出会い系の女と合コンした話

出会い系の女と合コンをすることになった。4対4の合コンだ。


俺の方のメンツは

しゅん

ようへい

ゆうさく

俺(しまるこ)だ。


とりたててモテない、冴えない人間だ。4人とも全員出会い系をやっている。俺が宣伝して広めてみんなやりだしたが、みんな楽しんでいる。


かっこいいのは俺だけで、後は全員ブサイクでクズだけど、無事に出会ってセックスをできている。しゅんとゆうさくに至っては彼女も作ることができた。やはり出会い系様様だ。

 

 

 

 

合コンは、駅近くの普通の飲み屋で行われた。

男メンバーは先に集まっていた。


「いやぁしまるこすげーなぁ、今回は本当にありがとう」

「いやいや」

「合コンなんて本当に久しぶりだわ」

「いやいや」

「可愛い子くるかな?」

「4人いれば1人くらいいるだろ」

 

毎日くだらない仕事で消耗している小市民にとって、合コンは一番のご褒美である。バカみたいな仕事して年収も雀の涙で、肌も酸化して浅黒く歯も黄色い。芸能人のように歯を白くする暇も金も勇気もない。サラリーマンが通勤で右折して曲がるときの顔はとくに不憫だ。

 

冴えないサラリーマンが、どこにでも転がってる女のケツを追いかけてるほどの嫌ったらしさはない。合コンなんて、ゴミ同士がホコリを撒き散らしているだけの環境汚染でしかない。ワールドカップと一緒だ。

 

ゴミとゴミが結婚することも、ゴミとゴミが結婚するために男と女の通過儀礼を潜り抜けていく過程もちゃんちゃらおかしいので、合コンにおける「流されている」という感覚は絶対に必要だ。

 

いつも仕事終わったら、すぐスマホを取り出してYouTube見てる人間を一体誰が好きになるというのか? 誰が結婚したくなるというんだろう? 夫として、親として、格好がつくと思っているのか? うだつの上がらない中年達の合コンほど汚らしいものはない。8個の腐った人間が、みんなで現実逃避する、何も無いサラリーマン。金も時間も摂取される日々を送り、結婚だの保険だの車だのマイホームだの、順調にしがらみを増やしていく。しがらみの中で、お互いの核心に触れることなく、当たり障りない会話をするというのが中年の合コンだ。生活臭を帯びた爛れた肉を向かい合わせて、仕事では何の能率も上がらないくせに、こんなときだけできる男を演じる。全てが嘘で腐敗臭がする。酒と腐った肉ときつい香水でクラクラする狂態だ。まともなのは料理を運ぶ若いアルバイトと、運ばれた料理だけだ。

 


 

 

居酒屋の外に一人見張り番が立っていた。ゆうさくという男だ。こいつはチビで身長が150cmしかない。小兵というか、一番槍がよく似合う。なぜわざわざ見張り番を買って出るかというと、自分が「これだけチビなんですよ」と知ってもらうためらしい。座った状態から合コンを開始して成功したとしても、立った瞬間に幻滅されては困るかららしい。

 

ゆうさくが慌てて俺たちの席に戻ってきた。

「やばいやばいやばいやばい!!」

「どうした!?」

「やべーのがきたぞ!! 全員やばい!!」

「全員!?」

「声でけーよ!!」

「もう入ってくる!! はやく黙らないと!!」

 

挨拶無しに、ぬす……っと、女達がやってきた。

 

「「!!!!!!!!!!!????????????」」


凄まじかった。凄まじいデブが2人。金髪の面長ギャルが1人。化粧っ気のない卓球の国体オリンピックの練習をしてそうな女が1人。計4人だった。


これはすごい。

すごい物を見たと同時に、自分の意識が暗く沈んでいくのを感じた。


なにがすごいって、合コンに行こうと思うのがすごい。ここまでデブとブスと負のオーラを纏っていたら、自分から遠慮しようと思うものだ。


こんな私でも好きになってくれるかもしれないと一縷の望みに賭けたのか。とにかく行動することが大事だと変な自己啓発本を勘違いして受け止めてしまったのか。そもそもそんなに自分をブスだと思っていないのか。暇だったからか。


