「いぬまるだしっ」こそが史上最強のギャグ漫画

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最近「いぬまるだしっ」を全巻読み返した。

 

俺が持ってる漫画は2つしかなくて、「HUTER×HUNTERと「いぬまるだしっ」だけだ。考えに考え抜いて、所有する価値があると思ったのはこの2つだけだ。

 

「HUTER×HUNTER」はいうまでもなく天才的な漫画だが、「いぬまるだしっ」は知らない人が多いと思う。この漫画は現在出版されているギャグ漫画の中で一番面白い。もう5年位前に完結されていて、若干古い漫画だが、読んでもらえれば、全てのギャグ漫画の中で一番面白いことをわかってもらえるだろう。



ギャグ漫画界のレベルは低い。その点、テレビのお笑い界のレベルはかなり高い。

芸人は大体みんな面白い。今テレビに出ていて、安定して番組に出演したり、レギュラー番組を持っている芸人は、大体みんな面白い。面白いといっても、センセーショナルだったり、すごい発想に溢れている芸人は稀だ。ちょうど、ど真ん中、中庸、ちょうど欲しいコメント、ぴったりなコメントが飛び交い、番組を完成度の高い進行で提供してくれる。つまり、みんな比喩が上手だ。この手の力を持った中堅芸人たちが、五十歩百歩の距離でひしめき合っている、というのが今のお笑い界の現状だ。

 

みんなどんぐりの背比べのように群雄割拠だが、1人突き抜けてるのが有吉だろう。コメント力や、場の影響力、あだ名等の大喜利のセンス、一言でバシッと決める力は他の芸人より突出している。元々の観察力が違う。結局、どんな分野でも「才能」とは「観察力」を指す。絵にしても文章にしても音楽にしても、お笑いにしても、才能とは観察力だ。才能というあやふやな言葉を一言で明らかにしたいのであれば、観察力と言えばいい。

 

怒り心頭で、マツコが色々言っても、その後に有吉が話すと、その場の空気も、テレビの前の視聴者も、マツコ自身も、有吉の意見に流れてしまう。優れたリーダーの資質なんだろう。明らかに人間や社会全体に対する観察力が優れている。面白いことを言える力は、世界に対する観察力が優れていることが条件だ。大成功した経営者や、偉い人ってのは大体面白い。コメント力がまるで違う。大喜利やコントの創作、バラエティの発言力とは違ってくるが、突き詰めると根源は同じだ。

 

有吉と同等レベルにいるのが矢作だろう。どちらが優れているかはよくわからないが、最近の矢作の表情はやばい。若い頃と違って、目つき、顔全体の鋭さが異様だ。静けさの中に強烈な力を感じる。有吉と矢作は、バラエティに出てるとき、虚空を見つめるように、いや、視点がよくどこにあるのかわからないような、周りが話し合っている中で、悠々と虚空を見つめているときがある、そして同時に突き刺すような力を感じる。

 

基本的にお笑い界は安定した粒揃いだが、飛び抜けたパワーで、自分で番組を作ったり、プロデュースしたり、新しい世界を切り開くことができる芸人というのはダウンタウン以来出てきてない。ダウンタウンの息吹が浸透しすぎているからだ。みんな、松ちゃんに褒められたくてしょうがない。ダウンタウンが消えれば、新しいものが生まれてくるだろう。





その点、現在、ギャグ漫画界には王様がいない。ギャグ漫画界にラリアットして、上腕でガラクタを薙ぎ払ってくれる男がいない。「稲中」はすごかった。「マサルさん」もすごかった。「ボーボボ」は本当に素晴らしかった。

 

現在はゆるい日常のギャグ漫画ばかりで、本気で笑いで戦おうとする作家は少ない。ストーリーの中にギャグがよいしょよいしょ挟まれているギャグストーリー漫画(銀魂とか?)が多くなっており、純粋なギャグ漫画は少ない。ジャンプは総じてギャグ漫画のレベルは他の雑誌より高いが、今連載している超能力や、江戸時代のギャグ漫画は純粋にギャグだけで勝負しているようだが、心許ない。



そこで、「いぬまるだしっ」である。やっぱり、この漫画だけ飛び抜けている。完全な純粋なギャグ漫画であり、作者も、ストーリーを不純物と見做している節がある。一コマ一コマに笑いがあり、自分はギャグ漫画作家なんだという強い自負が感じられる。

 

この漫画は、安定感が違うのだ。稲中も、マサルさんも、ボーボボも、たけしも、ギャグマンガ日和も、面白いときは面白いが、つまらないときはつまらない(覚醒してたときのボーボボは面白い回が続いて脅威だったが)。いぬまるだしっの作者は、お笑いの面白い要素を、よく噛み砕いて、バラバラにして、ゼロから完全に再生させている。計算され切っているのでハズレがない。全11巻だが、全部の回が面白い。

 

サンドウィッチマンのコントもそれで、すべての作品が面白い。ハズレがない。お笑いにおいて安定感があるというのは、どれだけすごいことか。笑いという謎に包まれた高度の精神世界の中で、答えを見つけ続けることができるということなのだ。

 

いぬまるだしっだけは、答えを見つけ続けることに成功した、唯一のギャグ漫画だ。