツ喋りながら歩いている。

 

余談だが、音声入力は捗る。ランニングマシンやエルゴメーター(自転車)を使いながら音声入力をすると運動によって脳が刺激されて退屈しなくていい。

Androidだったらエディボイスというアプリがオススメだ。googleの音声システムが基盤になっているのでiphoneよりずっと識字率がいいし、一度入力ボタンを押したら、時間無制限で5000文字まで話せてしまう。ピンマイクを使ってボソボソ話せば、誰にも聞かれることもない。執筆業を営む者は、ジムに行って歩いたり漕いだりしながら音声入力で記事を書くのがいい。

 

俺は出会い系での出会いでしかなくて、こうやって毎日ジムに来ているので、ジムでの出会いがあってもいいのだが全くない。いつも70kgのチェストプレスをしたり、気持ち悪く音声入力しているだけだ。

 

 

 

 

俺よりさらに左に離れた場所にフリーウェイトエリアがあって、そこに若いマッチョがいる。

非常に筋骨隆々で、少なくとも4年は激しい筋トレに追い込んだと伺いしれるマッチョで、今日もひたすら筋肉を壊している。

 

例の男女に目をくれず、ひたすらバーベルを持ち上げている。

 

一見、女に興味がないように見えるが。そんなことないのは俺は知っている。

 

年は27、8で、まだまだエッチで可愛い子がこの世にいるという事実で頭がおかしくなって、毎晩歯を食いしばってチンコを握りしめて寝る年頃だろう。

 

若い男と女が話している。一体どういうことだ? ここは体を鍛える場所だぞ? 男と、女が? 話をしている? 一体どんな会話だ? 付き合っているのか? それとも今日たまたま? どっちから話しかけたのだ? セックスは!?  これからセックスすることになるのか? 俺の方が間違いなくマッチョだが、なぜ俺じゃなくてあのヒョロヒョロの色白なんだ? 俺の大胸筋の上で寝たらこの上なく気持ちがいいのに。

 

そんな思いが2分間くらい、このマッチョの頭の中を逡巡したんだろう。

 

鍛えているのにモテなくて可哀想だ。仲のいい男女を目の前にしてあんまりだ。俺もマッチョも本当に可哀想だ。

 

バーベルを持ち上げている姿が寂しそうだ。

 

俺はチェストプレス70kg×10回なので、80kg×10回できる色白には敵わないが、マッチョは勝てる。

 

喧嘩になったら俺の方が強い、細い男に女を作る資格なんてない、と言いたげだが、男にも女にも俺にも、話しかけられたら、低い姿勢で返してしまうんだろう。

 

マッチョは大抵腰が低いし、大人しくて、割とおどおどしている。仕事もできず、他に何もなにので身体を鍛えている場合が多い。

 

暴漢に急に殴られたら、「あ?」とか言って、自分がイメージしていたワイルドな性格マッチョになれるのだが、そこまで追い込まれないと、理想の自分を引き出せない。

 

急に俺に話しかけられても、色白に話しかけられても、むっつり脚に話しかけられても、「あはは」とか「そうですか」とか、急に筋肉が萎んだ態度しかとれない。

 

スポーツジムというより、ここはホリデイ←(笑)なので、マッチョと言ってもよそよそしくて大人しくて、高い声で敬語を使うマッチョしかいない。

 

 

 

 


それにしてもジムにおける7点の女というのは価値がすごい。60代のおっさんが、トレーニングして何かをはき違えてしまったのか、肉体が若くなったから若い女と話す権利を得たと思ったのか、同じ部活動の仲間、同類、「タメ」と思ってしまったのか、たまにこのむっつり脚に話しかけているのを目撃する。

 

だが、まぁ若い男にもたまに話しかけるのも目撃する。俺にだけは絶対話しかけてこない。

どいつもこいつも絶対に誰も話しかけてこない。

 

サウナに入っていたら一度だけ、「マット使って」と話しかけられたことがあるだけだ。

 

 

 

 

そんなこんなで、今日もホリデイは愛欲いっぱいの魑魅魍魎で、運動して下着がびっちょりになってチン臭とパン臭が充満した恐ろしい劇場と化している。