色々理由はありそうだが、四人でいつも連んで、仕事の愚痴を言い合ったり、非生産的なことを繰り返していそうな空気だった。自信はなさそうだ。もちろん可愛いとは思っていないだろう。でもそこまでブスとも思っていない。行けばなんとかなるかも。彼氏もずっといないし仕事は退屈だし、何か刺激が欲しい。本当は痩せたり色々要件をクリアしなければ参加しちゃいけないことはわかってるけど、準備するのも考えるのも面倒くさくなって、目の前の報酬に釣られてしまったという顔だった。「付き合おう」といえばすぐに付き合える気がした。


やっちまった。幹事は俺だ。俺のミスだ。


ぎゅーーーっと、隣に座っているしゅんにつねられた。俺は「すいません」といった。その瞬間「?」という顔で、卓球女が俺の方を見た。「すいません」の言葉の意味を悟られただろうか。


すいませんといって帰るか? 無理ですといって帰ってもらうか? それは失礼か? 死ぬほどブスだと思って一刻も早く立ち退きたいと思っているのに、社交辞令で合コンされるのとどっちがマシなんだ? いつもこの問題について考えるが、結局流されて続行を余儀なくされる。


お互い無駄に金と時間を使うのはよくないんじゃないか。ここで断ったら、すごく傷つくだろう。ブスの人生を十分に歩んできただろうから、またここで傷が一つ増えるだけだろう。 しかしはっきりブスだから無理と言われることは中高生以来かもしれない。それだと日付を越えられなくなるほどのショックになってしまうのか? 

 

はっきり無理といってあげることで、自分自身を反省する機会になるんじゃないか? もし俺が逆の立場だったら、はっきり言って欲しい。誰も何も言わないからこういうことになる。傷つくとか傷つかないとか、そんなことよりもよっぽど重要なことがあるはずだ。

 

ブサイクとかデブとか、自分に魅力があるかどうかは本来自分でわかることだが、自己愛によって麻痺してしまうこともある。24時間自分と付き合っていたら、自分を愛さずにはいられなくなるだろう。誰もがそうかもしれない。だから、はっきり誰かがブスと言ってあげることは必要な気がして、俺はよく足掻いている。


それに、これは失礼なレベルだ。人前に晒していいレベルじゃない。俺はだんだんイライラしてきた。森三中レベルだろうか? テレビの時の、少しは陽が射した黒沢じゃなくて、お父さんと殺し合いをしたり、お父さんのベッドのフレームに「死ね」と掘っていた頃の黒沢に近い。

 

はっきりここで誰かが真実を言ってあげないと、「合コンが終わりました。誰からも連絡先を聞かれませんでした、じゃあまた行こう」になってしまう。一生このままだ。ちゃんと言ってあげた方が俺は優しいと思う。

 

ブスでデブだけど恋がしたいんですという主張は通るのか?

 

俺は通らないと思う。今の時代、容姿をどうにかするなんてことは、簡単だからだ。

 

 

 

 

「注文なににする〜〜〜?」と卓球くさい女が喋り出した。それが第一声だった。

その声は俺達へ向けられたものではなく、同じ女子メンバーに向けられたものだった。

 

おいおい。俺達に向かって「注文しませんか?」とか「お酒飲みますか?」だろう。やはり、顔だけでなく性格も腐っている。

 

俺達の存在を無視されたようで腹が立ったが、頭の中の全てをリセットし、「皆さん、どんどん好きなの頼んじゃってくださいよ」と接待機械となったゆうさくがいった。

 

「じゃあからあげーのー、さんまのー、」と女達は次々と食い物を注文していった。

まぁ別に好きなものを好きなだけ頼んだらいい。女達は10品くらい頼んだが、俺たちは3品くらいしか頼まなかった。

 

 

 

 

女達は小さな声でコソコソと内緒話をした。


なぜ女は、目の前に男がいるとコソコソ話をし始めるのか。女子らしいと思っている。可愛いと思っている。元々消極的な上、気の弱い行動をしても女だから許されると思っているからだろう。コソコソ話すことは失礼なことに気づかない。気づいたしても、自分でそれを許してしまう。許してしまってもいいのだという些細な問題だと思っている。


多くの女が、男の前だと嫌な女になる。結局男が欲しいからだと思う。本当に欲しいものの前だと妙に拗ねたくなる。


ギャルっぽい女の名前はユキと言うらしい。開幕からずっとふてぶてしい顔していた。いやいやここに連れてこられたという顔だ。何度話を振っても無視する。口を開きすらしない。平気で機嫌が悪そうなつまらなそうな顔をする。こういう人間が合コンの場に一人でもいると大変だ。全員が気を揉むことになる。


