母親が車で人を轢いて「運転が荒すぎるからこういうことになったんだよ」と言ったら、信じられないくらい正気を失ってしまった件

10歳の頃、お母さんとお姉ちゃんと三人で夕食を食べに行った後の帰り、俺が「るろうに剣心の全巻」が欲しいから本屋さんに行きたいと言った。

剣心をジャンプの本誌で読んだりアニメを見ていたら、どうしても手元に全てを揃えたくなってしまったからだ。

車で色んな本屋さんを巡ったが、どうしても17巻だけがなかった。俺は「戸田書店だったら17巻置いてあるはず、戸田書店に行こう」といった。お母さんは「戸田書店は遠いから、亀田書店にしなさい」と言い、亀田書店に行くことになった。俺は亀田書店は物が少ないから、たぶん剣心の17巻は置いてないだろうと言った。案の定、剣心の17巻は置いてなかった。

車に乗り込んで、戸田書店に向かう途中、「だから言ったじゃん! 最初から戸田書店に行けばいいって!」と言ったら、母親は激怒した。「うるさいわね! だったら自分で買いに行きなさい! あんたがどうしてもっていうからこうして運転してやってるんでしょうが!」

そして気が狂うようにヒステリックになって、運転はどんどん乱暴になっていき、ある信号を右折するときに、まだ横断歩道を渡り終えない自転車にぶつかってしまった。

その時の母親の慌て具合と言ったらない。目が見開いて、口も大きく開けて、「ああぁ……」と小さな呻き声のようなものが出て、目の前でキリストの処刑を見つめるキリスト教徒みたいな顔をしていた。とても驚いていながらも、もう既に目が潤んでおり、号泣する下地が出来上がっているように見えた。今すぐ髪が全部真っ白になってしまいそうだった。

すぐに車から降りて、自転車に乗ってた人に向かって、ごめんなさいごめんさいと謝っていた。

自転車に乗っていた人は20歳ぐらいの女性だった。自転車はかなり凹んで、もう二度と使い物になりそうになかったが、お姉さんに怪我はなさそうだった。今でいう吉澤ひとみの事故みたいなもんだろう。

「怪我がなさそうで良かったね」
「運転が荒すぎるからこういうことになったんだよ」
と、俺は母親にグチグチ言ったら、ものすごい勢いで燃え始めた。

「うっせーなッ! てめぇいい加減にしろよ! てめぇがいちいちうるせーから頭にきたんだろーが! 剣心剣心うるせーんだよ! そんなに欲しけりゃ自分で買いに行け!」

凄まじい早口で、女が口にしたとは思えないほどの汚い言葉と調子で罵った。

二十歳のお姉さんも、ただぽかーんとしていた。

「いい加減にしろよてめぇ! 本当にガキなんて産むんじゃなかった! 事故は合うし運転めんどくせーし車の中でずっとぐちぐち言ってるし! お前(俺)もうるせーけど、てめぇもてめぇだよ!(姉) ボーッと車に乗りやがって! 事故にあったのにボーッとして、何も役に立たねぇな! 母親が事故にあったってことはてめぇも事故にあったのと同じだろうが! 同じ搭乗者なんだから何かしようと思わねーのかよ! 中学生だろうが! 救急車呼ぶとかあるだろーが! 人轢いて切羽詰まってるときほど、後部席から野次馬みてーに窓から見つめてるだけのガキほどむかつくもんはねーんだよ! 結局私が全部なんとかしなきゃなんないのね……! 子供は何もしてくれない! 産まなきゃよかった! ただうるさいだけ! 剣心じゃねーよバカが! 剣心ごときで終わってたまるかよ! あーめんどくさい! いくら相手が無事でもね、これからめんどくさいこと山積みなのよ! これから警察も呼ばなきゃいけないし! 運転なんきゃしなきゃよかった! あぁ時間が巻き戻んないかなぁ………! 夕食がいけなかったのか剣心がいけなかったのか! なんでこんな状況なのに運転が荒すぎるって注意されなきゃならないのよ! じゃあお前が運転しろ馬鹿野郎! どうして気遣えないのよ! お母さんのピンチでしょ!? あーーー……でもよかった。無事でよかった。やっぱ右折が1番怖いのよね。特に暗いと、渡り終えてない自転車を轢いちゃうのよね。たしかに、昔からそうだった。でもよくわかった。本当にこれでよくわかったわ……」

と一人で怒ったり、落ち着いたり、発見したり、凄まじかった。

とくに、皆さんも右折には気をつけて欲しいと思う。いくら目の前の信号機が右の矢印を示しても、歩行者側の信号も青になっているので、急いで右折しようとすると歩行者や自転車とぶつかってしまいます。

毎日飯を作って、パート行って、近くのスーパーに買い物行って、皆んなで飯を食って、月9を見て、そんな生活を守るために一生懸命生きてきて、それすらもなくなってしまうところだった。ガキは剣心剣心でうるせーし、人を轢いたのに、心配もせず注意をしてくるし、上のガキもただ鳩が豆鉄砲をくらったようにボーッとしてて使いものにならず、散々だったろう。確かに狂ってもおかしくないできごとだったと思う。