26歳らしい。相手の女達は大体26〜29歳だった。ユキは26歳になるというのにギャルっぽくて汚らしい化粧をしていた。目の周りが真っ黒でパンダみたいだった。本当は恋をしたいけど素直になれなくて、取り繕うのも嫌で、ありのままの自分をみてもらいたくて、そんな自分の面倒を見てもらいたいという感じだった。

 

とにかくぶっきらぼうで、黒々しい不機嫌なオーラを醸し出していて、すぐ拗ねてしまう子供のまま成長が止まっているようだった。下痢みたいに汚い感情を撒き散らして、自分でも汚い感情ばかりで吐きそうになって胸焼けしている感じだ。毎日生理だ。24時間こんな状態で過ごしていて、家ではお母さんにさらにひどい悪態を取るのだろう。周りも苦しいのだが、一番苦しいのはこの子だろう。常に拗ねている、拗ねずにいられない。いつも濡れた服を着た気持ち悪さ、喉元に小骨が刺さったような掻痒がある。我々はどうにかして、イライラや不機嫌を切り離す術を覚えてきたが、それが適わなかった人間がいる。結局は、愛が欲しいのだ。愛が欲しすぎてこういう事をしている。

 

俺達は、嫌でも目立つこの危険物に触れないわけにもいかず、ユキを中心に話を展開していくしかなかった。

 

「ユキちゃんは休日何してるの?」と聞いたら「別に」と答えた。沢尻エリカみたいだった。

「街とか歩いたりしないの?」

「歩かない」

「へー……」

沈黙が起こる。

「じゃあ浮いてるの?」

と言ったらみんな笑った。


「でもユキちゃんかわいいよね」

とみんなで褒めた。この4人の中で一番顔がまともだった。

それでも10段階でいえば2ぐらいだろう。残りの3人がみんな1だった。

 

「彼氏はどれぐらいいないの?」

「結構いない」

「結構てどれくらい?」

「ユキ誰とも付き合ったことないじゃん」

卓球女が言った。

「誰とも付き合ったことなかったの!?」

「もう、なんでいうの!?!?」

「じゃあユキちゃん処女!?」

「え? ユキちゃん処女!?」

「ゆき処女かよーーーーーーーーーー!!!」

 

みんなでユキの処女を祭り上げる形となった。一緒になって笑っているけど、間違いなく他の女達も全員処女だった。

 

初対面の子に処女だの何だの、行き過ぎた悪口は、合コン終了になってもおかしくないくらいのことだったが、なぜか平気だった。

 

そこから一気に火がついて。ボンボン燃えるようになった。

「店長!! 店長を呼んでください!!!」

「たーーーまやーーーー!!!」

「アッソレアッソレ! ユキちゃんホイホイ!! 処女だホイホイ!!」

「わっしょいわっしょい!」

「たーーーまやーーーー!!」

「てんちょおおおぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!!」

 

ここぞとばかりに盛り上がった。なんと、ユキも一緒になって笑っていた。

 

もちろん普通の女は怒っていいところだ。笑うところと怒るところが普通の女と逆になっている。

 

拗ねる女は、これくらい過激にいじっても大丈夫なのだと俺も新しい発見だった。何もないときにはぷんすか怒ってるくせに、処女と囃し立てられる件は怒らない。どんな形にせよ構ってもらえると満足してしまうのか。

 

そしてバカなのだ。汚い感情に支配され過ぎてて、脳みそが蕩けてしまってきて、バカになってきてしまっている。合コン開始して数分で処女とバカにされて囃し立てられても、なんだかよくわからなくなってきてヘラヘラ笑っている。頭が悪いのだ。なんだかよくわかっていないのだ。

 

 

 

 

合コン中、終始、ゆうさくは向かいの席に座ってるデブの性器を、ギューギューに足で踏みつけまくったらしい(テーブルの下で行われていたので、誰も気づかなかった)。そのデブは終始、性器を足で弄られていたというのに、何の反応もしなかった。


人間は自分が社会的にどのレベルに位置しているか、潜在的に認識せずにはいられない。ブスだと、よくわからないチビに、性器をギューギューに踏みつけられたり、処女だとバカ騒ぎされても、かえって嬉しくなってしまうのだ。格下だと判断されて、そういうことをされているのに、嬉しくなってしまう。

 

自分に対して低い評価ばかりしていると、こんなことになってしまう。

 

最低最悪な合コンだった。